100年以上続いた虚偽の繁栄と安寧は、突然現れた超大型巨人及び鎧の巨人によって呆気なく破壊された。
〝ウォール・マリア〟を放棄した人類は、２割の人口と３分の１の領土を失い、活動領域は〝ウォールローゼ〟まで後退した。
それから5年後、再び姿を現した超大型巨人によって壁が破られ、人類はまたも巨人の侵攻を許した。
奇しくもその日は、訓練兵達が解散式を終えた翌日だった。
訓練兵を卒業し、正式な兵士となっていた彼らは、有無を言わさずに巨人討伐作戦に参加させられることになった。
その結果、ある訓練兵の突飛な作戦によって壁の穴を塞ぐことに成功し、なんとかそれ以上の侵攻を防ぐことは出来た人類だったが、多くの勇敢な兵士を失った。
そして、そのトロスト区奪還作戦での地獄を目の当たりさせられた訓練兵達は、あらゆる思いを抱くこととなり、成績優秀者のほとんど全員が、壁外での活動を主とする調査兵団に命懸けの入団志願をするという、未曾有の事態を生んだ。
あれから、4年の歳月が流れた。
訓練兵でありながら、本物の巨人を討伐しなければならなくなった不憫な彼らも19歳を超えた。
元の素質と実力に加えて、実践経験まで積んだ彼らは、今では精鋭兵と呼ばれるまでに成長している。
それでも、いまだに巨人の正体については、謎に包まれたままだ。
しかし、人類が得たものもある。
巨人化出来る人間、エレン・イェーガーの存在だ。なぜ、彼が巨人になれるのかは分からない。
しかし、エレンを監視下に置く許可を得た調査兵団は、日々の訓練や壁外任務に加え、巨人化実験を続け、人類の勝利のために貢献し続けている。
今では、巨人化を操ることが出来るようになったエレンのおかげで、20年以上はかかると思われていたカラネス区からシガンシナ区への行路作成任務も、はるかに早いスピードで進み、あと1年ほどで大部隊を送り込めるようになる算段だ。
人類は、少しずつではあるかもしれないが、着実に、確実に、勝利への歩みを進めている。


これは、そんな過酷な時代に本当にあった、〝眠り姫〟と彼女のことを不器用ながらも心から愛したただの男が綴った、夢のような恋の、真実の物語である———。