溶け込む


騒がしい街には、一際目立った。

行き交う人々が目をやる視線の先は日向の若者二人の歩く姿。
仲睦まじく歩く、二人の姿は微笑ましくもあり、纏う雰囲気からか絵に描いたようだとも思えるものだ。
当の二人は、そんな視線に慣れているのか、はたまた天然、変な奴と称されるようなこの二人には全く気付かないだけなのか。
二人だけの不思議な世界を作り込むかのようだ。

「ヒナタ様、最近の修行の伸びは素晴らしいです。このままこの調子で続けていればきっと」

「はい! ネジ兄さんに見てもらえるお陰です。 ありがとうございます。 ナルト君に、追いつけるように……私も頑張らなくちゃ」

「ふっ、そうですね。……ナルトは、先へ先へといつのまにかオレたちを追い越してしまって、強くなる。あいつの可能性は無限大だ」

「昔からナルト君を見てたから、だから、私にも可能性があるんだって思えて強くなれる気がするんです」

「オレも、同じです。 ナルトを見ているとまだ先があると思えてくる。負けるわけにはいかないと」





「ふぇ、……、ふぇっぁくしょいッ!!!」

ナルトはズビッと鼻をすすった。
盛大なくしゃみに、すれ違った人がちらりと目をやる。

「あー、風邪でもひいたんかなあ……。 それとももしかして誰かウワサでもしてたりしてー!」

少し先に、鈍感なナルトにも分かる辺りとは違った空気を纏う二人を見つけた。
それが、どう見たって知り合いなのだから、ナルトは声をかけようと駆け出した。

「よォ!! ヒナタ! ネジ!」


この声に弱いのだ。
二人は声の方へ咄嗟に振り向いた。
一体何のための白眼なのか。
二人は恐らくこういう時には全く力を発揮できない白眼使いなのだ。
日向の宗家当主の嫡女と、日向きっての天才ともあろう者たちにも弱い者がある。

ネジの目がわずかに見開かれた。
純粋な驚きと、そしてどこか嬉しそうな様子なのはネジ本人ですら気付いているかどうか分からない。
本来ならそんなネジの様子に、ヒナタは気付けたかもしれないが、今は自分の頭がオーバーヒートを起こしていてそれどころではない。

「ナルト……」

一拍おき、フリーズしかけた頭を鎮めてネジが想い人の名を零す。


「ナ、……な……ナルト君………」

そして一方、ヒナタの方はもうすでに顔を真っ赤にしてしまい、先ほどまでの穏やかながらハキハキとした感じが微塵も見受けられない。


なんだか、尋常ではない面持ちの二人にナルトは困惑を隠せない。
否、ヒナタに関して言えば昔からこのようなことが度々あり、その理由は未だに分からないがそういう人なのだと思っていたのだが。
だがしかし、ネジはなんなのだ。
なぜそんなにも驚かれているのだ、とナルトは白眼使いのくせに、とやや呆れる。

「今、ちょうどお前の話をしていたんだ」

ネジの言葉に、ナルトは思考を戻された。

「オレの話? あー、だからさっき……どうりで」

ナルトはふむふむと納得したように腕を組み、手を顎についてうんうん、と頷いていた。
ナルトの独り言に対し、ネジは頭に疑問符を浮かべる。
ナルトは、そうして一連の動作を終えたかと思うと、片眉を釣り上げてみせた。

「なあ、オレの話ってなんだってばよ?」

「……ふっ、さあな。 ヒナタ様にでも聞いてみるといいだろう」

「えっ、なんでだってばよ! 教えてくれってばよ!!」

ナルトは、ヒナタに向き直ったが、顔を真っ赤にしたまま俯き人差し指をつんつんと、彼女の癖だろうか。
明らかに何かを聞き出せる様子ではない事は明白だ。

「おい!! ネジ!! オレの話ってなんだってばよ! 気になるだろーが!!」


ネジは颯爽と、それを追いかけてナルトはドタバタと、そんな二人を後ろからゆっくりと追いかけるヒナタ。

先ほどまでの賑やかな街から浮いていた二人は、今はこの賑やかな街に溶け込んだ存在だ。




THE END





ツイの壁垢で今朝呟いたネタで書いてみました。
ネジもヒナタも二人独特の世界を無意識に作っちゃって、どこか浮いた感じだけど、二人はナルトが加わることによってなんか変われちゃう
という感じなのが出せてればなあと思います。






1/1ページ
    like it…!