師としては


最近あの子は前よりも明るくなった。
表情が和らぎ、豊かになった。
師としてはとても嬉しいと思うこの頃だった。
だが、ガイには一つだけ気になることがあった。
ナルトはネジの心を救ってくれたのだから、ネジが彼に感謝していることは凄く分かる。
だが、ガイとていい大人なのだからそれだけではないことを分かってしまった。
ネジは干渉される事を良しとしない。
リーやテンテン、ネジそれぞれにそれなりに接し方は変えてるつもりだ。
ネジは生い立ちのせいもあるかもしれないが人一倍自立心が強いように思うので敢えて干渉することはせず、自分で考えて行動させることが多かった。

だが、お節介だと分かっていてもやはり可愛い教え子だ。

二人の関係について聞くべきか聞かざるべきか迷ったが、結局聞くことにした。


本日もガイ班での修行を行っていた。
とりあえず昼になる頃なのでガイは三人に休憩を呼びかけた。

「もう休憩ですか!? ガイ先生!! 青春は待ってはくれないのですよ!」

「いや、時として足を止めて己を休めることもまた青春なのだよ、リー!!」

「……分かりましたッー!ガイ先生ッ!」


ネジとテンテンはこの毎度毎度お決まりのやり取りに辟易していた。
さすがに慣れたとはいえ、あからさまにうんざりした顔を出さずにはいられないようである。

リーを休憩させることに説得し終えたガイはネジがいる方向へと足を進めた。

「ネジ、ちょっと話があるのだが、いいか?」

「話……? 構わないが。 何だ?」

「ここではなんだから、少し離れたところに行こう」

「……? ああ」

ガイの後ろをゆっくりとネジはついていく。

先ほどの場所からは少し離れた、と言っても姿はお互いの位置から確認できる距離の場所だ。
話し声までは聞こえないので問題ない。


「最近お前が明るくなったなあと思ってオレは嬉しく思っているぞ!」

「……あまり変わらんと思うが?」

「いや、お前は変わったよ。ナルトと戦えて良かったな」

「……なぜそこでナルトの名を出す?」

ネジは眉間にシワを寄せたが、満更でもなさそうだ。

「ネジがナルトのお陰で明るくなった事は分かるぞ。照れるな、照れるな!!」

「……っ照れてなどいないッ! 話とはそれだけか?」

「いや、まだだ。少し聞いておきたいと思ってな。ナルトの事についてなのだが、お前はもう子供じゃないし、自分で正しい道を選べる奴だ。だから深くは追及する気はない。だが、やはり師としては気になるからな。聞いてもいいか?」

ネジは眉をピクッと反応させた。

「……その口ぶりだと、もう気づいてるみたいだな」

「ああ。 伊達に何十年も生きてるわけじゃないぞ。照れる事ない。それも青春なのだ!」

ガイはアハハッと豪快な笑い声を上げ言った。

「ガイ先生は、同性同士という事について何も言及はしないのか?」

対するネジは、窺うような目でガイを見やり静かに問いかけた。

「……まあ、世間的にはあれなんだろうがオレは同性同士については問題視していない。そんなちっぽけな事はどうでもいいのだ。それよりも、あんなに人の事を決めつけ見下す事でしか人との関わりを持てなかったお前が、初めて本気で人を好きになったのだから、喜ばしい事じゃないか」

「そうか……。ガイ先生が察した通り、オレはナルトの事が好きだ。こんなに他人に入れ込むなんて自分でもびっくりだ」

「オレはな、ネジ。お前が好きになった相手がナルトで良かったと思っているぞ。ナルトならネジを良い方向へと導いてくれるだろうし、立派な子だ。そして熱血もあるしな!」


ガイがそう言うと、
ネジは僅かに口元に笑みを浮かべた。
好きな相手を褒めて認めてもらえるのは自分の事のように嬉しいものだ。

「お前もやっと青春を謳歌しているのだ! だから、オレはとやかく言うつもりはないぞ。だがな、お前もナルトもまだ年齢的には子供だ。だから年齢相応の付き合いをしてほしいと思っている。お前は聡い子だからな、言わなくても分かっているとは思うが、やはり相手と気持ちや流れの赴くままに行動してしまいたくなる時もいずれあるだろう。だが、あまりのめり込む事はしないようにな」

「……ふっ……ああ、分かっている」


そしてガイとネジは、再びリーとテンテンの元へと戻った。




THE END





ガイ先生視点でナルネジ書いてみたいなあと前々から思ってたので、セリフ多めですが書いてみました~。

この短編でのナルネジは既に付き合っている前提で、
ガイ先生はひょんな事からそれに気づいてしまったという設定です(笑)





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