寝顔
木陰の下で静かに佇む白黒の男。
ぴたりとも動かず同じ姿勢のままだ。
(ネジだってば、なんだあれ寝てんのか?)
ナルトは、瞑想などという言葉は思いつかずネジが座ったまま眠りこけてるように見えた。
そして、悪戯心からネジにそっと近寄り閉じられている瞼に手を当てて塞いだ。
「だーれだ!」
反応が無い。
(あれ、本当に寝てんのか……?)
手を離し、そっと正面に移動して顔を覗き見た。
(本当に寝てるってばよ……。珍しい事もんあるもんだなー)
ナルトは暫くの間、その寝顔をじっと眺めた。
いつもは眉をひそめ眉間にしわを寄せているが、今、眉は下がり穏やかな顔に見える。
閉じられた瞼を飾る睫毛。
長くは無いが、繊細で濃い睫毛は目元にそっと影を落とすよう。
すっと筋の通った鼻。
小鼻までツンと骨の通った形の良い鼻だ。
いつもは一の字に閉じられてる事が多い口は、今は寝ているために少しだけ開いていて、なんとなく幼く見える。
(ネジの顔ってあんまマジマジと見た事なかったけど、綺麗な顔してるってばよ……)
「んっ……ぅ」
ネジの肩がぴくりと動き、眉を潜めてゆっくりと瞼を上げた。
すると、真珠を嵌め込んだような薄紫色を帯びた白い瞳が現れた。
「……ナルト……?」
「お前ってば、やっぱ寝てたのか」
ネジは一瞬頭に疑問符を浮かべた。
「寝て……? …ああ! 瞑想の途中にうっかり寝てしまってたのか……。オレとしたことが……」
「……瞑想してたのか?! お前ってば暇そうなことしてんな~」
「瞑想だって、立派な修行だ。今日は寝てしまったが……」
「ふーん。お前ってば疲れてんのか?」
「まあな。この頃高等ランクの任務ばかりが続いていてロクに睡眠が取れなかった」
そう言うネジの声は、いつもの声のようだがどこか覇気が無く、疲れを帯びた声色だった。
「……疲れてんなら、寝ちまえってばよ。オレも寝よっかなー」
ナルトはネジの隣に腰を下ろして、腕を頭の後ろで組み、木にもたれかかった。
そしてナルトは、瞼をそっと閉じた。
「……ナルト」
ネジは不意に彼の名前を呼んでみる。
すると、再び瞼を上げたナルト。
「……なんだってばよ」
持ち上げられた瞼から覗く青い目が此方を向いて、思わずどきりとした。
「いや、なんでもない。……しかしお前が昼寝なんてなんかイメージと違うな。お前はいつも寝てる暇があるなら修行でもしてそうなんだが」
「確かにオレってば、寝てる時間勿体ねえしいつもは修行とかしてるってばよ。でも、なんかお前見てたら昼寝も気持ちよさそうだと思ってよォ」
「ふっ……、人の寝顔をジロジロと見るとは悪趣味だな」
「人聞きの悪いこと言うなってばよ! オレってばたまたま通りかかったらネジがいたから見ただけだっての」
「なあ、……ナルト、起きたら手合わせ頼むぞ」
「……おう!」
その後はお互い無言になり、いつの間にか寝息だけがこの場所に響いた。
THE END
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