incomplete


平均気温が四十度である、灼熱の国にて、
濃い口ひげを生やした男は、遠い国への旅行を計画していた。
忍五大国の中でも最強と名高い木ノ葉の里を有する、火ノ国に思いを馳せる。
広大な地域、緑が溢れる比較的、温暖な気候。随所にあるという木ノ葉名物の温泉スポット。

「楽しみであるな……」



◇◇◇



「ナルト、喜べ」

綱手はニッコリと笑った。
ナルトは身を乗り出して、目を輝かせる。
同じく火影室に呼ばれていたガイ班の二人がまたか……と、やや呆れ気味にナルトを見遣る。

「なになに〜!? どんな任務だってばよ!! サスケに繋がる任務か!?」

「…残念ながら、それは違うな。だが、責任重大な任務だ」

「Aランク任務とか!?」

「いや、Cランク任務だよ」

ナルトはあからさまにガックリと肩を落とした。

「Cランクなんてそんな大した任務じゃねーじゃん!! もともと下忍に割り当てられるランクじゃんかよ!! 綱手のばーちゃんってばケチッー!!」

ネジはナルトの肩をガシリと掴んだ。
大きくため息を吐いてから、ナルトに諭す。

「高いランクの任務に着きたいのは分かるが、ランクが低かろうが任務は任務だ。里は依頼が来ることにより成り立っているんだ」

「…ッ、……けどよー!!」

ナルトは反論のしようも無いネジの正論に言葉を詰まらせるも、気持ちの面では納得がいかない様子でむくれてみせた。

ネジとナルトのやり取りを眺めていた綱手が、おもむろに口を開く。
呆れ返りながらも、綱手のその顔はほくそ笑んでいるようにも見える。

「Cランクと言っても、"護衛任務"と言ったら大層な任務に聞こえるか?」

「護衛任務……。うーん、まあ悪い気はしねーけど、護衛任務ってなんかいっつもオレってば色んなことに巻き込まれてる気がするってばよ……」

「ハイハイッ!! 綱手様!! 護衛任務とは一体どなたを護衛するのでしょうかッ!?」

シュビッと、腕を振り上げる風を斬る音が鳴った。
これまでの一連の流れを黙って聞いていたのだが、なかなか話が進まないので、少々せっかちなリーは綱手に任務の内容を求めた。

「護衛任務かー。久々かもー! でも護衛任務って確かになんだかんだ面倒なのに巻き込まれるのよね……」

テンテンは、過去におこなってきた護衛任務のいくつかを思い出しては珍しくナルトに同意見だと思った。




他国の大富豪が火ノ国を巡る旅行に一週間ほどの予定で訪れると綱手により聞かされた。
近頃の情勢の緊張化、広い国内での点々とした治安の悪化も見込んでその大富豪は木ノ葉の忍に護衛任務を依頼してきたのだった。

情勢の緊張化と言ってもまだ国内は平和ではあるし、治安の悪化と言っても過激な悪化ではない。
よって、任務はCランクとされ、人員は下忍であるガイ班の三人とナルトの、計四人に決まった。

「小隊長は、ネジ! お前だ!」

ここまで任務の詳細の説明を終えると、綱手はぶーぶーと不貞腐れて火影の机に向かって身を乗り出そうとするナルトを少々強引にネジに預けた。

下忍と言えども、実力だけなら確実に中忍レベル以上であり、白眼の能力を持つネジをこの任務に就け、小隊長としたのは綱手による他国の大富豪への配慮でもあった。


“一週間”
ネジは長いと思われる日数に、今から気が重いとため息をついた。

「………そういうわけだ。ナルト。おとなしくオレの言う事を聞いてもらうぞ」

ナルトを除く、三人は綱手に一礼をして火影室を後にした。



◇◇◇


件の大富豪が木ノ葉に到着するのは明日だ。
この日は四人とも帰された。

テンテンが楽しそうにスキップをして、ほかの男子よりも数歩先へと歩み出すと、そこで振り返って後ろを歩いてくる(一人は逆立ちで、なおかつ指先立ちだが)三人に笑いかけた。

「護衛任務って言ってたからどんなのかと思ったら火ノ国での旅行に付き添うだけでしょ〜? むしろ、任務というより、旅行でもあるじゃない! そう思ったら楽しみになってきたわ」

「旅行ッ!! たしかにそうとも考えてもいいですねッー!! まるで青春の修学旅行ですッ!!! クゥーッ!!! ガイせんせー!!!!! ボクは明日から青春の修学旅行に行って参ります!!!」

リーは逆立ち指先立ちをやめたかと思いきや、今度は滝のような涙を流しながら明後日の方を向き(今は昼間だがリーには夕陽が見えているのだろう)、ガッツポーズを決め込んでいる。

いつもの事なので、テンテンもネジもそんなリーに対して今さら言及することもなく。


「うーん、旅行かァ……。たしかに、そう思うとちょっと楽しみになってきたってばよ……! でもお前らと旅行ってのはちょっとオレってば心配……。熱血おバカに、武器おバカに、ネジは……、ゴチャゴチャうっせえしなァ……」

「武器おバカってなによー!! そういうナルトはバカでおっちょこちょいでドジでマヌケででしゃばりで自己中でKYじゃないー!!!」

「なっ、なんだとー!! オレってばそこまで酷くねーってばよッ!!!」

「ナルトくん!! 明日は思いっきり青春の修学旅行を楽しみましょうね!!! おうちに帰るまでが修学旅行です!! 存分に楽しもうじゃありませんか!!」

そんな彼らを見て、
ネジは本日何度目かの大きなため息をついた。

「一週間の、旅行……。先が思いやられるな………」



to be continued…





青春の修学旅行始まります〜!
特に何も着地点とか決めてないけど、とりあえずワチャワチャと旅行しながら、たまーに行く先々でちょっとした戦闘になったり、旅館とかでは、ほんのりナル←ネジのドキドキ♡ハプニングとか交えつつ………みたいなそんな話になりそうです(たぶん)。





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