◇第百話◇小さな窓の外側に、君はいた
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ジャン!」
名前を呼ばれたジャンは、勢いよく振り返った。
気づけば、そこはもう自分の病室に続く廊下だった。
ここに来るまでずっと、最低なことを言って、妙に片付いた部屋に置いてきてしまったなまえのことを、ずっと考えていた。
身勝手にも、追いかけてくることを期待していたのだ。
だから、自分を呼んだのが、右手を軽く上げてヘラヘラとした笑みを浮かべるハンジだと認識した途端に、肩が落ちて、あからさまに面倒そうな表情が出てしまった。
「あぁ…、ハンジさんか。」
「なんだぁ~、そのあからさまに面倒そうな態度はさぁ~!」
文句を言いながらも、ハンジはヘラヘラと笑いながら、ジャンの肩をバシバシと雑に叩く。
楽しそうな口元からは、強烈な酒の匂いを漂わせている。
病み上がりの身体は、酒の耐性がなくなっているらしく、吐き気に襲われそうになって、ジャンは、すぐさまに顔を横に逸らした。
「ソレは。もしかして、なまえへのお土産かな。」
目ざといハンジは、ジャンが右手に持っている紙袋にすぐに気が付いた。
鼻も効くらしく、「なんだか甘そうな匂いがするよ。」とニヤニヤとしている。
「そんなことより、こんなとこで、何してるんすか。」
いつまでも肩を叩き続ける手を振りほどきながら、ジャンが適当に訊ねる。
別に興味もないが、健康を絵に描いたようなハンジにとって、医療棟は〝こんなとこ〟という場所だ。
今現在、医療棟には第四分隊の調査兵も入院していないはずだ。彼女がここにいる理由に、ジャンは見当がつかなかった。
「あ~、なまえを探しに来たんだけどさ。」
「なまえさんを?」
ジャンの眉間に、僅かに皴が寄る。
なまえを探すのならば、宿舎だろう。なぜここに探しに来るのか分からなかったのだ。
「でも、ジャンが今からなまえのとこに行くところってことは、
ここにはいないってことみたいだね。
まぁ、ジャンがそばにいてくれるなら、私達は必要ないかな。」
ヘラヘラと笑いながら、勝手なことを言うハンジに、腹が立った。
無意識に、紙袋を握る手に力が入る。
「必要ないのは、俺でしょ。」
気づけば、ジャンは、拗ねた子供のようなことを言っていた。
楽しそうにヘラヘラとしていたハンジの表情が、ピタリと動きを止めて僅かに眉を顰める。
そして、ジャンの身体を頭のてっぺんから足のつま先までをなめまわすように見てきた。
「なまえのところに行った帰りかい?」
「俺なんかいなくても、仕事もきちんとしてましたし、部屋も綺麗でしたよ。
とうとう、俺を卒業してくれたみたいですね。
こっちは仕事復帰できるかもわからねぇっていうのに、新しい作戦まで考えて、いいご身分っすよね。」
自嘲気味に口の端が上がり、ハッと鼻で息を吐く。
それは、嫌味以外の何ものでもなかった。
ハンジの片眉が、ピクリと上がる。
「せっかく起きれるようになったんだ。
久しぶりにさ、あっちで少し話をしないか。」
ハンジは、振り向かないままで、親指で自分の肩越しの先を指さした。
あっち、というのは奥にある待合所のようなスペースを言っているのだろう。
だが、今は、ハンジと楽しいお喋りをしている気分ではない。
「嫌ですよ。どうせ、徹夜で巨人話を聞かされるんでしょ。
エレンから、大変だったって聞いてますよ。」
「まさか~。さすがに病み上がりの君を徹夜につき合わせることはしないよ~。」
たぶん————適当な様子でヘラヘラと笑った最後に、物騒なセリフをしっかり聞いた。
名前を呼ばれたジャンは、勢いよく振り返った。
気づけば、そこはもう自分の病室に続く廊下だった。
ここに来るまでずっと、最低なことを言って、妙に片付いた部屋に置いてきてしまったなまえのことを、ずっと考えていた。
身勝手にも、追いかけてくることを期待していたのだ。
だから、自分を呼んだのが、右手を軽く上げてヘラヘラとした笑みを浮かべるハンジだと認識した途端に、肩が落ちて、あからさまに面倒そうな表情が出てしまった。
「あぁ…、ハンジさんか。」
「なんだぁ~、そのあからさまに面倒そうな態度はさぁ~!」
文句を言いながらも、ハンジはヘラヘラと笑いながら、ジャンの肩をバシバシと雑に叩く。
楽しそうな口元からは、強烈な酒の匂いを漂わせている。
病み上がりの身体は、酒の耐性がなくなっているらしく、吐き気に襲われそうになって、ジャンは、すぐさまに顔を横に逸らした。
「ソレは。もしかして、なまえへのお土産かな。」
目ざといハンジは、ジャンが右手に持っている紙袋にすぐに気が付いた。
鼻も効くらしく、「なんだか甘そうな匂いがするよ。」とニヤニヤとしている。
「そんなことより、こんなとこで、何してるんすか。」
いつまでも肩を叩き続ける手を振りほどきながら、ジャンが適当に訊ねる。
別に興味もないが、健康を絵に描いたようなハンジにとって、医療棟は〝こんなとこ〟という場所だ。
今現在、医療棟には第四分隊の調査兵も入院していないはずだ。彼女がここにいる理由に、ジャンは見当がつかなかった。
「あ~、なまえを探しに来たんだけどさ。」
「なまえさんを?」
ジャンの眉間に、僅かに皴が寄る。
なまえを探すのならば、宿舎だろう。なぜここに探しに来るのか分からなかったのだ。
「でも、ジャンが今からなまえのとこに行くところってことは、
ここにはいないってことみたいだね。
まぁ、ジャンがそばにいてくれるなら、私達は必要ないかな。」
ヘラヘラと笑いながら、勝手なことを言うハンジに、腹が立った。
無意識に、紙袋を握る手に力が入る。
「必要ないのは、俺でしょ。」
気づけば、ジャンは、拗ねた子供のようなことを言っていた。
楽しそうにヘラヘラとしていたハンジの表情が、ピタリと動きを止めて僅かに眉を顰める。
そして、ジャンの身体を頭のてっぺんから足のつま先までをなめまわすように見てきた。
「なまえのところに行った帰りかい?」
「俺なんかいなくても、仕事もきちんとしてましたし、部屋も綺麗でしたよ。
とうとう、俺を卒業してくれたみたいですね。
こっちは仕事復帰できるかもわからねぇっていうのに、新しい作戦まで考えて、いいご身分っすよね。」
自嘲気味に口の端が上がり、ハッと鼻で息を吐く。
それは、嫌味以外の何ものでもなかった。
ハンジの片眉が、ピクリと上がる。
「せっかく起きれるようになったんだ。
久しぶりにさ、あっちで少し話をしないか。」
ハンジは、振り向かないままで、親指で自分の肩越しの先を指さした。
あっち、というのは奥にある待合所のようなスペースを言っているのだろう。
だが、今は、ハンジと楽しいお喋りをしている気分ではない。
「嫌ですよ。どうせ、徹夜で巨人話を聞かされるんでしょ。
エレンから、大変だったって聞いてますよ。」
「まさか~。さすがに病み上がりの君を徹夜につき合わせることはしないよ~。」
たぶん————適当な様子でヘラヘラと笑った最後に、物騒なセリフをしっかり聞いた。