◇第百二十一話◇勇気ある馬鹿が挑む決闘
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「リヴァイ兵長、俺と決闘してください。」
リヴァイが自身の班員を引き連れて訓練場にやって来たのは、ジャンやライナー達がそろそろ朝練を再開しようとしていたときだった。
そして、ライナーの引き留める声も聞かず、リヴァイのもとへ向かったジャンが口にしたのが、冒頭のセリフである。
ギャラリーは、ライナーとベルトルト、リヴァイ班の他に、間近に迫っている壁外調査に備えるために朝練に集まっている大勢の調査兵達が揃っている。
訓練場の雰囲気を一変するには十分な数だ。
唐突の決闘の申し込みに、シンと静まり返った中、リヴァイの眉間に深い皴が寄る。
「あ?」
「それとも、俺に負けるのが怖いですか?」
ジャンが嫌味に口の端を上げると、ギャラリーは驚きの表情を見せた。
その中でも、特に驚いた様子で慌て出したのは、ライナーとベルトルトだ。
「は!?お、おま…!何言いだしてんだ!?」
「す、すみません。リヴァイ兵長っ。ジャン、最近少し情緒不安定なんです…っ。」
「あ!?違ぇよ!俺は別に頭がおかしくなって言ってんじゃねぇ!!」
長身のジャンよりも、屈強な体つきをしているライナーとベルトルトが左右から羽交い絞めにする。
頭がおかしくなければ、人類最強の兵士に決闘を申し込まないと最もなことを彼らが言っても、ジャンの意思は揺るがない。
友人の心配をよそに、乱暴に彼らの腕を引き剥がすと、ジャンはまたリヴァイの前に立った。
「俺、冗談じゃこんなこと言いませんから。」
「・・・どうして、急に決闘なんだ。まずは理由を説明しろ。」
「俺と賭けをしてほしいんです。」
「賭け———。まさか、なまえを賭けて決闘しようと言い出すんじゃねぇだろうな。
なまえは物じゃねぇんだ。そんな馬鹿なこと言うつもりなら、さっさと失せやがれ。」
リヴァイが、これでもかという程に寄せた眉からは、嫌悪感がにじみ出ていた。
だが、ジャンは動じる様子もなく、首を横に振る。
「俺が勝ったら、次の壁外調査になまえさんの補佐官として復帰させてください。」
「あ?お前は何を言ってやがる。お前の不参加は、エルヴィンとミケ達でもう決定してある。
俺達が決闘をしようが、覆るもんじゃねぇし、ましてや俺が勝手に決めていいことでもねぇ。」
リヴァイが呆れたように言う。
最もな理屈だった。
だが、そこに、リヴァイにとって意外な人物が、ジャンに味方をした。
「問題ない、リヴァイ。それは、俺が許可してある。」
そう声をかけたのは、ミケだった。
分隊長の中でも特に真面目なミケが、朝練のために訓練場にいることはそこまで珍しいことではない。
リヴァイにとって驚くべきは、今言った彼の科白だった。
「どういうことだ。」
眉を顰めて訝し気に訊ねるリヴァイに、ミケは飄々とした様子で答える。
「昨晩、ジャンから俺に調査兵団退団への辞退を申し出があった。」
次に、ミケの言葉に驚かされたのは、ギャラリー達だ。
幹部陣と一部の調査兵しか、ジャンが調査兵団を辞めるつもりだったことを知らなかったのだから当然だ。
ざわつくギャラリーを煩わし気にリヴァイが睨みつける。
自分の関与しないところで、話が進んでいることに不快感を覚えているのだろう。
不機嫌なリヴァイの様子に気づいたギャラリー達も、次第に静かになっていく。
「そして、その代わりに、自分が人類最強の兵士に決闘で勝てば、
壁外調査に出られるだけの実力と身体であることを認めて欲しいと言われ、
俺はそれを認めた。」
「————。
エルヴィンは、アイツは何と言ってるんだ。」
「リヴァイに決闘を申し込むだけの覚悟があるなら、
あとは身体が本調子かどうかを証明するだけだということだ。」
「チッ。」
リヴァイが舌打ちをこぼす。
どうやら、エルヴィンからも許可が出ている決闘のようだ。
エルヴィンに忠誠を誓うリヴァイが、彼の決定に逆らうことはしないはずだ。
けれど、リヴァイはそれでも、ジャンから申し込まれた決闘を素直に受け入れるつもりはないようだった。
「おい、ジャン。」
「はい。」
「お前が勝てば、次回の壁外調査への参加が許可されるのは分かった。
なら、俺が勝ったときはどうするつもりだ。もう二度と俺の周りをウロチョロしねぇと誓いでもするか?」
「いいえ。
また、決闘を申し込みます。」
「あ?」
「勝って、壁外調査への参加が認められるまで、何度でもリヴァイ兵長に決闘を申し込みます。
そして、なまえさんを守るのにふさわしいのは、リヴァイ兵長じゃなくて俺だって、
世界中に認めさる…!」
「てめぇ…、自分が何言ってんのか分かってんのか。」
リヴァイの眼光が鋭くなる。
ジャンの答え、それはつまり、婚約者であるリヴァイに対して〝お前はなまえに相応しくない〟と言っているようなものだ。
静かになり始めていたギャラリーが、今度こそとどまるとこを知らないくらいに騒ぎ出す。
「なまえさんを賭けた決闘ってこと?」
「いや、ありえねぇって。自分が死にかけてるときに浮気してた女だぜ?」
「俺なら、こっちから願い下げだな。」
「どっちにしろ、女は一度心変わりしちゃったらもう戻ってこないわよ。」
「でもこれはどう見ても、そういうことだろ。」
ギャラリー達の騒ぎに乗じて、やって来たのはハンジとモブリットだった。
今朝も、ほとんど徹夜で研究室にこもり、よく分からない研究を行っていたようだ。
「なになに?皆、集まって何してんの?面白いこと?」
ワクワクした様子で訊ねるハンジをよそに、ギャラリーの調査兵が躊躇いがちに説明をしたのは、モブリットだった。
事態を把握しきれていない散らかった話を素早く理解したモブリットは、ハンジにかいつまんで状況を伝える。
「え!?なんだそのワクワクする話は!!
早速、なまえに———。」
「ダメですよ!!なまえに知られないように、
きっとジャンはこの早朝に決闘を申し込んだんでしょうから。」
「わ…分かってるさ。冗談だろう。」
アハハハ———と誤魔化すように笑うハンジを、モブリットがジト目で見やる。
そんなギャラリーの騒ぎには乗じず、ほどなくして、リヴァイとジャンの決闘がついに決定した。
どれほどリヴァイが、ジャンの申し込みに懐疑的であろうが、エルヴィンの許可があれば断ることが出来なかったのだ。
「なら、ルールは私が決めよう!」
ワクワクした子供のような無邪気な瞳で、一歩前に出たのはハンジだった。
何か言いたげなリヴァイだったが、特に反論もしないジャンを見やると口を噤んだ。
どちらにしろ、誰が何と言おうと、ワクワクしているハンジを止められるものなどいないのだ。
そうして決まったルールはこうだ。
制限時間は3分。決闘の場は、ライナーとベルトルトが引いてくれた約5メートル四方の枠内。
そこで、先に相手を地面に落とせた方の勝ちだ。また、ジャンの場合は、3分後もリヴァイに倒されていなければ、引き分けであっても、賭けは勝利となる。
決闘中の細かいルールについては、その度にハンジやモブリットが判断することになった。
「2人とも心の準備はいいか。」
審判となったミケが、ジャンとリヴァイの顔を見やり、最終確認をする。
強い決意と覚悟を宿した瞳でジャンがしっかりと頷けば、リヴァイが不服気味に舌打ちをした。
「おい、ジャン。」
「なんすか。怖気づきました?」
ジャンが意地悪く口の端を上げる。
途端に、ギャラリーは「アイツは死にかけてバカになったんじゃないか」と騒ぎ出すし、ライナーとベルトルトは慌てた様子でジャンに逃げろと繰り返す。
でも、本人だけは、自分の身体が小刻みに震えていることも、本当は怖くて仕方がないことも知っていた。自分が本物の馬鹿だということもだ。
勝てるわけがない。目の前にいるのは、人類最強の兵士だ。
調査兵団に入団する前には、王都地下にあるスラム街でゴロツキとして暴れ回っていたと聞いたこともある。
数分後、いや十数秒後には自分はどうなっているのか———考えるだけで逃げたくなる。
だから、こうして強がるしかなかったのだ。
平気なフリして口の端を上げるジャンは、震える身体を、拳を握りしめて必死に抑え込む。
「決闘の趣旨は理解した。だから、俺とも約束しろ。」
「————なんすか。」
「俺に勝てるまで、なまえの前にその馬面を晒すな。」
「…!」
「ほんの一瞬も、な。それが守れるなら、俺は何度でもお前の決闘に付き合ってやってもいい。」
リヴァイが、ジャンの目をまっすぐに見据える。
彼は本気だ。
この決闘の意味を理解し、なまえからジャンを引き離そうと考えている。
きっと、調査兵団の幹部として部下に恩情を出すことはしないだろう。
むしろ、死ぬ気で勝ちにくる。
リヴァイには、負ける気など一切ないのだ。
ギャラリー達からも、ジャンに勝ち目なんてあるわけがないというような声が幾つも聞こえてくる。
ジャンは、悔しさで唇を噛んで、拳を強く握りしめた。
不思議だけれど、リヴァイが本気だと悟った瞬間に、恐怖による震えは止まった。
その代わり、ジャンの身体に走ったのは武者震いと、必ず勝つというやる気だ。
「上等ですよ。」
「あぁ、上等だ。」
両者の切れ長の瞳が、怒りの炎で燃え上がっている。
これ以上、彼らに好きに喋らせていては危険だと判断したミケにより、早急に決闘が開始された。
リヴァイが自身の班員を引き連れて訓練場にやって来たのは、ジャンやライナー達がそろそろ朝練を再開しようとしていたときだった。
そして、ライナーの引き留める声も聞かず、リヴァイのもとへ向かったジャンが口にしたのが、冒頭のセリフである。
ギャラリーは、ライナーとベルトルト、リヴァイ班の他に、間近に迫っている壁外調査に備えるために朝練に集まっている大勢の調査兵達が揃っている。
訓練場の雰囲気を一変するには十分な数だ。
唐突の決闘の申し込みに、シンと静まり返った中、リヴァイの眉間に深い皴が寄る。
「あ?」
「それとも、俺に負けるのが怖いですか?」
ジャンが嫌味に口の端を上げると、ギャラリーは驚きの表情を見せた。
その中でも、特に驚いた様子で慌て出したのは、ライナーとベルトルトだ。
「は!?お、おま…!何言いだしてんだ!?」
「す、すみません。リヴァイ兵長っ。ジャン、最近少し情緒不安定なんです…っ。」
「あ!?違ぇよ!俺は別に頭がおかしくなって言ってんじゃねぇ!!」
長身のジャンよりも、屈強な体つきをしているライナーとベルトルトが左右から羽交い絞めにする。
頭がおかしくなければ、人類最強の兵士に決闘を申し込まないと最もなことを彼らが言っても、ジャンの意思は揺るがない。
友人の心配をよそに、乱暴に彼らの腕を引き剥がすと、ジャンはまたリヴァイの前に立った。
「俺、冗談じゃこんなこと言いませんから。」
「・・・どうして、急に決闘なんだ。まずは理由を説明しろ。」
「俺と賭けをしてほしいんです。」
「賭け———。まさか、なまえを賭けて決闘しようと言い出すんじゃねぇだろうな。
なまえは物じゃねぇんだ。そんな馬鹿なこと言うつもりなら、さっさと失せやがれ。」
リヴァイが、これでもかという程に寄せた眉からは、嫌悪感がにじみ出ていた。
だが、ジャンは動じる様子もなく、首を横に振る。
「俺が勝ったら、次の壁外調査になまえさんの補佐官として復帰させてください。」
「あ?お前は何を言ってやがる。お前の不参加は、エルヴィンとミケ達でもう決定してある。
俺達が決闘をしようが、覆るもんじゃねぇし、ましてや俺が勝手に決めていいことでもねぇ。」
リヴァイが呆れたように言う。
最もな理屈だった。
だが、そこに、リヴァイにとって意外な人物が、ジャンに味方をした。
「問題ない、リヴァイ。それは、俺が許可してある。」
そう声をかけたのは、ミケだった。
分隊長の中でも特に真面目なミケが、朝練のために訓練場にいることはそこまで珍しいことではない。
リヴァイにとって驚くべきは、今言った彼の科白だった。
「どういうことだ。」
眉を顰めて訝し気に訊ねるリヴァイに、ミケは飄々とした様子で答える。
「昨晩、ジャンから俺に調査兵団退団への辞退を申し出があった。」
次に、ミケの言葉に驚かされたのは、ギャラリー達だ。
幹部陣と一部の調査兵しか、ジャンが調査兵団を辞めるつもりだったことを知らなかったのだから当然だ。
ざわつくギャラリーを煩わし気にリヴァイが睨みつける。
自分の関与しないところで、話が進んでいることに不快感を覚えているのだろう。
不機嫌なリヴァイの様子に気づいたギャラリー達も、次第に静かになっていく。
「そして、その代わりに、自分が人類最強の兵士に決闘で勝てば、
壁外調査に出られるだけの実力と身体であることを認めて欲しいと言われ、
俺はそれを認めた。」
「————。
エルヴィンは、アイツは何と言ってるんだ。」
「リヴァイに決闘を申し込むだけの覚悟があるなら、
あとは身体が本調子かどうかを証明するだけだということだ。」
「チッ。」
リヴァイが舌打ちをこぼす。
どうやら、エルヴィンからも許可が出ている決闘のようだ。
エルヴィンに忠誠を誓うリヴァイが、彼の決定に逆らうことはしないはずだ。
けれど、リヴァイはそれでも、ジャンから申し込まれた決闘を素直に受け入れるつもりはないようだった。
「おい、ジャン。」
「はい。」
「お前が勝てば、次回の壁外調査への参加が許可されるのは分かった。
なら、俺が勝ったときはどうするつもりだ。もう二度と俺の周りをウロチョロしねぇと誓いでもするか?」
「いいえ。
また、決闘を申し込みます。」
「あ?」
「勝って、壁外調査への参加が認められるまで、何度でもリヴァイ兵長に決闘を申し込みます。
そして、なまえさんを守るのにふさわしいのは、リヴァイ兵長じゃなくて俺だって、
世界中に認めさる…!」
「てめぇ…、自分が何言ってんのか分かってんのか。」
リヴァイの眼光が鋭くなる。
ジャンの答え、それはつまり、婚約者であるリヴァイに対して〝お前はなまえに相応しくない〟と言っているようなものだ。
静かになり始めていたギャラリーが、今度こそとどまるとこを知らないくらいに騒ぎ出す。
「なまえさんを賭けた決闘ってこと?」
「いや、ありえねぇって。自分が死にかけてるときに浮気してた女だぜ?」
「俺なら、こっちから願い下げだな。」
「どっちにしろ、女は一度心変わりしちゃったらもう戻ってこないわよ。」
「でもこれはどう見ても、そういうことだろ。」
ギャラリー達の騒ぎに乗じて、やって来たのはハンジとモブリットだった。
今朝も、ほとんど徹夜で研究室にこもり、よく分からない研究を行っていたようだ。
「なになに?皆、集まって何してんの?面白いこと?」
ワクワクした様子で訊ねるハンジをよそに、ギャラリーの調査兵が躊躇いがちに説明をしたのは、モブリットだった。
事態を把握しきれていない散らかった話を素早く理解したモブリットは、ハンジにかいつまんで状況を伝える。
「え!?なんだそのワクワクする話は!!
早速、なまえに———。」
「ダメですよ!!なまえに知られないように、
きっとジャンはこの早朝に決闘を申し込んだんでしょうから。」
「わ…分かってるさ。冗談だろう。」
アハハハ———と誤魔化すように笑うハンジを、モブリットがジト目で見やる。
そんなギャラリーの騒ぎには乗じず、ほどなくして、リヴァイとジャンの決闘がついに決定した。
どれほどリヴァイが、ジャンの申し込みに懐疑的であろうが、エルヴィンの許可があれば断ることが出来なかったのだ。
「なら、ルールは私が決めよう!」
ワクワクした子供のような無邪気な瞳で、一歩前に出たのはハンジだった。
何か言いたげなリヴァイだったが、特に反論もしないジャンを見やると口を噤んだ。
どちらにしろ、誰が何と言おうと、ワクワクしているハンジを止められるものなどいないのだ。
そうして決まったルールはこうだ。
制限時間は3分。決闘の場は、ライナーとベルトルトが引いてくれた約5メートル四方の枠内。
そこで、先に相手を地面に落とせた方の勝ちだ。また、ジャンの場合は、3分後もリヴァイに倒されていなければ、引き分けであっても、賭けは勝利となる。
決闘中の細かいルールについては、その度にハンジやモブリットが判断することになった。
「2人とも心の準備はいいか。」
審判となったミケが、ジャンとリヴァイの顔を見やり、最終確認をする。
強い決意と覚悟を宿した瞳でジャンがしっかりと頷けば、リヴァイが不服気味に舌打ちをした。
「おい、ジャン。」
「なんすか。怖気づきました?」
ジャンが意地悪く口の端を上げる。
途端に、ギャラリーは「アイツは死にかけてバカになったんじゃないか」と騒ぎ出すし、ライナーとベルトルトは慌てた様子でジャンに逃げろと繰り返す。
でも、本人だけは、自分の身体が小刻みに震えていることも、本当は怖くて仕方がないことも知っていた。自分が本物の馬鹿だということもだ。
勝てるわけがない。目の前にいるのは、人類最強の兵士だ。
調査兵団に入団する前には、王都地下にあるスラム街でゴロツキとして暴れ回っていたと聞いたこともある。
数分後、いや十数秒後には自分はどうなっているのか———考えるだけで逃げたくなる。
だから、こうして強がるしかなかったのだ。
平気なフリして口の端を上げるジャンは、震える身体を、拳を握りしめて必死に抑え込む。
「決闘の趣旨は理解した。だから、俺とも約束しろ。」
「————なんすか。」
「俺に勝てるまで、なまえの前にその馬面を晒すな。」
「…!」
「ほんの一瞬も、な。それが守れるなら、俺は何度でもお前の決闘に付き合ってやってもいい。」
リヴァイが、ジャンの目をまっすぐに見据える。
彼は本気だ。
この決闘の意味を理解し、なまえからジャンを引き離そうと考えている。
きっと、調査兵団の幹部として部下に恩情を出すことはしないだろう。
むしろ、死ぬ気で勝ちにくる。
リヴァイには、負ける気など一切ないのだ。
ギャラリー達からも、ジャンに勝ち目なんてあるわけがないというような声が幾つも聞こえてくる。
ジャンは、悔しさで唇を噛んで、拳を強く握りしめた。
不思議だけれど、リヴァイが本気だと悟った瞬間に、恐怖による震えは止まった。
その代わり、ジャンの身体に走ったのは武者震いと、必ず勝つというやる気だ。
「上等ですよ。」
「あぁ、上等だ。」
両者の切れ長の瞳が、怒りの炎で燃え上がっている。
これ以上、彼らに好きに喋らせていては危険だと判断したミケにより、早急に決闘が開始された。