空を忘れられない小鳥のために


雲間から太陽の光が薄っすらと落ちてきて木々の下に影をつくった。

チチチッと可愛らしい鳴き声が聞こえてナルトはその声の方向へと目を向けた。
太陽の光に照らされている木々のうちの一本の細い枝に、小鳥を見つけた。
その白い小鳥は空に向かって先程と同じように可愛らしい鳴き声を響かせる。

ナルトはそんな小鳥の様子を見て頬を緩ませた。
その木々へとそっと近付いてみた。

ナルトの位置からは高さがあり、小鳥はもちろんナルトの存在に気づいていない。
ナルトはよっと力むと、少し昔にカカシから教わったチャクラでの木登りを実践する。
そして、すぐにその小鳥の隣に来ると、ナルトは太めの枝に腰を掛けた。
小鳥は飛んで逃げる事はなく、隣のナルトを受け入れた様子である。

ナルトは澄んだ青い目を小鳥に向けて “なあ” と声を掛けた。

「お前ってば、すんげえあいつに似てるんだよなあ~。そいつ、ネジっていうんだけどよ、オレより一つ年上なんだ」

小鳥には人間の言葉など分かるはずもなく、ただチチチッと鳴いた。

ナルトは構わず話を続けた。

「あいつさ、前に自分の事を “籠の中の鳥” だって言ってたんだ。けどよお前を今見つけてからすんげえあいつに似てたから……」

“あっ”

静かに小鳥に語りかけるナルトの声が急に止まった。

ナルトの視線の先、木の下にちょうど話の中心であったネジを見つけたからだ。
ナルトは下にいるネジと隣にいる小鳥をチラチラと交互に見た後、大声でネジを呼ぶ事にした。

「おーいッ!! ネジィー!!」

下に居たネジは、突然上から己の名前を大声で呼ばれてびっくりした表情でナルトの方を見た。

「……ナルト……」

「ネジもちょっとこっち来いってばよー! 紹介したい奴がいんだってば!」

ネジは目を丸くする。
木の上から大声で呼ばれたと思えば何を言うかと思った。

だが木々のある方へと歩き出しナルトと同じようにチャクラで木を登るとナルトの隣に来た。

「……紹介したい奴とは誰のことだ?」

ナルトは隣の小鳥を丁寧に優しく包むように抱くと、ネジの目の前に小鳥を抱く手をずいっと差し出した。

「ほらっ!コイツだってばよ! 」

「……小鳥……? それがオレに紹介したい奴か?」

「ああ!そうだってばよ! オレってばコイツをさっきたまたまここで見つけたんだ!」

「……そうか」

ネジはじっとナルトの手に収まる小鳥を眺めた。

「コイツってば、ずっと空を眺めてチチチッって鳴いてたんだ! なんかお前みたいだよなあ」


確かにネジとその小鳥はどこか似ていた。
ネジも同じように、ただ空を見上げていることが多かった。
いつか大空を自由に飛んでみたいと、ずっと心の片隅でそう思って生きてきたネジの理想をその小鳥は、

今まさに目の前で起こして見せた。

バサバサっと力強い音を立てると、ナルトの手のひらから翼を広げて空へ飛んで行ってしまった。

ナルトは急に手元から離れた存在に “あっ!” っと声を上げた。

そんなナルトをよそにネジは悠々と空を飛ぶ小鳥を眺めた。
太陽の光の眩しさからか、目を細めた。

いつになく、穏やかな顔をして空を見上げるネジを隣でナルトは物珍しそうに眺めた。


「飛んで行ってしまったな」

「ああ……。ネジ、お前もいつかあいつみたいに、空を飛ぶんだろ?」

「当たり前だ」


二人が佇む木々に、爽やかな冷たい風が吹いた。
ザザッと心地よい音で葉を揺らした。



THE END





ついったのお題botさんから
「空を忘れられない小鳥のために」
で書かせていただきました……!

一か月弱前に、これ書きたい!ってふぁぼしてたものの、なかなか書けなくて…
お題にあまり添えてないけど、(“~ために”の部分についてあまり書けてない)
ナルネジに小鳥を絡ませたくて仕方なく勢いで書きました*\(^o^)/*

小鳥=ネジだとして、お題のように、“小鳥のために”とするなら、ナルトがネジのためにすることってなんだろうと思うとナルトはネジのために何か具体的なことはしなさそうなので……

二人が木の上で小鳥挟んで、語らい合ってたら可愛いじゃん!!ぐらいで読んでもらえたら幸いです……(;_;)





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