髪、匂わせ


この頃、ネジは頻繁にうずまき邸に出入りしていた。


ある日のこと。

この日も例に漏れずナルトとセックスした後、ネジはシャワーを借りた。

そして帰り際にはナルトと抱き合う。

昔はあんなにどチビだったのに、と──
今ではすっかり自身のちょうど目線の位置にある彼の肩に頭を擦り付けて、ネジはナルトのかんばせを上目で見遣る。

満ち足りた気持ちと共に、ネジの頬がゆるむ。
しばらくの間、ネジはナルトの肩口に寄り添うようにもたれ掛かっていた。
口にこそ出さないものの、その態度は、離れ難い、今この時が名残惜しいのだ。

空はとっくに深く燃えるような朱色に染まり、ネジの焦燥感を駆りたてる。


「今、何時だ……?」

「ん、と…五時ちょい過ぎ」

「そうか……」

「ネジ、そろそろ……」

「…っ、ああ……。分かってるよ」


つるんとした白い額がナルトの肩口からそっと離れた。
ナルトはやはりそれに少し寂しさも感じはしたが、妻がそろそろ帰宅するので気にしないことにする。

押し付けられていた頭部の重みが、無くなった。

ネジの長い横髪、その細い一本、一本が静電気でナルトの襟やら袖に弱い力でしがみついている。




◇◇◇


「あら? ネジ兄さん、今日も来てたの」

そうしてから今度こそ本当に帰ろうとしたところに、ネジは帰宅したヒナタと鉢合わせた。
軽く世間話したあと玄関に向かうネジをヒナタが呼び止めた。

彼女はネジの肩に手を伸ばす。


金糸が一本、ネジの肩にくっついていたのをヒナタの嫋やかな指先が摘んでいる。


「……わ、短い金髪だ」

「あ、ああ。すまない」

「ううん、いいの。ナルト君の髪かな〜」

「そうかもしれませんね。…アイツと今日会っていましたから……」

「意外と髪の毛ってよく床とかに落ちていたりするものだよ。あ、そうそう。ネジ兄さん最近よくうちに来るから床掃除するときネジ兄さんみたいな長さの髪もよく見つかるんだよ」


そんな他愛もない話をしてから、ヒナタはネジを玄関先まで見送った。




ネジの長い髪からは自分たちが普段使っているシャンプーの香りがする。
よく自宅で出会すたびに、ネジの髪から何故だか自分たちが使うシャンプーの香りがする。
それも、お風呂上がりの湿気を帯びた濃厚な香り。

しかし、ヒナタはそのことには言及せず、ネジは肩に着いていた髪を取ってくれたことに礼を言うと帰って行った。



THE END







いや、ね! もうほんと〜! もう〜あああ……🙃

これ、結構前にぼちぼち書いてて、本当はまあまあ紆余曲折ありつつ3人まとめてハピエンになる話だったんですよ。
わりと細かく設定というか話の流れ決めてて書いてはいたけど時間が経って読んでみるとご都合主義だな?って思ってしまってなんかもうこのまま消化不良な感じでもいいかなと思った……。

設定とか、箇条書きみたいな流れだけでもこの話のハピエンをチラ読みしてみたいと思う方は読んでみてください。
気が向かない可能性の方が高いけど、万が一気が向いたらちゃんとハピエンverとして書くかもです……🫠


▼【仮】HAPPY END ver


・このごろよくネジが自宅にいること。
・この前、ナルトの寝室を掃除した際に、ベッドに自分のものでも、もちろんナルトの髪色でも無い長い髪が落ちているのを見つけたこと。
・このごろ、ネジの髪からうちで使っているシャンプーの香りがすること。
・このごろ、自分とセックスしても以前に比べて早々に満足している(それは誰かで満足しているからなのでは?)
・このごろ、ネジが雰囲気が違うこと。
ネジは自分(ヒナタ)に対してなぜか(隠してるつもりだろうけど)気まずそうにするそぶりと、それ以上にいつもの堅さがなくふわふわとした喜びが滲み出ている。女の勘。


⬆️ 以上のことをヒナタはナルトに問い詰める。
ナルトは観念してネジとの関係を白状したうえで、この家で一緒にネジとも家族になりたいとヒナタに相談を持ち掛ける。

※ヒナタが帰宅する前、ナルトと抱き合っていたときネジが離れたくないと何度も言うこと、ネジに対してナルトは何もしてやれてないと自責の念を感じていたことから、ナルトはネジとも結婚しようと決意していた。

しかし、木ノ葉は同性婚はまだ制度として無い。
7代目火影であるナルトは、里の同性婚を望む人達のために以前からその事についても課題だと考えていた。
そして自分とネジのためにも、その制度を実現しようとしていた。

ネジとも一緒になりたいと、ナルトはネジ本人に告げるが、ネジは嬉しいがそれを拒む。
それは、すなわちヒナタにこの関係がバレて傷つけることになるから。
それでもナルトは引かず、ヒナタにはオレから説得するからと言うが、ネジは尚も拒む。
ネジはナルトに念を押して帰る前、ナルトの部屋から出る際『絶対にヒナタには言うなよ』と言うが、結局ヒナタはそもそもこの関係に勘づいていたために、ナルトはヒナタに詰められ白状することになる。


ナルトとヒナタの話し合いはいろいろあったが、ナルトとそして自分を庇って一度は死んでくれたネジの幸せを考えてナルトの願いをヒナタが受け入れることになった。



「ナルト君……、私は今までずっとネジ兄さんから大切なものを奪ってきてしまった…。ネジ兄さんはそんな事はない、貴女のせいではないと否定するかもしれないけど、私は私のことを未だきちんと許せてはいないの」

「でもね、ナルト君。私は、ネジ兄さんを幸せにする “方法” なら知ってるよ」

「ナルト君はもちろん知ってると思うけど、私はナルト君のためなら死んでもいいと思えるぐらい大好き。ネジ兄さんもそんな私と同じことをナルト君にした……」

「……ネジ兄さん、ナルト君のことが大好きだったんじゃないかな。とっても…。それこそ、ナルト君の命と一つになりたいと思うぐらい深く、深く……」

「愛していたんじゃないかな……」

※それまでに、夫婦の話し合いでヒナタのナルトに対する独占欲もキチンとある程度書く。
ヒナタは控えめに見えて、我が強い面も有ると思うからその辺も踏まえて、控えめな態度だけど独占欲は強め。片想いしてきた期間も長いから余計にね。

その日の夜、話し合いを終えたナルトはすぐさま自宅に帰ったネジの元へ急ぐ。
訪問者を迎えるべく玄関に出てきたネジを抱きしめてナルトは、事のあらましを伝えたあと、ネジに再びプロポーズする。
ネジは、葛藤したあと、ナルトとヒナタの気持ちを汲んだうえで自分の幸せになっていいんだと、ナルトのプロポーズを受け入れた。

「……死に際に、オレの命はお前と一つだったようだ、と一度言ったが、“家族” という目に見える形でオレとお前が一つなのだと、受け入れられてもらえたような、そんな気がするよ」

「オレも家族にしてくれてありがとう……。ナルト……」






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