青い果実




「最近、うちのナルトとお前のところのネジくんが仲良くやってるみたいよ、ガイ」

道すがら、ばったり出会した我が永遠のライバルであるカカシにちょっと話があるから、と近くの脇道に逸れた森に誘われた。
人目を避けるかのような木陰で、カカシはそんなことを言ってきたのだ。

「ふむ、意外な二人ではあるな。まあそれも、青春」

「なあ、オレは思うのよ。あの子、ネジくんのこともう少ししっかり見てやったほうがいいと」

真剣な面持ちでカカシは、妙な心配をしてくるもんだ。

「確かに。ガイ、お前にとってリーくんが特別だと思うのは分からないでもないし、お前たちの言う青春を詮索するつもりはないが……」

「カカシ……。ネジは心配しなくとも良い子だ。お前のところのナルトのお陰だそうじゃないか」

「オレは、思うのよ。サスケが里抜けしてしまった今だからこそ……余計にそう思うのかもしれない」

ナルトも、そしてネジもオレたち大人が気づかないうちに少しずつ、しかし確実に大人になっているのだと。
しかし今が一番、不安定な年頃だということ。

鋭い片目でそう告げてきた。


カカシと別れて数刻経った今。
夕日を背にして目の前にいるのは、オレよりも一回りも小さい教え子だ。
だが改めて見ても、ずいぶんしっかりした気風で心配するようなところがあるようには思えんのだが。
確かに、半年ほど前までは危うさも見受けられた。
だが、それだって愛を持って話せばこちらの言うことを理解して、きちんと約束事は守れる子だった。

『ああいう子こそちゃんと見てないと、とんでもないことしでかすかも、しれないでしょ』

ネジがなんなのか、と訝しげにじっとこちらを睨む。
なかなか話を切り出さないオレに、少し苛立っている。

「カカシが言っていたぞ! どうやらナルトくんと、最近仲良くやっているみたいではないか!」

「…………」

ハハハ!
さては、照れてるな?
可愛いヤツめ。
ネジにも友達が出来て先生は嬉しく思うぞ。


「ナルト…と、寝た……」

「は?」

「…オレが、誘った」

「え? え?」

「…ナルトと……繋がれたとき、気持ち良くて…。初めて心の底から生きている幸せを感じた……」


笑顔を張りつけたまま困惑して言葉が出てこないオレをよそに、ネジはぽつりぽつりと語り出しながら。
自分でも分からないというような顔をして泣いていた。
風穴を空けられた脇腹と肩に手をやり、自身の身体を掻き抱くかのようにして身を震わす。

正直、教え子とはいえネジの泣いた顔など初めて見た。
リーはしょっちゅう泣くが、ネジはいつも無表情だ。

あまりに急な出来事に、理解が追いつかない。


「貴方は、いつもいつもオレを大人扱いしてくるクセに子供扱いしてくる……」

「ちょっと待て、ネジ。何が言いたいのかさっぱり分からんのだが……」

「ガイ先生。オレは……、ナルトのためなら何だってするつもりだということを、知っておいてください」


確かに、この子は一度死にかけた。

オレは、教師としても上司としても初めて痛感した。
この子の事が、まるでさっぱり分からない。

カカシよ────
お前ならば、この子のこと理解してあげられたか?


この少年は、エゴ混じりの拙い恋に苦しみながら、『死』に憧れ、酔っているのだろうか。
いつか、一瞬で散ってしまいそうな、危うい青春だ。

もう一人の冷めた自分が、心の片隅でそう言っている。




THE END







ガイ先生とネジはある時期を境に、もう先生と生徒としてじゃなくて対等な立場としてお互い意識するんだろうな、と思っている。

ネジは良い子だけど、ガイ先生との熱い約束は守らないし、父上の 「お前は生きろ」 という言いつけも結局は、破っちゃう。
そういう反骨精神が見え隠れする、強さを兼ね合わせた健気さ可愛さがあるんだよ〜!






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