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序章


『かつて我々は木であった』

思考を持ち、けれど動くことの出来ない我々は、ただじっと時の移ろいを見つめていた。
ある時、突然ひとつの木からふたつの生き物が産まれた。
木の洞から転がるようにして産まれたそれらの姿かたちは、木や花、ましてや他の動物とはまるで違った生き物であった。
しかしその思考は木と同じものだった。
ふたつはすくすくと育ち、やがてお互いに結ばれた。
それが人という生き物のはじまりだった。
はじまりの人は、たくさんの子を為した。いつしか歳をとって、産まれた木の洞で永い眠りへと落ちていった。
人という生き物は、木から生まれそして木の中で朽ちていく。

――かつて我々は木であった。

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