お前のせいじゃないよ


人気ひとけのない夕方の大きな木のそば。
その大きな木の下にうずくまる小さな人姿があった。
ナルトは近づいて、よく見てみる。

その姿は微かに震えていた。
耳をすますと、唇を噛み締めて泣き声を殺したような震える声音がするのが分かる。

誰が泣いているのか確認しようと、
そっと気づかれないぐらいの距離まで近づいてみた。

黒の長い髪は、
震える肩を隠すように広がっている。


(オレの知ってる中で黒髪の長い髪なんて数えるほどしか知らねェ。ヒナタか……?)

うじうじ泣いてる黒髪なんてヒナタぐらいしか思いつかなかった。

だが、もっと耳をすますと女の声にしては低く思えた。
ほとんどしゃっくりと声を殺す息遣いしか聞こえなかったが、女のそれとは違うのだけはすぐに分かった。


(……ネジ?)

ありえねえだろと思ったが、ナルトが知ってる中で黒髪の長髪はそれ以上は思いつかなかった。


耳に頻く頻くと入ってきて鼓膜を震わせる押し殺された深い悲しげな声。
こちらの胸が締め付けられる様な泣き声だ。


「……!? …… ナ、ナルト……か?」

声を殺してたそいつが、いきなり驚いた様に涙に濡れた目を見開き、こちら方向を見てきた。

やはりネジだった。

ナルトは大人しく姿を見せることにした。

「……わ、悪ィ……。覗き見るつもりは無かったんだ。 泣いてるのヒナタかと思ってよ……お前とは思わなかったってばよ……」

「そうだろうな……オレがこんなに泣いているなんて誰が思う。自分でもびっくりだ……」

ネジは「フン」といつもの鼻で笑うような態度を見せているが涙が止まらずうまく喋れていない。
鼻を啜る音が悲しげに響く。


「……なぁ、なんで泣いてたのか、聞いちゃダメか」

「……聞いてどうする。くだらないことだ……」

時折しゃっくりを交えながら涙声で喋るネジの様子は普段からは想像もつかないぐらい珍しくナルトはネジのことがとても心配になった。

「吐き出しちまえってばよ、全部。そうすりゃスッキリすることもあんだろ」

「…………本当に情けないことなんだ。特にお前には聞いて欲しくは無かった……。まだっ、こんなことで悩んでると思われるだろうから」

「辛い時ぐらいオレってば説教なんかしねえってばよ。説教なんかあん時やりあったので十分だろ」

ナルトはネジの様子を窺いつつも説得を試みる。
すると暫くの沈黙のあと、ネジは静かに口を開いた。

「………父上の、夢を見たんだ。そしたら急に今まで抑えてきたものが込み上げてきて、気づいたら馬鹿みたいに、泣きじゃくってた……。呆れただろう?」

ネジはふふっと自嘲するような、から嗤いを漏らした。

「呆れねェよ。 父ちゃん死なれて寂しいのなんて当たり前だってばよ……」

「……もう少し経てば……、いつものオレに戻るから……暫くこのまま泣かせてくれ……」

うずくまって膝を抱えて声を殺して泣きじゃくるネジの、あまりにも普段との差にナルトはかけるべき言葉がこれで当たっているのか不安になった。

言葉でよりも態度で示したほうがいいのかもしれないと思いナルトは、ネジの震える肩を引き寄せてしゃっくりを上げ苦しそうな背を摩り、そのままその手を上に持って行くと優しく頭を撫でた。

先程までも泣きじゃくってはいたが、一応堪えていたのだろう。
ナルトに頭を撫でられた瞬間、ネジは己を押さえつけていたものが崩れ、

先程よりも酷く咽び泣いた。

ナルトは一瞬余計に泣かせてしまったのかとびっくりしたが、堪えていたものを全部出そうとしてるんだと気付いてほっとする。

「辛いよな。父ちゃん死んじまって。オレ、お前と戦った時によ、お前に色々キツイこと言ったけど、それでお前が色々我慢してるんならそれは違うってばよ……」

ネジはナルトのせいではないという様に、頭は膝に埋めてはいたものの、必死に首を左右に振った。


「……ありがとう……ナルト……」





THE END





泣きじゃくるネジと、自分が中忍試験でネジの根性叩き直す為とはいえキツイこと言ったせいで色々我慢させることになったのではと思ってしまうナルトと、それを必死に否定するネジ。

超ブルーな作品になりました\(^o^)/


文章編集 160117





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