THE ONE - i promise love of the eternity
一時の快楽でいいから、何もかもを捨てて現実逃避をしてみたくなった。
ナルトが幸いなことに、己を犯してやると言ったからネジは遠慮なくナルトによって内側から鬱憤をぶっ壊してもらおうとした。
体を貫かれると、ナルトがまるで、己の中心にまで入って来たかのようで、ネジは心を素直に開けるか閉ざすべきか迷った。
ナルトだけでなくネジにとっては他の仲間にも、それはあまり言いたくはない事だった。
つくづく自分が周りの仲間とは一歩引いた存在なんだと自覚させられる気がしたからだ。
『もうそんな時期ですか……』
『そうだ。このご時世で、というのは少々ネジはまだ若い気もするが、悪い話ではなかろう』
『……はあ。日向を思えば確かにそうです。本人の希望はどれほど汲むと考えますか?』
『本人が立場を弁えていれば、自ずと良い答えが出てくるだろう』
────それは、実質、断る事はほぼ許されないものと捉えるのが自然だった。
“結婚”
漠然と将来的にはと考えていたようで、全然考えてなどいなかった。
戸を隔てて聞こえてくる、己の人生などを聞きたくなくて、ネジはそっと逃げる様にしてその場を離れた。
もともと一族においての結婚は、政略的なもので行われるのも多かったため、ネジは子供の頃からそんなものだと疑う事なく思い続けてきた。
それで結果的に、ネジの父と母のように──
お互いを最良の人生のパートナーだと思える事が出来れば万々歳だ。
ヒナタについてもネジは昔は哀れな目で、そして軽蔑の目で見ていた。
叶わぬ想いを抱き続けている彼女が正に、立場を弁えぬ宗家の甘ちゃんだと。
長年そういう認識で結婚を受け入れていたのだから、この話、諦めが勝ってくれるだろうと、ネジは己の心を信じてみた。
逃げるようにしてあの場から離れて、そうしてとぼとぼやって来た、あの時、本戦会場に使われた場所。
誰もいない観客席にネジは座った。
目に映るのは、かつての自分と今と変わらぬナルト。
諦めるどころか、どんどん諦め悪くなっているではないか。
誰のせいで、こんな諦め悪くなってしまったんだ……。
『オレが火影になってから、日向を、変えてやるよォ!!!』
────ナルトが、希望の言葉を叫んだ。
お前が火影になるのを待ってさえいれば、本当の本当に自分の人生を歩める時が来るのか?
「ナルト……ッ……」
決して結ばれない事が辛いのではない。
ただナルトによって運命の呪縛から解放されたはずなのに、未だ自分を縛るものがあったことを再認識させられて悔しいのだ。
ネジはどこか不安だった。
もう闇の中には居ない自身を、ナルトはあの眼でまた見つけ出してくれるだろうか?
ナルトに救われたからこそ薄々気づいてしまった、今までは知らずにいられたこの不安感。
結婚を呑んでしまえば、運命に負けた事になる。
ナルトが変えてやると約束してくれた、きっとネジの未来も含めた日向の未来、それを裏切ってしまうことになる気がする。
あの口約束は、ネジにとって希望であると共に、己とナルトを結ぶ絶対的な “繋がり” でもあった。
だから、ナルトと結ばれることがなくとも、悲しくはなかったし繋がっていると信じることが出来ていた。
だが今はそれを、失うような気さえしていた。
自らの意思が通用しないような所で知らず知らずのうちに……。
ネジが人知れず大事にしていた大切な大切な繋がりをいつの間にか奪われかねない焦り。
ネジは不安だった。
ここで涙を流すのはあの時以来だ。
あの時は晴々とした気持ちで泣いてたのだな、とその時の気持ちが蘇り、今の気持ちのやり場のなさにネジは戸惑った。
あの時の涙は、一筋に頬を流れて全てのつきものを洗い流すかのようにして、すぐに止まった。
今はどうだろうか。留まることを知らぬかのように、拭っても拭っても熱い涙が溢れ出してきて止まらない。
前回のアホっぽさからかけ離れましたね~~*\(^o^)/*
そうです! 縁談の話です! ありがちですね!
次回もこんな感じになりそうです。