恋文


ピピピッと電子音が鳴り響きナルトは、目を覚ました。
毛布を体から退けると、冷たい空気が肌に触れた。
まだベッドから出たくない気持ちを抑えてゆっくりと上半身を起こす。
寝ぼけ眼で、カーテンの隙間から射す朝日を見て次第に覚醒していく頭。
ベッドから足を出して床に触れるとひんやりと冷たい質感に一気に目が覚めた。
大きく両手を上げ、伸びをして洗面所に向かう。
冷たい水で顔を洗い、歯を磨き、そしていつも通りお湯を沸かしに台所へと足を向けた。


お湯が沸くまでの間、
外に出て郵便受けに手を入れた。
活字がびっしりの灰色の新聞に紛れて、真っ白な封筒が入ってあった。

(手紙……? 誰からだってばよ……)

普段ナルトは手紙など貰うことがなかった為当然誰からなのか気になり、封筒を裏返し差出人を確認する。

綺麗な細めの字で、
住所と “日向 ネジ ” と記されていた。

ナルトは目を丸くした。
そして次々頭に疑問符が浮かぶ。

(なんでネジから手紙? なんか重要なことなんかな……)


再び郵便受けに手を入れ、他に何もないことを確認すると部屋の中に戻り無造作に新聞をテーブルに放り投げる。
だが、少しだけ内容が気になる手紙は手に持ったままで台所に向かう。
お湯が沸くのを見張りながら、そっと白い封筒を開けた。
綺麗に折りたたまれた紙を封筒の中からすっと引き出す。

白い紙には流暢な縦文字が書かれてある。

「普通に会って話せばいいじゃねーか……」

読むのが億劫な気持ちもあったが、それよりも内容の方が気になり、ナルトは活字に目を向けた。


拝啓 通り過ぎる風に冷たさと寂しさを感じる今日のこの頃。いかがお過ごしですか。


(いかがも何も最近会ったろ……普通に元気だってばよ……)

ナルトは心の中でノリツッコミをしながらも目は再び活字を追う。


さて、堅苦しい挨拶はこの辺にしてそろそろ本題に入ろうと思います。

それと、敬語というのもなんだからそろそろ普通に話し言葉で書くとする。

なぜオレがお前に手紙などを送るかに至った訳だが、それは言葉では上手く纏められない気持ちを伝える為だ。
いざ書くとなると、どこから書いていけばいいのか分からないが思った通りに書くことにする。

先ず、お前に伝えたい事がある。

お前には感謝しているという事。

オレはあいにく感情を表に出すのが少し苦手のようだから、お前に感謝の念がきちんと伝わっているのかが心配だった。
この際だから手紙に記しておきたい。

きっと、これは何度言っても何度書いても足りない言葉であろう。

オレの心を自由にしてくれて、ありがとう。

そして、もう一つ伝えたい事がある。
今まで感謝の念と好意は別物だと思ってきたんだが、どうやらそうでもないみたいだ。
手紙だから素直に書ける。だから単刀直入に書く。

オレはナルトの事が好きだ。

どういう感情で好きかと聞かれると困るが、こんな感情はオレにとってきっと初めての事だ。
何か事あるごとにお前の事を思い出しては胸が騒めいて困る。
自分自身でも分からなくて、きっと会って直に話すのでは伝わらないだろうからこうして筆をとった次第だ。
せめて自分の気持ちをお前に伝えなければと思ったまでだから、返事はあってもなくても構わない。

お前に任せる。

また次に会える機会を楽しみにしてる。敬具




読み終えたナルトは暫くの間、紙と封筒を手に持ったまま身動きをせず、手紙を読み返す訳でもなくただ文字を見つめていた。

(これってば……ラブレターってやつか……?)

どこか冷静にこれがラブレターなのだと認識するが、頭が上手く働かないせいで見つめた文字は殆んど頭に入ってこない。

その時、やかんの音が鳴り響きお湯が沸騰した事を知らせた。
ナルトは慌てて封筒に手紙を入れ直してそれをテーブルに置いてから、火を止めた。


「……これ食べ終わったら便箋買わなきゃいけねーってばよ…」

カップラーメンにお湯を注ぎながらナルトはぼやく。
返事はあってもなくてもいいと言っていたが、あれだけご丁寧な手紙に素直な思いを書かれて、返事を出さない訳にもいかない。

それに、ナルトにも書かなきゃいけない返事が色々あるのだ。

いつ己を好きになったのか。
なぜ己を好きになったのか。
気になる疑問が次々と浮かぶ。

確かに、会って話すのでは上手く手紙の答えを返せそうにないなと思ったナルトは急いでカップラーメンをたいらげると、文具屋へと走った。




THE END





まともに手紙を書いた事ないので、
手紙の書き方を一応少しは調べました\(^o^)/

拝啓 時候の挨拶 安否を伺う 敬具など……。

もちろんこういう基本的なのは学校で習ってたとは思うけど全然覚えてませんでした!!

追記

よく考えたらナルトの家はアパートですから、郵便受けというより、ドアに挟むタイプのものですかね……?
あんまそこらへん意識せずに書いてました(ー ー;)





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