バレンタイン。

テンテンやヒナタ様が毎年この時期になると浮かれているなとネジはなんとも無しにチョコレートが前面に売り出されている街中を歩く。

バレンタインが女から男にチョコを渡す行事であるというのは古い価値観だとテンテンに言われた気がするな、と思い出してネジは足を止めた。
足を止めた先にはまたも、チョコレートを売り出す店。
いや、古い価値観だろうがなんだろうがあげる相手などいないはずだ。
自分には関係のない行事だと思い直して再びネジは歩みを進めた。


そうして二月の十四日は過ぎていった。
バレンタインは終わった。
今日はもう平日なのだ。

ネジの手にはシンプルに包装されたチョコレート。

逆チョコやら友チョコやら最近は色んな種類の渡し方があるというのもテンテンからの情報だ。
正直、テンテンがいなければネジは世間の流行に今よりもさらに疎い人間だったであろう。
ネジはこっそりとテンテンに感謝をした。

ネジはあげる相手などいないと思っていたのだが、あれから少し考えていたら、あげたいと思う相手は浮かんだ。
友チョコならば、日頃の感謝だとか口実つけて渡せる。
ネジはバレンタインが終わった翌朝、特売で売れ残りのチョコを売り出している数々の店から、いくつか店を周り今手にしているチョコレートを購入した。

店員がリボンの色を選べると言うので、
あげる相手を思い浮かべてオレンジにしてみた。

ネジは買ったばかりのチョコレートを手に持ったまま見つめた。

(オレがナルトにチョコを渡す……？ 男のオレがナルトに、チョコを……？)

考えていたら馬鹿らしくなった。
何よりバレンタインは終わったのだから男も女も関係ないこと。
そう思ってネジはナルトに一日遅れのバレンタインチョコを渡した。

自然と渡したいと思えたのは好きだからなのだと素直に思えたのは渡せた後のこと。




THE END