隣で穏やかな声を耳にしながらナルトは小さく溜息をついた。
ネジが不思議そうにナルトへと向き直る。
普段はあまり見られないキョトンとした顔だ。

「お前の声っていいよなあ……って思ってよ」

低くて男らしいから何言っても様になるしカッコいいじゃん、と思うのだがナルトは具体的にどこが良いのかまでは照れ臭いので本人に告げない。

「オレってば、この歳になっても声あんまし低くなんねえからさ……いいなあって思っただけだってばよ」

ナルトは少しだけ拗ねたように唇を尖らせてふいっと顔をそらした。
しかし拗ねたのもあるが、どちらかというと、いいなと告げたのが照れ臭いだけだ。

「オレは……お前の声いいと思うぞ」

ネジの低い声が、俯き加減にぼそっと発せられる。

ナルトの声はナルトだけのもの。
ナルトにしか出せない声。

それだけで価値のある声なのだからと、思うのだがネジもネジで本人に告げるのは照れ臭い。

「お前の声に救われる奴はいっぱいいるだろう」

言葉と声は別物だが、言葉が響けば声そのものも大切な物になるのだと、ネジは思う。
ナルトはネジの方へ向き直った。ほんの少し染めた頬をぽりぽりと掻く。
ネジの言葉に機嫌を直したナルトは嬉しそうにはにかんだ笑顔になる。

「まあ、夜の声はオレの方がかっこいいからな!」

ネジもむうと頬を赤くして、そして顰めっ面になる。
なんともずれたナルトの発言だったが、照れ隠しなのだと思うとそれもネジにとっては愛おしい。
お前の声はいつでもかっこいい、と言えばナルトが調子に乗るのは分かっていたからネジはその言葉は言わないでおいた。



THE END



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