散髪
ネジは苛立ったオーラをメラメラと出していた。
朝からずっとこの調子だった。
丸太のベンチに座るネジは落ち着かなそうだった。
眉間にしわを寄せ、というのは大概何時ものことだが、それに加え、足を忙しなく片方だけ小刻みに動かしながら、顎に肘をついてその指を頬に当て人差し指はトントンと落ち着かなそうにリズムを打つ。
「……ネジめちゃくちゃイライラしてるわね。なんかあったのかな?」
「さあ。ボクは何もしてませんよ」
「いや!お前のせいだ!」
すると突然さっきまでそっぽを向いていたネジがリーを指差し声を張り上げそう言った。
「えっ!?ボクのせいなんですか!? ごめんなさい!キミに何かした覚えはないんですけど、言ってくれれば謝りますから!!」
リーは慌てて頭から出た言葉を必死に並べた。
「じゃあ、この際だからはっきり言うぞ! 何故いつもいつもオレは女装をさせられるんだ!! 毎度毎度我慢していたがもう限界だ! 金輪際オレは女装なんてしないからな!」
二人はポカーンと口を開け、無言でネジを見る。
「ネジ……、キミがそんなに嫌がっていたなんて、全然気付きませんでした……」
「えっ!? いやいやネジ、普通にめちゃくちゃ嫌がってたじゃない……」
テンテンは呆れたように吐き捨てた。
「全く、何故オレがいつもいつも女装をやらねばならんのだ! 」
「たぶん、その長い髪のせいじゃないかなー。 切っちゃえばいいのよ、いっそのこと」
「…………そうか! 髪を切ればいいのか。それは思いつかなかった」
ネジは目からウロコとでも言うように、納得したような表情を見せた。
もっとも、テンテンは冗談のつもりだったのだが……。
「では、早速散髪に行ってくる。ふふっ、明日からは新たな自分になるんだ。じゃあな」
ネジは先程までとはうってかわり、爽やかに笑いながらその場を去ろうとした。
二人は一瞬、ネジの珍しい表情に固まったが、すぐに状況を理解し慌てだした。
「……ちょっ!待って待って!待ってたらっ!!! 冗談よ!」
「ネジぃいい! 髪を切るなんて正気ですか!? 髪が短いネジなんて!そんなのネジじゃありませんよ!!」
「オレのアイデンティティーは髪だけか!? 何を言おうとオレは髪を切るぞ!新しい自分になるんだ!」
「だめよ!! 髪を切るだなんて!そんなに綺麗な髪めったにいないんだからあ!!! 切るなら私に分けて欲しいぐらいよ! 」
「テンテンのせいですよ!冗談でも言っていいことと悪いことがあります!! それとテンテンの髪も綺麗ですよ!!! ネジぃいい!!行かないでください!」
二人はネジの腰を鷲掴みし、動きを止める。
「離せッ! 何と言われようとオレは決めたんだ! 女装なんてもう懲り懲りだ!」
するとリーとテンテンから向かって前方に金髪でオレンジの服を着た少年が見えた。
「ナルトくううううん!! ちょっと手を貸してくださいいぃいい!! 大変なんです!」
「ナルトっ!!! 今すぐ来てよおお! ネジが! ネジがああ!」
ナルトは大声で自分の名前を呼ばれ、驚いてその方向を振り向いた。
「ゲジマユ? テンテン? どうしたんだってばよ……!?」
ナルトは状況が飲み込めず、目を丸くした。
「ネジが!髪を切ってやるって躍起になって! 必死で止めてるんですけど! キミもネジを説得してくれませんか!!」
「ネジが髪を切るなんてだめよ!!絶対!!ナルトもなんか言ってやってよ!!」
「……えーと……、あのよォ、ネジ? 髪、切るの勿体ねェってばよ……? だから、やめとけって、な?」
ナルトは状況が未だに飲み込めず、だが只ならぬ事だけは理解したようで、とりあえずネジの散髪を止めさせるべく、それっぽい言葉を言った。
「…………! ナ、ナルトが言うのなら、今回は……見送る事にしよう」
ネジは体の力を緩め、あっさりと諦めた。
「……え? 本当に諦めるの? 本当に切らないの?」
テンテンはネジに髪を切って欲しいんだか、そうではないのか、よく分からない問いかけをした。
「……お前達が、やめろって言ったんだろう……。今度は切れっていうのか」
「いやいやいや!! 違うから! ネジはそのままでいいのよ! ねっ!? ナルト!!」
「えっ? お、おう。 そうだ……な? うん。 ネジはそのままでいいんだってばよ!」
ナルトは引きつった笑顔をしながらそう言った。
内心なんでオレに振るんだ?とは思ったがその言葉は飲み込んだ。
とりあえず、ネジは髪を切るのはやめるらしいのでリーとテンテンはほっとした。
「はぁー……、じゃあ早速修行再開しましょう~」
「そうですね……。 ネジ、キミもですよ!」
「あ、ああ」
ナルトはただ一人、ポカーンとしていた。
THE END
ギャグです。
このサイト、ギャグがないなと思ったのでとりあえずSDから少しだけネタを拝借させてもらい書きました\(^o^)/
ナルトに言われたら素直に聞いちゃうネジ。
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