どこまで気を失っていったのだろう。

コポポ…と空気が逃げる音が聞こえて、身体は思うように動かず、下へ下へと沈んでいく。

このまま死んでしまうのだろうか。
直感的にそう思ったけれど、意識はかろうじて残っているし、脳や手などの神経は至（いた）って正常だ。

けれど、何とも言えない倦怠感（けんたいかん）が抜けないせいか、ひどく眠い。
流れに身を任せるように、重い瞼を閉じようとしたとき、遠くの方で誰かの声が聞こえた気がした。

まるで、幽暗（ゆうあん）に閉ざされたこの空間のどこかで、すすり泣く子供のような……そんな声が。


前にも同じことがあったような気がしなくもないけれど、それを探す力はもう残っていない。





千代（……ねぇ、そこに…いるの……？）





声にならない声で、その人物に声をかける。
まるでエコーのように反響するのか、自分の耳にも擦れた声が届くけれど、声の主はぱたりと泣き止んだ。

驚かせてしまったのかと思ったが、それはすぐに杞憂に終わった。






――――――――　･･････いで･･････　――――――――





千代(･･････え･･････？)




自分の声は反響されるのに、泣いていた主の声は聞き取れないほど小さく、震えていた。

思わず聞き返すと、グンッと何かに押し込まれそうな程の圧を身体全体に受ける。

その圧に抗おうと手を伸ばすも、何も届くことなく、闇の底へと落ちていった。