◇第百一話◇騎士は姫の為に
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任務を終えて宿舎に戻ったリヴァイは、幹部フロアの廊下を歩いていた。
憲兵団との合意がなかなか得られず、出張や残業が続いている。
珍しく眠らない眠り姫にも負けないくらいの寝不足だ。
正直言えば、早くこの先にある自室に戻ってシャワーを浴び、眠ってしまいたい。
だが、意識的に足を向けてしまうのは、奥にある自分の部屋ではなく、廊下を曲がった先にあるなまえの部屋だった。
「今は、開けない方がいいかもしれませんよ。」
扉をノックしようとしたところで、リヴァイは、後ろから声をかけられた。
振り返れば、そこにいたのは第四分隊に所属する調査兵だった。
なまえよりも2年ほど後輩だったはずだが、先輩らしさのない彼女と友人のように仲良く話しているのをよく見かけていた。
でもそれも、悪い噂が出回るまでの話だ。
今では、調査兵のほとんどが、なまえに声をかけることをしない。
それでも、ハンジやモブリットがうまくやっているのか、第四分隊の調査兵達は、なまえに対して、比較的中立な立場をとっている。
その彼が、この扉を開けない方がいいという理由は、何なのか———。
訝し気に眉を顰めたリヴァイに、彼はその理由をこう伝える。
「さっきもここを通ったんですけど、部屋の中から、奇声が聞こえて来たんです。」
「奇声?」
「あー!とか、わー!とか。とにかく何言ってるか分からない奇声が響いたと思ったら、
今度は何かが割れる音とか、倒れる音とかも聞こえてきて…。
なまえさん…、とうとう壊れてしまったんですかね…?」
彼が、なまえの部屋の扉に視線を向ける。
そこには、彼女に対する心配と共に、戸惑いと不安も混じっていた。
彼もまた、悪口や無視、嫌がらせをしている若い調査兵達と同じで、誰を信じればいいのか分からなくて怖いのだろう。
「分かった。俺が確認しておくから、お前は仕事に戻れ。」
「でも…、そっとしておいたほうがいいんじゃ…。」
「なまえは大丈夫だ。」
リヴァイがハッキリと告げれば、彼の表情から、ほんの少しだけ不安が抜けた。
彼を纏っていた緊張も解けたように見える。
「ありがとうございます。」
しっかりと頷いた彼は、書類を持ち直して立ち去っていく。
なまえのことを心配しているのは、彼女に優しい言葉をかける仲間だけではない。
それに、彼女が気づいてくれさえすれば、もう少し、自分を大切にしてくれるかもしれないのに———立ち去る彼の背中を見送りながら、リヴァイは深く息を吐いた。
そうして、気を取り直したリヴァイが、反応のない扉を開いて見たのは、よく見たことのあるどうしようもない惨状ではなく、ただ無機質に物が散らばるだけの悲しい部屋だった。
憲兵団との合意がなかなか得られず、出張や残業が続いている。
珍しく眠らない眠り姫にも負けないくらいの寝不足だ。
正直言えば、早くこの先にある自室に戻ってシャワーを浴び、眠ってしまいたい。
だが、意識的に足を向けてしまうのは、奥にある自分の部屋ではなく、廊下を曲がった先にあるなまえの部屋だった。
「今は、開けない方がいいかもしれませんよ。」
扉をノックしようとしたところで、リヴァイは、後ろから声をかけられた。
振り返れば、そこにいたのは第四分隊に所属する調査兵だった。
なまえよりも2年ほど後輩だったはずだが、先輩らしさのない彼女と友人のように仲良く話しているのをよく見かけていた。
でもそれも、悪い噂が出回るまでの話だ。
今では、調査兵のほとんどが、なまえに声をかけることをしない。
それでも、ハンジやモブリットがうまくやっているのか、第四分隊の調査兵達は、なまえに対して、比較的中立な立場をとっている。
その彼が、この扉を開けない方がいいという理由は、何なのか———。
訝し気に眉を顰めたリヴァイに、彼はその理由をこう伝える。
「さっきもここを通ったんですけど、部屋の中から、奇声が聞こえて来たんです。」
「奇声?」
「あー!とか、わー!とか。とにかく何言ってるか分からない奇声が響いたと思ったら、
今度は何かが割れる音とか、倒れる音とかも聞こえてきて…。
なまえさん…、とうとう壊れてしまったんですかね…?」
彼が、なまえの部屋の扉に視線を向ける。
そこには、彼女に対する心配と共に、戸惑いと不安も混じっていた。
彼もまた、悪口や無視、嫌がらせをしている若い調査兵達と同じで、誰を信じればいいのか分からなくて怖いのだろう。
「分かった。俺が確認しておくから、お前は仕事に戻れ。」
「でも…、そっとしておいたほうがいいんじゃ…。」
「なまえは大丈夫だ。」
リヴァイがハッキリと告げれば、彼の表情から、ほんの少しだけ不安が抜けた。
彼を纏っていた緊張も解けたように見える。
「ありがとうございます。」
しっかりと頷いた彼は、書類を持ち直して立ち去っていく。
なまえのことを心配しているのは、彼女に優しい言葉をかける仲間だけではない。
それに、彼女が気づいてくれさえすれば、もう少し、自分を大切にしてくれるかもしれないのに———立ち去る彼の背中を見送りながら、リヴァイは深く息を吐いた。
そうして、気を取り直したリヴァイが、反応のない扉を開いて見たのは、よく見たことのあるどうしようもない惨状ではなく、ただ無機質に物が散らばるだけの悲しい部屋だった。