すべての者の中で


風影奪還任務が終わり、木ノ葉に向けて砂漠の中帰路に着くさなか。

ぐったりしたカカシ先生をおぶさり、猛スピードで走り去ったガイ先生に置いてけぼりを食らった部下たち。
リーは、おぶされと背中を向けてきたがオレはそれを断り、それならばと他の皆の荷物持ちをやや強引に引き受けていた。
そして、そのままガイ先生の後を追うようにリーは走り去り、テンテンとサクラもそれに続いた。


「オレたちも急ぐぞ」

そう言って不慣れな砂漠で遅れを取らぬよう荷物が入ったワンショルダーバッグの肩紐を握る力を強めた。
それに続いてナルトも急いで後を追う姿勢をとったのもつかの間。

ああそうだ、とナルトがこちらを振り返った。

「お前、上忍になったんだってな! さっすが天才だってばよ!」

そう言って白い歯を見せて快活にナルトは笑ってみせた。

「オレも負けてらんねーぜ」

それからナルトは不敵に笑う。


一瞬にしてオレの時間が止まった。
頭の中は、たった今言われた言葉が何度も繰り返された。

任務で疲れていたはずなのに体が浮くような心地さえ覚えた。
気分が浮上して、ぶわりと全身が粟立つ。

何となく足りなかった心は、何かであっという間に満たされてしまった。
それこそ、今まで誰かしらがくれた賞賛など霞んで消えてしまうほど。

生きていて良かったと思うほど。
頑張ってきて良かったと心の底から思った。

他の誰に言われるより遥かにずっと嬉しいと感じた。

二年半ぶりの再会だ。
他の誰より一番求めていた人からの言葉だったのだと、締め付ける胸に改めてオレは実感した。

全ての者の中で一番、強い者であるナルト。
そんなお前が「天才」と呼んでくれる。

誇りに思うよ……。

お前のおかげだよ。

そう言ったとしてもナルトにはきっと伝わらないのだろうな。
だが、いつかはきっと。




「おーい、ネジってば! 何してんだってばよ!」

木ノ葉に向かうため背を向けていたナルトが振り返り、ぼうとして動けなくなっていたオレに大声で呼びかけた。

「ああ、今行く……!」



ナルトのおかげで今のオレが在るんだ、そう思ったら上忍という肩書きも尚のこと誇らしいと思えた。




THE END








「断る!」のあとの妄想です

せっかくの再会だったけど風影の奪還という超重大任務かつ、我愛羅1回死んじゃうしで再会を喜ぶ暇も無かっただろうから任務後にネジにとってこんな嬉しいことあってもいいな、と。
ネジは風影奪還任務以降、ナルトとなかなか会えない日々が続いてそうだし。





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