request's short stories
キミを幸せにしてやりたいのはボクだ。
いつも何か難しいことを考えているのでは、とただの癖かもしれない顰めっ面を見て思う。
しかし、今一番難しいことを考えているのはきっとボクだと思う。
自分の幸せでなく他人の幸せについてを考えているからだ。
ネジは、常に先の先の、さらに先を見つめているような気がする。
近くなった距離がまた離されてしまって、それを許せず追いかけてしまう。だがネジはちゃんと振り向いてくれる。
追いついてきているのか確認でもしているのだろうか。
「何か考え事か?」
「……いえ、大したことじゃないんです」
ネジはいちいち待ってなどくれないし、ネジはネジの進みたいように、ネジのペースで歩いてくれていいのだ。
ネジが自由であることをボクが止めるなんてそれこそネジの幸せを自らが遠ざけてしまうことになりかねない。
ボクはただそれを追いかけて追い越せるように努力するだけ。
そうは言ってもやはりボク自身がネジのことを両手を広げて大きく受け入れることができるようになりたいのは事実。
キミを全身全霊で受け止めて、ネジの腕を取って、それから少し先を歩いてやりたいと思う。
こんなことを考えているのは世界中でボクただ一人だけ。
日に照らされてキラキラと輝く横顔が眩しい、これが本来のネジのあるべき姿なのだ。
今のネジはボクが何をすることなくとも幸せそうだ。
けれど……、
「ネジ、キミを幸せにしてやることができるのは他にいても、幸せにしてやりたいと思ってるのはきっとボクが一番ですから」
「……リー?」
「任務前にこんなこと言ってすみません。そろそろテンテンとガイ先生が来るかもですね」
「リー……。たぶん幸せは、一つではない。オレはそう思う」
言葉足らずで分かりにくいが、ネジにとってはあれもこれもそれも全てが幸せなのだろう。
それはもちろんボクの存在も含めて。
(……でも、違うんですよ。その全ての幸せをボクで感じてほしい。ネジが愛しいからです)
時に、人を愛しすぎるとその人の幸せを奪いかねないのだな、と思う。
その人の幸せ全てが、自分が対象となるわけではないから辛くなる。
幸せは双方がそう思っていなくては、幸せになりきれない。
ネジの幸せを奪うことはボクにとっての不幸せになる。
(幸せの意味について二人で考えようと提案するのは重いでしょうね……。それにこれから任務ですッ)
THE END
幸せについてを考えたいおセンチなリーくんです。
リネジというより思いっきりリ→ネジになりましたが、気に入っていただければ幸いです。
この度はリクエストしていただきありがとうございました!