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「はーあ、泥だらけ……」

本日の第七班の任務内容は田んぼや畑作業の手伝い。
二件の任務を終了して綱手に任務の報告を終えたところだ。

「んじゃ、まあ、オレはこれからAランク任務があるからこれで。解散!」

カカシがドロンと煙に消えた。
サクラは泥だらけの体を不快そうに嘆く。

「アンタが暴れなければこんなに汚れなかったのよ!」

「えー、サクラちゃん……で、でもさ、サスケのヤローが……」

「アンタがサスケ君にちょっかいだすからでしょ!」

「フンッ、どうでもいい。オレは先に帰るぞ」

二人のやりとりを眺めていたサスケはそれに飽きたのかスタスタと先に歩き出す。

「あっ、待って、サスケ君!! ねえ! みんなで銭湯行かない~?」

サスケはサクラの言葉に振り返ると、無言で再び歩き出す。
無言ということは了承の意味だ。
サクラは心の中でガッツポーズを決めるとさっそく小走りでサスケの隣まで追いついた。

「ナルト! アンタも早く来なさいよ~!」

「あっ、待てってばよー!!」




銭湯に着くと三人は男女に別れ、脱衣所に向かう。

「ん?」

そこでナルトは何やら不審な様子の男が気になった。
その男はとある一つのロッカーの辺りを周りを窺いながらウロウロとしていたのである。

そのロッカーは扉などはなく、棚の中に適度な大きさの籠があり、そこに衣類等を入れるだけのものだ。
ナルトは男がうろついている辺りのロッカーを凝視してみた。
すると何だか見覚えのある服が見えた。
籠から袖らしき部分が覗きみえたのだ。

一部分を見ただけで分かる、独特な素材で出来ている緑色の服。

(間違いねえってば、あれはゲジマユの服だってばよ!)

「何してる、ウスラトンカチ。 早く中に入るぞ」

「えっ、ああ、うん……」

服を脱ぐことを忘れて男の動きに気を取られていたナルトは急いで服を脱ぐと、サスケを追いかけてガラスの引き戸を開けて浴場に入る。

男は辺りを再び見回すと、ゲジマユ、否、リーの籠の隣の籠に手を入れた。
数秒、籠の中を漁ると男は目当ての物を見つけたようだ。




「あ、ナルトくんとサスケくんではありませんか! お久しぶりですね!」

「やーっぱり、ゲジマユだってば! 偶然だな!」

やはり一緒に来ていたリーの左隣に座っていたネジもナルトとサスケの存在に気づき、振り返る。

「……ナルトか。空いているところに座るといい」

ネジの言葉に頷き、ナルトは空いていた一番右端であるリーの隣の椅子に座ろうとしたが、その後すぐに入ってきた先程の男に先に座られてしまったので、他に空いていたネジの左隣の椅子に腰をかけ、サスケもナルトの左隣に腰をかけた。





(コイツってば……髪だけ下ろして黙っていれば一瞬女の子と間違えるってばよ……)

隣で髪に水滴を滴らせるネジをナルトは横目で一瞥した。
普段なら服装や態度や声でそんなことは微塵も感じないのだが。

「おい、ナルト。なんか妙な視線を感じるんだが……」

「え!? オ、オレじゃねーってばよ!!?」

「違う。お前ではなく、……あの男からだ」

ネジは、リーを挟んで一番右端に座る見覚えのない男に薄紫色の目を向けるとすぐにナルトに向き直り、その男の視線をコソッとナルトに耳打ちした。

「そういやさ、あの男ってば、さっきオレたちが服脱ぐときにゲジマユ達のロッカーの前をウロウロしてたんだ……。何してたんだろうな?」

「確かに怪しいが……、別に盗むものなど何も持ってないからそれについては大丈夫だろう」

「だったらいいんだけどよ……」





体を洗い終えた四人は湯船に浸かろうとしていた。

「ナルトくん! 我慢勝負しませんか!! どちらがより長く浸かっていられるか勝負です!!」

「ああ! いいぜ! 望むところだってばよォ!!」

リーの『せーの』の合図で二人は勢いよく湯船へとダイブする。
幸い他に湯船に浸かっている客が居なかったためネジは注意することはしなかった。
湯船の中のお湯の動きが静まってから、サスケとネジもゆっくりと湯船へと浸かった。

「ネジも一緒にやるんですよ! サスケくんもどうですか!?」

「断る……」

「興味ない。勝手にやってろ」

「冷たいですね、二人とも。せっかくのお湯が冷めてしまいますよ」

「お前が暑苦しいからちょうどいい湯加減になると思うぞ」

「ギャハハハハ!! 確かにそーだってばよ!!」

ネジの地味な冗談にナルトは大笑いする。
リーは少しだけ頬を膨らませて怒ったそぶりをしてみせたが、まんざらでもないようだ。
そんな四人を後にして、いつのまにか例の男は浴場から出ていた。





ナルトとリーが上気せる前にと、ネジはそろそろ湯船から出ようと呼びかけた。
ネジの呼びかけの直ぐ後にサスケは素直に一人だけ湯船から出た。

「まだこれぐらい余裕ですからッ! ネジたちは先に上がっててもいいですよ!」

「上気せられて迷惑するのはこっちなんだ。いいから早く出るぞ。ナルトもだ」

「しゃーねえってばよ。勝負はお預けだ!」

「仕方ないですね……。ではまた今度の機会に是非勝負しましょう!」

四人はガラスの引き戸を開けて、脱衣所へと出てきた。
服を置いているロッカーの場所が、それぞれ違うため四人はいったん分かれる。
先程の男はとっくに着替えも済ませていて、脱衣所には姿はなかった。

リーは髪の毛を荒っぽく拭いて体も拭き終わると、緑の服を慣れた手つきで着た。

「ふう。あれ、ネジ、どうしたんですか?」

リーは未だに腰にタオルを巻いたままのネジに目を向けた。
その顔は心底困ったような表情で、自分の衣類が入っている籠の中を漁っていた。

「何故だ……おかしい。無いはずないだろう……」

「何が無いんですか?」

「……下着だ……」

「えっ!? ネジの黒のボクサーパンツが誰かに盗まれてしまったのでしょうか!? それは大変です!!!」

「うるさい!! 大声でそんなこと言うな!!」

「すみません……」

シュンとした顔でリーは俯いてみせた。
まもなく、着替え終えたナルトとサスケがリーたちのところへやって来た。

「お前ってばパンツねーのか? ぜってーさっきの男だってばよ!」

「ああ、それしか考えられない」

リーとサスケは二人の話の内容についていけないのか困惑した顔になる。

「さっきの男ってなんだ? どういうことだウスラトンカチ」

「さっきオレたちが服を脱ぐときに、変な男がこの辺をうろついてたんだってばよ。しかも、風呂場でもネジがその男の視線を感じたって言ってたし、あの男に違いねえってばよ!」

「なぜそれを気付いた時点で言わない?」

「だってよ、まさか男のパンツを男が盗むなんて思わねーもん!!」

それもそうだ、と納得してサスケはこれ以上ナルトを問い詰めることはしなかった。

「とりあえず、その男を捕まえてネジのパンツを取り戻しましょう!」





ネジを除いて三人が脱衣所から出て、男を捜し始めた。
しかし、その男はすぐに見つかる。
ベンチでコーヒー牛乳を飲みながらぼうとしていた。
ナルトはその男に詰め寄る。

「やいやいやい!! この下着ドロボー! ボクサーパンツを返せってばよ!!」

男は口に含んでいたコーヒー牛乳を勢いよく噴き出してナルトに目を向けた。

「な、何故ばれた!?」

「さっきロッカーんトコで、お前ってばうろついてたからな! しっかりこの目で見てたってばよ!」

男は他の客が行き交うここでのこの現状が、とても恥ずかしくなったのであろう、ポケットに押し込んでいた黒のボクサーパンツを素直に差し出した。

「すまない、もうしないから! 悪かった!!」

「分かりゃいいんだってばよ。それよりさあ、なんで男のパンツなんか盗もうって思ったんだってばよ?」

男は一瞬、キョトンとした顔をしたと思えば驚愕した顔へと変わった。

「ええ?! え? あの髪の長い子、間違えて男湯に入っちゃった女の子じゃなかったの!?」

「違ェってばよ……。紛らわしいけどアイツってば間違いなくチンコのついた男だってばよ……」


男がショックのあまり猛ダッシュでその場を後にしたのは約一秒後のこと。
『うわあああん!』という情けない泣き声が遠くから聞こえてきたのだった。



「ほら、ネジ! パンツ取り返して来てやったぜ!!」

ナルトは得意げな顔をして脱衣所で待っていたネジに取り返したパンツを渡した。

「……男に下着を盗まれるなど……、盗まれた下着を履くなど……気持ち悪い……」

「じゃあノーパンで帰んのかよ? お前ってば……」

「うっ……、それは、……嫌だ……」




THE END





なんだか下品ですみません\(^o^)/
銭湯ネタなのかパンツネタなのか分からなくなりましたが、あとナルネジ要素少なめな気もしますが書いてて楽しかったです!
気に入っていただけると嬉しいです!
この度はリクエストありがとうございました!






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