MOMENTS

指先の愛

2024/04/26 21:38
健全
ネジはベッドに腰掛けるナルトの正面に周った。
うとうとする彼の頭を抱きかかえてネジは自身の腹にそっと、ナルトを凭れさせた。

ちょうど良い力加減で大まかに3箇所、圧をかけられると、ナルトの頭がじーん…とする。
親指で、頭のてっぺん、それから頭部全体を手のひらで包むようにされながら後頭部を他4本で “指圧” される。

(あぁ……眠りそう……)

ネジの手つきは繊細そのもので、ナルトは夢心地だ。

脳から頭皮にまでかけてじんわりとした感覚を覚えるのは無意識に力んでいたのが、ほぐれているからなのか。


「…お前は、恐らく体の使い方が不器用なんだ……」

声量を抑えた低めのトーンが、さらに眠りに誘う。
ネジの声って、こんなに良い声だっただろうか、とナルトはぼんやりと考えてしまう。
それは自身には未だないものでナルトは少し悔しいのだが、そんなことよりも今はただ眠りに負けそうだ。
しかし眠るのは勿体ないような気もして、なんとか意識を保つことにする。

この好い感覚を、ちゃんと覚えていたい。
眠ってしまえば、一瞬で朝になってしまうのは惜しい。
ずっと、こうしていて欲しい。

ふわふわする。


「余計な力が入って、必要以上に疲労する原因だろう…」

そんな、全力で力強いナルトが好きなのだけれど……。
ネジは腹に凭れかかる金髪を優しく撫でた。
思わず頬が緩む、ナルトをほぐしているのは自分だというのに……これでは逆だ。
ナルトがもぞもぞと身動ぎをして目を覚まそうとするのが腹に伝わり、くすぐったい。

「ん〜…、オレってば…体力だけが、取り柄だしよ……」

「ふん、そうだな……」

「まあ〜、また疲れた時はお前にこうしてもらおーっと……」

「調子に乗るな……」

「いーじゃん、ネジのマッサージ上手いしさ……」

「ただ、柔拳の知識を応用しているにすぎん……」


一点集中的な指圧の次は。
頭皮全体をトントンと、やや早めの速度で指の腹全体を使って摘むようにして弾かれる。

するとナルトは、今度は眠気よりも、頭が軽くなりスッキリと冴え渡るような心地を覚えた。
相変わらず脳内はじんわり、ふわふわしているというのに相反して思考がクリアになっていくよう。

脳が活発になるが、それでいて疲れ知らずな万能感。


「すっげーよ、お前。さっすが…天才……」

「大げさだな……」


五分ほどして名残惜しくも、リズミカルな音が止んだ。
腰掛けるナルトの背後に、ネジが膝立ちでベッド乗る。

そして、手のひらがナルトの首から肩にかけて這う。
親指を首筋に沈めるようにして少し強く押す。
そのまま下へと滑らせて、肩の凝った箇所をゆっくり、さらに圧をかけていく。
他4本の指は体の前面、鎖骨の下辺りナルトの肩の付け根を円を書くように摩りながら、ほぐしていく。
いつも肩肘張っていたのが、次第にゆるんでいく。

(あ〜…すっげー気持ちいいってばよ……)



「ナルト……、当てっこゲーム……しないか?」

「当てっこゲーム?」

「オレが、お前の背中に指で文字を書くから…お前はオレが書いた文字を言い当てるんだ」

「あー、そういうゲームか」


意外と力んでネジ曰く凝っているらしい背中を、二、三度ほど摩られ、肩甲骨周りも指圧してくれる。
ゲームはするけどマッサージもちゃんと続けてくれるようで変なところ律儀だよな、とナルトは可笑しくなる。

「…ナルト……。もし、オレがゲームに負けたら……罰ゲームでも、するか?」

「なんで負けること前提なんだってばよっ……」

「では、もしオレが勝てば、ご褒美をくれるか……?」


後ろから首に腕を回されて耳元で、ネジが妙なことを言うもんだからナルトは再び体を固くした。
いま下半身まで元気になられてしまっては困る。

早速ゲームが始まってしまったようで、ネジは何やらちょっと複雑な漢字?を書いているみたいだ。
ひらがなやカタカナだったら簡単に勝てたかもなのにな、とナルトはかなりの画数の多さに苦笑する。


「…あのさ。褒美、何がいいんだってばよ……」

「…ナルトのもの、くれ……♡」

「じゃあさ、お前が負けた時の罰は……?」

「…オレのこと、ナルトの好きにしていい…というのは」

「へっ…、乗った……」





『我愛死你了』


書かれた文字は分かんなかったけど気持ちは伝わった。
よって、ゲームは引き分け。
どうせ、やることは1つしかないんだからさ。


「ナルト…♡ 今夜は寝かさないからな……」

「…それってば、オレのセリフじゃね」



夜はまだまだ、これから────





THE END


あとがき⠀



どの時代設定でも読めそう。
だけど一応2部の時系列設定で話を書いた。
ナルトが火影でも良い気がしたけど(肩凝るとか似合うし)、ゲームしちゃうのなら子供の時でもいいかなーって。

ネジ点穴を知り尽くしてるしツボ押しとか上手そうだよね!





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