本当のこと


眩しいものに穢れた感情を重ねるのに後ろめたさを感じてきたこの頃。
ただ眩しいものを眩しいと感じてそれに浸っていたあの頃の方が幾分マシであった。
ただ好きだという気持ちに浸って心の中で奴の陽の光を浴び続けているだけで満たされていたのだから。

心の中で構築されていた自分だけの太陽と、実際に目の前にする太陽は随分と違っていた。
自分の気持ちは決して穢れたものなんかじゃないと思いたいのに、奴を目の前にしてそれを思うのが困難になる。
純粋な気持ちのはずだったのにやはりこれはいけないと、思った。

奴を想像して、晴空の下、高揚した心をらしくなくも躍らせていたのは決して嘘などではない。
いけない事だとも思えない、だが後ろめたいこと。

ゆくゆくは、友情、恐らくはこちらの一方的なライバル心へと戻るだろう。
いや、戻らなければいけないと願う。

恋に堕ちれば堕ちるほど近くなるはずだった心と心には大きな距離がうまれてしまったような気がして、その距離を埋めたくなった。

恋は一過性のもの。
好きだという気持ちは変わらぬまま、変化をするだけなんだ。
ただお前を思うだけで十分に心は晴れるから、見返りなんていらなかった。
それなのに、いつしかその青目で再び自分だけを射抜いてほしい、有言実行を叶える唇で自分を塞いで欲しくもなった。


そういう意味で好きだと思ったのを“錯覚”にしてしまった。
時が経つにつれ、心が言うことを聞かずついに錯覚を“本当”にしてしまった。
現実味を帯びてきてしまった恋に開き直ろう。
不純な気持ちなんかじゃないんだよ……。



THE END





前の『恋』に似た系統の話です。というか恋に恋したのを経て、何年かして我に返って、悟りを開くネジみたいな……?
相変わらずネジの「~だよ」が好き過ぎて使いたくなる病です(^.^)





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