鳥の羽


真っ白な病室に居るのは真っ黒な髪と白い肌と目を持つ少年。
大怪我を負って、数日前に治療が終わったばかりである。
その姿は包帯だらけで、見るからに痛々しげな姿だ。

病室にノックの音が三度響いた。

「ネジくん、入りますね」

戸を開けて入ってきたのはシズネ。
この少年、ネジの治療を中心になって行った人物である。

「体の調子はどうですか?」

「……大丈夫です」

「そっか。まだ痛むところもあると思うけど、暫く安静にしていれば良くなるから」

「はい」

シズネは思い出したように “あっ、そうだ!” と声を上げた。

「ネジくん、これ」

そう言ってネジの目の前に差し出した手のひらには、金の鳥の羽。

「敵との戦いで倒れてた君を医療班で救出した時に、君の手のひらにありました。 一応、これも持ってきたのでネジくんに渡そうと思って」

「……そうですか。ありがとうございます」

あの時、薄れゆく記憶の中、手のひらに柔らかく軽いものが降りてくるのが分かった。
きっとそれが、この羽であろうとネジは思った。
ネジがその羽を受け取ると、彼女は踵を返した。

「では、私はこれで。 暫くは絶対安静ですからね」

そう言うと、彼女は戸を開けて忙しそうに去った。
ネジはシズネが去ったあと、先程受け取った羽を見つめた。

小さくて軽くて、鈍い金色をした羽。

戦いを振り返る。

あの男は強かった。
いままで、オレは天才だと言われてきて誰かに負けることなど無かった。

常に勝ち続けていた。

ナルトに負かされるまでは。

自分の視野の狭さを痛感した。

この広い世界、自分より強いやつなどごろごろいる。
オレがこうしてあの男を倒しせたのはナルトのお陰だ。
辛うじて生きて戻れたのは、シズネさん達が必死で治療を施してくれたお陰でもあるが、ナルトがいなければ、オレは医療班に回収される前に既にあの男に殺されていたであろう。
あの時、ナルトの事を思い出してなりふり構わず敵にぶつかって行けたのは、間違いなくナルトに負けたお陰だ。

あの時の試合でお前が運命など決めつけるものではないということを証明してくれた。

そして、この戦いでオレも運命なんて誰かが決めるもんじゃないと証明する事ができた。


これからだ……。

この先が見えるまで……。

オレはもっと強くなる。


ネジは、柔く、ゆっくりと、しかし力強く羽を握り締めた。

真っ白な病室の窓辺には、雲ひとつない真っ青な澄んだ空が広がって、小鳥のさえずりが微かに響く。




THE END





あの時、ネジの手のひらに落ちた羽を医療班辺りがネジと一緒に回収していてくれてたらいいなあと思い、書きました。

ネジがあの羽を見るたび、鬼童丸との戦いを思い出して、強くなるという誓いを新たに強固なものにしていくってのもいいなあと。






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