大切なんだと気づいた日


サスケ奪還任務は失敗に終わった。
ネジは瀕死の重症を負って木ノ葉病院に運ばれてきたが、シズネによる高度な医療技術の甲斐もあって一命を取り留めた。
今は絶対安静であり、ほとんどの時間をベッドの上で過ごしている。
当然ながら修行なども禁止なので、普段娯楽などにも興味が無いネジは、面会の時以外は暇を持て余していた。
趣味の瞑想をしてみるのだが、やはりこう何日も長時間していたら流石に飽きてくる。

そう。暇なので、ネジはここ何日か物思いに耽ることも増えた。
ネジはここ何日か、ずっと振り返っていることがある。
この瀕死の重症を負った先の戦いでの事だった。

────なぜ、辛くも自分は勝つことが出来たのか?

初めは今後の戦闘に備えての復習も兼ねて思い出していたのだが、ネジはここ数日、胸より上に開けられた風穴とはまた違う、別の胸の違和感を感じていた。
その正体が掴めそうな気がした。



『ホントはお前だって運命に逆らおうと必死だったんだろ…』

『お前が無理だっつーんならもう何もしなくていい…!!!』

『オレが火影になってから 日向を変えてやるよォ!!』

己に齎された救いの言葉の数々を思い出す。
きゅう、と胸が締め付けられる感覚を覚えた。

(ああ…、変だな……)

自身の胸に、柔く握り締めた拳をそっと宛てる。
その拳はまるで、きゅう…と締め付けられる己の心臓を無意識に表しているようにも見える。
ネジは眼を伏せて胸に宛てた拳に視線を落とす。
何故だか癖になりそうなその感覚。
今まで感じたことの無い類いのものであったが、不思議と悪くないと思えた。
その感覚をさらに求めて、ネジは再び頭の中でナルトに思いを巡らせる。

『運命がどーとか…変われないとか そんなつまんねーこと めそめそ言ってんじゃねーよ!』

胸の鼓動が、ナルトの言葉を思い出す度にどんどん脈を打つ速さが増しているのが分かった。


あの時。
窮地に陥ったあの時に思い出した言葉。
その一言が、どれだけの活力を齎してくれたことか。

『お前はオレと違って…落ちこぼれなんかじゃねーんだから』

その言葉は、今までの胸の締め付けよりも一番胸が痛くて心地好くて、切なさというのをネジに教えた。
心臓が震えたような気すらして、ネジは言葉にならない何かを吐き出すように熱い溜め息を洩らした。
ただ、確かなのは胸は痛いぐらい締め付けられているというのに、身体と心は燃えるように熱く、血潮が滾り、何かが満たされる感覚もあり、不思議な力が湧いてきて怖いものなどないと思えてくるのだ。


(ナルト……!!)

心の中で名前を呟けば、切なく疼く。
締め付けられる胸に、押し宛てるようにして柔く握り締めた拳に、先程よりほんの少し力が篭った。
ネジはその気持ちを抑えようと、はたまた、その気持ちを大事に奥底に閉まっておこうと僅かに潤んだ眼をそっと閉じた。


その正体が掴めそうな気がした。
否、ネジは本当は既に気づいていたのかもしれない。
ただ気づかぬふりをしていただけかもしれない。


しかし、あの時……。
意識が遠のく前にナルトに思いを馳せて見上げた日差しは、到底言葉では言い表せられないほどに素晴らしいものだった。
ナルトが望む自分に成れたことが嬉しかった。
認めて貰えたのだろうか、その光はまるで、『お前もやればできるじゃねーか』などと笑って、風穴と傷だらけの身体を優しく包んでくれたようで、とても暖かく、気持ちが良かった。

『運命なんて 誰かが決めるもんじゃない』

己が断言したその言葉を、瀕死の敵は否定してきた。
だが、その直後に天から光が、己だけに注いだのだ。
ほら見ろ、ナルトはやはり正しいではないか。
そう思った。
ああ……、運命を自分の手で変えることができたのだと、確信を持って実感することができた。


身を焦がすほどの思いを、認めてしまったらもう後には戻れないような気がした。


ナルトの存在が眩し過ぎてネジの目は眩んでしまいそうになる。
きっとネジが行き着く先は、明るい未来なんだろう。



彼を闇の中から救い出してくれた大切な人がいるかぎり。




THE END





行き着く先はメリーバッドエンド😭
そんなナル←ネジが好きなんだからしょうがない。





1/1ページ
    like it…!