ハピバ!
両手にいっぱいの荷物を抱えてよろよろと歩くのは、うずまきナルトだ。
本日は彼の誕生日である。
両手いっぱいの荷物は彼へと贈られたプレゼントだ。
ナルトは、
“重いってばよ……。前見えねえってばよ……”
などとブツブツ言ってはいるが、どこか嬉しそうである。
それもそのはず。
昔の孤独だった時のナルトなら、こんなにプレゼントの山を抱えて歩く事などなかったのだから。
抱えきれないほどのプレゼントの山が嬉しくて仕方ないのだ。
そんなナルトの前にガイ班の面々がやって来た。
「ナルトくん!! お誕生日おめでとうございます!!」
「ナルト! お誕生日おめでとー!」
「……ナルト、誕生日おめでとう」
プレゼントの山に隠れて、前が見えていないナルトだったが声で誰だか分かったようである。
「おう! ゲジマユにテンテンにネジ! サンキューだってばよ!」
「凄い数のプレゼントですね……! さすがナルトくんです」
「ああー、まあな! こんなに貰うの初めてだってばよ!」
そんな会話をする二人をよそに、テンテンとネジはなにやら二人で何かを話し合っていた。
「……ほら、言うんでしょ? 早く言っちゃいなさいよ! ナルト今日はモテモテだから早く誘わないと他のとこに行っちゃうわよ!」
「う……っ……言うから……今言うから……少し心の準備をさせてくれ」
「そんなのいいから! 早く言わないと私から言うわよ!焦れったいなあもう!」
二人は、やっとそんなテンテンとネジに目を向けた。
もっともナルトは山ほどの荷物のおかげで見れてはいないのだが。
「なになに、何の話してんだってばよ!?」
リーは事前に話を知っていたので、“ああそういえば” という顔をした。
「ほら、ネジ、言うんでしょう!? ナルトくんに言いたい事あるんでしょう!!!」
リーも後押しをし始める。
一人だけ話についていけないナルトは頭に疑問符を浮かべる。
「ネジがオレに話ィ? なんだってばよ」
ネジは、もう言わなきゃダメだと意を決して口を開いた。
「……あ、いや、実は前々からお前の誕生日をガイ班でも祝ってやりたいと思っていて計画していたんだ。お前がよければ祝わせてほしい」
「うっそー!? マジ!? パーティーとかするのか!? もちろんいいってばよ!」
ナルトは目をキラキラと輝かせた。
「パーティーかどうかは分からんが、予約している店がある。費用はガイ班で持つから心配するな」
「うっわー! オレってばスッゲェ嬉しいってば……! 食べ物何があるかなー」
「ふっ……。店に着いてからのお楽しみだ」
「ナルトくんが喜んでくれて良かったです! 計画した甲斐がありましたね! ネジ!」
「……うっ……うるさいぞ! リーの方が積極的に計画をしていただろう!」
「あーハイハイ、ネジってば照れないの」
「……テっ……テンテンも……、はあ、もうそういう事にすればいい……」
事は数日前に遡る。
ガイ班が揃ってネジから第一声を発する事は普段なら殆どないのだが、この日はネジが一番初めに話題を振ってきた。
「もうすぐ、ナルトの誕生日だとヒナタ様から聞いてな。その、オレたちでも何かしてやりたいなあと……思うんだが」
普段のはっきりとした物言いではく、どこか窺うような口調でネジが話す。
「ナルトの誕生日かー、そういえばそうだったわね。いいんじゃない? ネジがやりたいんなら私も協力するわよ!」
「僕もナルトくんの誕生日を是非祝ってあげたいです! ネジに賛成です!!」
「……そうか。ならば、早速計画を始めたいんだが、いいか?」
「ええ。いいわよ」
「もちろんです!」
このような会話が数日前に繰り広げられていた。
そして、今日である。
一行が着いた場所は、デカデカと赤の文字で中華料理と書いてある看板が目を引く飲食店だった。
「ここ、僕たちが任務の後などに行き着けの店なんですよ! 店主にもナルトくんの事を話して、オッケーを貰ったんです! 数時間だけ貸し切りにしてくれるそうなんです!」
「って、ええ!? かっ、貸し切りィ!? なんか悪いってばよ……。貸し切りってすげえな」
「大丈夫だ。オレたちは下忍の頃から常連だからな」
「そうよ! ガイ班の顔に免じて、オッケー貰ったんだから! 遠慮しないでよね!」
「そっか、んじゃオレってば楽しんじゃおーっと!」
お店の中には、店主が沢山のご馳走を用意していて、大きな丸テーブルに並べてあった。
「さあ! ナルトくんのお誕生日を祝って乾杯しましょう!」
リーの一言で、皆が烏龍茶やジュースなどが入ったグラスを掲げ、乾杯をした。
楽しい時間が、あっという間に流れていく。
普段そこまで食べる機会がなかった、中華料理が美味しくて美味しくて、ついお腹が膨れるまで食べてしまったナルト。
「ナルト、プレゼントがあるんだけど! って……お腹大丈夫? 食べ過ぎよ」
テンテンが苦笑しながら、ナルトの目の前にプレゼントの箱を差し出した。
「サンキューな! テンテン! 開けていいか?」
「ええ、もちろん!」
「ちょっとレアでお高い忍具よ!」
箱の中身はあまり見かけない形の、小型の忍具だった。
テンテンらしいなっと、どこで使うべきか考えを巡らす。
「ナルトくん! 僕からはこれです!」
「おお! ゲジマユもサンキューな!」
ラッピングされた、袋を受け取り礼を言った。
そして、綺麗なラッピング袋を開けていく。
「……これってば、ゲキマユ先生の! わっはーー!! これ、かっけえなあって思ってて! オレってば欲しかったんだ!」
「「えっ……!?」」
ナルトが感想を述べた瞬間、ネジとテンテンがあからさまに引いた顔をしたのに気付かないナルト。
「……全く、それをプレゼントするリーにも、それを喜ぶナルトもオレには理解し難いな。それから、オレからはこれだ」
「えー、かっけえじゃんかよォ! このフォルム! 色! 最高だってばよ! まあ、それはさておき、ネジもサンキューな!」
「……ああ、開けてみてくれ」
ナルトはネジから差し出された、やけに可愛らしい包みを開く。
「何をプレゼントしたらいいのかわからなくて、ヒナタ様と一緒に選んだんだ……」
「……ぷっ……ふははっ、ネジってば、中身ヒナタから聞かされなかったのかってばよ……くくっ……ふっっ……!」
「わ……笑うな……、オレも一応それは男のプレゼントにはないだろうと思ったが言えなくてな……。だから、それはヒナタ様からのプレゼントと思え。それとオレも一応自分だけで考えて買ったものもあるんだが……。いるか?」
「……ふっ……うさぎのぬいぐるみって……ふっ……ははっ……!」
「いつまで笑っているんだ……お前は。それはオレが選んだのではないからな! オレからのはこっちだ……」
そして、ネジが再び差し出したのは先ほどとは打って変わり、無地で控えめなラッピングをされた包み。
「開けるってばよ。今度は笑わすんじゃねえってばよ?」
「……普通のものだから、笑うな」
そして、ナルトは包みを開けた。
「……? 黒の布??」
「お前の額当てが、昔とは違い青から黒に変わっていただろう? きっと修行でボロボロにしたんだろう。もし今使っているのが駄目になったときには、これを使え」
「あー、そういうことだったのか! ネジってば、よくそんなこと気づいたな! プレゼントサンキューだってばよ!」
「ネジはナルトのこと良く見てるもんねー」
テンテンが揶揄うようにニヤニヤしながらネジを見た。
ネジは少しだけ顔を赤らめふいっと顔を逸らした。
「……テンテン、余計なことを言うな……」
店の貸し切り時間の締め切りの時間になり、四人は店主と共に店の片付けと掃除を手伝った。
「今日はありがとな! お前らとまた中華料理食べに来たいってばよ!」
「ええ、今度皆を誘ってここに来ましょう!」
「そうねー、確かに焼肉屋になら皆で集まる事はあってもここは無かったしね」
「そういえばそうだな」
四人は店主に礼を言い、どこへ向かうわけでもなく、たわいもない事を話しながら歩いた。
ナルトのいっぱいのプレゼントをガイ班の三人が手分けして持っていた。
ナルトは体が軽くなったので、今日会った時より動きが忙しなく見えて、それが何となく面白くて三人は微笑んだ。
THE END
1/1ページ