共依存の前兆
床に散らかるトランプカードを、ネジは一枚だけ拾い上げた。
先ほどまであんなに賑やかだったこの狭い部屋には今は、この家の主と自分と、二人しかいない。
皆が帰ると言った時の、ナルトの顔が頭から離れなかった。
自分が残ることで、果たしてナルトが嬉しいのかは分からないが、自宅で待っている肉親がいない事だけはナルトと自身は同じなのだから。
一度たりとも勝てなかった。
ネジは、手に持ったトランプカードを見つめた。
なぜこの眼を持ってしても勝てないのだろうか。
「ナルト。 トランプしないか?」
「えー……、またやんのかよ……お前ってば懲りねえやつだな」
「それを教えてくれたのはお前だ」
「ん? なんの話だってばよ?」
「……いや、こっちの話だ」
結局、何度挑戦しても勝てなかった。
なぜこの眼を持ってしても勝てないのだろうか。
正直そんなことはどうだってよかった。
悔しくないと言えば嘘になるのだが、白眼にも不可能があるということを教えてもらえる。
「……フッ、やはりお前は良い眼をしてる」
「……? 意味わかんねえってばよ」
「オレの負けということだ。 カード片付けるぞ」
ナルトを前にすると思わず頬が緩んでしまうからいけない。
────ネジは、緩んだ頬をなんとかして引き締めようと努める。
だが、ナルトはじっと目の前のネジの顔を見ていた。
「あのよ、もう一回その顔やってくんねえか……」
ナルトにとっては珍しい、ネジの柔らかい微笑みだった。
なんとなく寂しかったからだろうか、その微笑みはナルトの心にじわりと沁みるような感覚をもたらした。
小さいテーブルを挟んで反対側に二人は座っていた。
ナルトはテーブル越しに上半身を乗り出してネジに近づく。
「……ナ、ナルトッ……!」
ナルトの突然の行動に、もはやネジは微笑むような余裕はなかった。
赤く頬を染めて眼を伏せる。
それでもナルトから距離を取らなかったのは、ネジ自身もこの状況にほんの少しだけ期待していたからなのかもしれない。
どちらからともなく本能的に互いの唇に触れてしまった。
ただ触れるだけの口付け。
だが、ナルトは心のどこかにぽっかりと空いた穴を埋めてくれるかのようだと感じていた。
そしてネジは、その穴を埋めているのは自分なのだと優越感すら感じてしまった。
ナルトが突然変な行動を起こすから、ネジはそれをまるで期待して受け入れたかのように振る舞ったから、雰囲気に飲まれてしまっただけなのに。
我に返って唇を離したのはすぐだったが、長い時間、口付けあっていたような気分で、二人はお互いの顔を暫く放心したように見ていた。
THE END
リハビリ的な文です。
裏の方で皆が帰った後のセックスという話は既に書いてたんですけど、今回のこの話はまだなんの関係も持ってない段階ということで…
流れや雰囲気に飲まれて、寂しさとかからの錯覚でもナルトはネジを少し意識してしまって、ネジはもちろん願ったり叶ったりなので、そのままセフレへとズルズルと……そんな始まりも良いです。
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