それもまた運命


嘗ては “運命” などという言葉をオレは忌み嫌っていて、それでいて心の拠り所にもしていた。

抗えないものは抗えないのだと決めつけて諦めることで、心に未だ燻る甘い幻想を押さえつけては、自らの心の安定を図っていたというのに。

変えられない運命に必死で抗おうとするズタボロのナルトをみて、ほんの少しだけ心が揺れ動いたオレは一つ疑問を投げかけた。

『どうしてそこまで自分の運命に逆らおうとする!?』

聞いてどうしようと思ったのか。
聞いて答え次第で考えを改めようとでも思ったのか。
ナルトの答え次第で、本当は心の内にあった思いを、肯定していいのだと背中でも押して欲しかったのか。
あるいはただの興味本位か……?

試合のさなかでナルトを知っていくたび、オレは心の何処かで密かにナルトの本当の強さに感銘を受けていたはずだ。

『落ちこぼれだと、言われたからだ…!』

甘ったれた幻想は、本当はオレ次第で現実に手繰り寄せられるものなんだと気づいていた。

天才などと言われるが実は分家落ちの身分であり、それなのに宗家の秘伝の技を必死で習得したのは他でもないオレだ。
宗家の甘ちゃんを、殺しかけたのも他でもないこのオレだ。

『ホントは お前だって運命に逆らおうと必死だったんだろ…』

ナルトにも図星を突かれた。

それでも頑なであるオレの心は、試合に負けてからようやくそれを認めることができたのだった。


オレは、いつか遅かれ早かれ訪れるであろう自分の死はもっと醜いものだと思っていた。
鳥籠の中で、鳥は一度も飛ぶこともなく日の目を浴びる事も叶わず死ぬのだろうと。

しかしオレはナルトに自由にしてもらった。

オレはナルトから与えられた自由を未だ分からないなりに愛して謳歌して、そうすると世界の色が変わって見えた。

雨上がりの空に大きな虹が掛かったかのように。

灰色だった世界は、彩り溢れていた。
高い空はどこまでも青く澄みきっていて、太陽が燦々とこの世を照らし、鳥は悠々と気持ち良さそうに飛んでいて……。


嘗ては忌み嫌っていた“運命”

雨上がりの空には太陽が顔をのぞかせて虹が掛かる自然現象。
それもまた、運命かな。

行き着く先は同じだとしても

こんな運命ならば心惹かれるままに生きてみよう。



THE END





ネジの名前は虹という説があるようなのは知っていましたがネジ=鳥という話は書いたことあっても虹を絡めて書いたことってなかったなーと。

運命は悪い意味の言葉ってワケでもないからね🤔
人と人との巡り合わせ。
ナルトと同じ年に偶然に中忍試験に参加したのも、クジ引きでナルトと本戦試合の相手になったのも、それも運命でもいいじゃないと思って書いたやつです〜!
結局ネジは、父と同じ死を辿ってるけど、中忍試験でネジは既にそんな悟りをひらいているからね……。

ネジ、現実主義者のくせにかつては運命論を盲信してみたり本当はそんなに現実主義者ではないのかも?

ネジは自分の中での哲学的な思想というか、自己完結型で、そういう思想の中で生きていそう……。






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