息子の歩み


昔はしゃがまなければ頭を撫でられないほど小さかった。
身長も自分とほぼ変わらぬぐらいまでに成長していた愛息子を目の前に、親として悲しむべきかその意思を尊重すべきか少し迷うのだ。

「まさか、こんなに早く再び会えることになろうとは……」

ネジは最初からずっと柔らかな笑みを浮かべていた。
昔も笑みを浮かべることが多かった子だが、その頃の子供ながら逞しい笑みや、時には無邪気な笑顔とは……変わったなあ。
まだたった十八のはずだろう? 子供の成長は早い……。

「父上、私は後悔はしていませんよ。それよりも私が守りたいと思えた、ある面白い男の話を聞いてほしいんです」

私はそんなに顔に出やすいのだろうか。
昔から情けない姿ばかり見せていたが、それは今も相変わらず変わらぬようだ。

ネジは最も日向の才に愛され授かったその真珠の玉で、親の私をも見抜くのだ。

「存分に話すと良いよ。お前がここにこんなに早く来たわけを納得させてくれ」

「……はい!」

久しぶりにネジの無邪気な笑顔を見た気がした。そしてこの返事の仕方もやはり変わらない。この返事を聞くたびこの子は逞しいと思えたものだ。
幼かった声と今の声を重ねてじわりと目の奥が熱くなった。
まだ泣くのには早い。


「その男の名はうずまきナルトです」

ネジの凛とした声に引き戻される。
聞き覚えのあるような名前だ。偉い人の名前だったか……?

「その男はとてもバカでお調子者で、そして真っ直ぐな奴です」

やっぱり知らないかも知れない。お堅い人間しか周りにいなかったからかな、そんな人物は頭に浮かばなかった。

「私は運命に対してもう全てを諦めた気になっていました。なぜだか分かりますか? 父上が居ない理由を知らぬままずっと憎むべきではない人を憎んできたからです」

はっとして、ネジの顔を見つめる。
ネジは変わらぬ表情で微笑を浮かべて次の言葉を探そうとしている。
もしかしてヒアシ様……いや兄さんはネジに私の言葉を話さなかったのか?

「今は知っての通り憎んでないですよ。ヒアシ様は私に頭を下げて真実を話してくれました」

またも見抜かれる。
あの兄が頭を下げてネジに話してくれたことに遅過ぎる罪悪感が湧く。
ネジには『仲間や家族や里を守るために自らの意思で死を選んだ』のだと伝えてほしいと確かに兄に言ったが、やはり兄に頭を下げさせてまで言わせるぐらいならば、せめてネジには自分で話すべきだったのだろうか。過ぎた事だが……。

「それは中忍試験に初めて参加したときの本戦が終わった後のことです。本戦の相手はうずまきナルトでした」

ネジは一呼吸して、再び口を開いた。

「ナルトに、オレは負けました。あいつは恐らく一族の事なんて何もわかってなかったと思います。だがオレの事だけは確かに分かってくれたんです。オレを叱咤してくれたんです。『運命がどーとか……変われねーとか、そんなつまんねーことメソメソ言ってんじゃねえーよ』と」

親として普通なら知っているべき子供の交友関係だとか、そんなものを知らずに死んだ自分にとってネジが話した出来事はネジが歩んできた人生を辿らせてくれるようなものだった。
褒めてやるのも叱ってくれる人もいないのではないかと思っていた。
だがそのうずまきナルトという男は息子をそんな風に叱ってくれた。
親としてその男に会えたら礼を言いたいぐらいだ……!心が和らいでそんなことを思う余裕がうまれる。

「ヒアシ様は、そのあとすぐに負けたオレがいた医務室に来てくださり、今なら言えると私に真実を話してくれたんです。それから私は変わりました」

ネジは我が息子ながら、とても綺麗な今ままで見た中で一番の笑みを浮かべた。

「あの日、ナルトに負かされ地面に仰向けで倒れたときの視界に映る空が今までで一番綺麗でした。鳥が、気持ち良さそうに空を悠々と飛んでたんです。これをずっと父上に言いたかったんです……」

涙で目が霞むから、言葉が出ないから、私はただ無言で久しぶりにネジの頭を撫でてやった。今まで良くやった。

親子でこれからゆっくり話そうか、ネジ。




THE END





今までヒザシさん出したことなかったなあと。少し前のアニオリで父上公認の仲になったじゃないですか!ナルネジは!
ヒザシさんはネジからナルトについてこれから延々と聴かされてほしいです(?)!!

あとネジがだんだん私からオレに変わってまた私に戻るのは敢えてです。

ガイ班についてもネジに語らせたいですがそれはまた今度同じような形で書きたいです~。

それとテンテンおたおめ!
ガイ班メインで今日中に何か書きたいです……!





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