第八章 巻き戻しの街
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コムイ「………良かった、目が覚めたかい?千代ちゃん」
千代「……………コムイ、さん…………?」
何で、と声をかけようとすると急激に身体中の痛みが今さら現れた。
動かなくなったブリキのように、ビキビキと軋む。
あまりの痛さに顔をしかめていると、まだ寝ていた方がいい。そう言いながら、私をベッドへ寝かせる彼に顔を向けたまま尋ねる。
その時だった。
ドクンッ
千代「ッ!?あ"あ"あ"ッ」
ハンマーでガンッと殴られたかのような、頭痛とはかなり、かけ離れた痛さに悶え苦しむ。
ノイズが耳に騒がしく流れ込んでく。
いつもの声や内に秘めた声、アクマの声が大音響となる中で、私を呼ぶ声が二重三重となって谺する。
…なんだ…これ…。うるさい。痛い、苦しい、怖い。嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ…ッ!!
コムイ「千代ちゃん?一体どうし──」
千代「来るなぁッ!!」
駆け寄ろうとしたコムイの手を振り払う。バチッと電気が迸った後、私の周りを囲うように赤紫色の奇妙な術式が浮かび上がった。
その様子を見てるだけで、檻に閉じ込められた鳥のごとく、蹲っていた彼女をただただ茫然とその場で立ちすくむ。
コムイ「これは………」
?「………室長殿、一体何があった?」
?「ッ!?千代………!」
部屋の騒ぎを聞き付けたのか、一人の老人と少年が入ってきた。
その声も爆音でしか聞こえない私は、耳を塞ぎ視界も頑なに閉ざす。もうこれ以上は聞いていられないし見たくもない。
百以上………いや、数百万以上の声がごった返していて何を言っているのかすら聞き取れないし、誰の声なのかもわからない。
自分の声も、増えていく声にかき消されて、聞こえなくなっていく。
鼓膜がいつ破れてもおかしくはない状況の最中、ある声が一つだけハッキリと聞こえた。
──── ………ようやく、見つけた……。 ────
千代「………ッ、だ、れ……?」
騒音に堪えながら、その声の主に問いかける。
若い女の人のような、優しく柔らかい口調に少しばかり、気を落ち着かせる。
ただ、警戒だけは取り除けなかった。なんていったって、聞いたこともない知らない人の声だったから。
ノアであるロードみたいに、脳に干渉して精神を攻撃してくるのかと思ってしまうのは至極当然ではなかろうか。
だって実際に精神攻撃をじわじわと受け続けてきたのだから、警戒しない方がおかしい。
そう考えていると、彼女はクスクスと笑い出す。
──── ……そんなに警戒しないでちょうだい。私の名は……そうね。“ L ”とでも名乗りましょうか。
今の貴女にどうこうするつもりはないわ ─────
千代「ご託は、どう…でも、いい…ッ。さっさと用件、言いなさいよ」
そう、ご託はどうだっていい。この耳障りな音が聴こえなくなればそれでいいのだ。
ただでさえ、今聞こえているあの声も僅かにノイズがかっているのだから。
彼女はまるでその場にいたかのように寂しそうにくすりと笑った。
──── そうね。時間がないから単刀直入に言うわ。………このずんざくような耳障りを解きたくば、あのおまじないを唱えなさい。 ────
千代「おま、じない………」
──── そう、おまじない。親から子、子から孫へと口伝していくおまじない。
貴女は知っているはず……それを唱えれば、彼女は一時的だけれど離れていくわ。 ────
彼女?
小さくその言葉を繰り返す。確かに、おまじないを知っている。
死ぬ間際に祖母が教えてくれた、私にしか分からない遺言のようなものだから。
だとしても、彼女が離れていくというのはどういうことだろう。“ L ”は一体、何者なのだろう。
一体、このおまじないは、祖母の家系は………。
──── ………。混乱しているところ悪いけど、時間がないわ。早く唱えなさい。 ────
彼女の声にビクリと身体を震わす。そうだ、今はこの耳障りな音をなくさないといけなかった。
ゆっくりと目を閉じ、あの時のことを思い返す。
祖母から聞いたあの言葉を唱え方を───。
───── いいかい。よく聞いとくれ。助けを請うように、願うように唱えなさい。“マレウス……” ─────
千代「─────………
守護者よ。我が名において、悪しき魔女に鉄槌を下せ
………お願い、私を助けて……ッ」
耳を塞ぎながら、悲鳴じみた声で泣き叫ぶ。
パリンッと何かが割れ、体の中から青白い光と赤い光が交差するように飛び出していく。
周りを囲うように点滅する結界を砕きながら、光は四方に飛散した。
視界が気持ち悪いほど歪み、持ち堪えていた意識も崩れそうになったとき誰かの呼ぶ声が聞こえ、振り向けば忘れもしない……あの人がいた。
千代「……………コムイ、さん…………?」
何で、と声をかけようとすると急激に身体中の痛みが今さら現れた。
動かなくなったブリキのように、ビキビキと軋む。
あまりの痛さに顔をしかめていると、まだ寝ていた方がいい。そう言いながら、私をベッドへ寝かせる彼に顔を向けたまま尋ねる。
その時だった。
ドクンッ
千代「ッ!?あ"あ"あ"ッ」
ハンマーでガンッと殴られたかのような、頭痛とはかなり、かけ離れた痛さに悶え苦しむ。
ノイズが耳に騒がしく流れ込んでく。
いつもの声や内に秘めた声、アクマの声が大音響となる中で、私を呼ぶ声が二重三重となって谺する。
…なんだ…これ…。うるさい。痛い、苦しい、怖い。嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ…ッ!!
コムイ「千代ちゃん?一体どうし──」
千代「来るなぁッ!!」
駆け寄ろうとしたコムイの手を振り払う。バチッと電気が迸った後、私の周りを囲うように赤紫色の奇妙な術式が浮かび上がった。
その様子を見てるだけで、檻に閉じ込められた鳥のごとく、蹲っていた彼女をただただ茫然とその場で立ちすくむ。
コムイ「これは………」
?「………室長殿、一体何があった?」
?「ッ!?千代………!」
部屋の騒ぎを聞き付けたのか、一人の老人と少年が入ってきた。
その声も爆音でしか聞こえない私は、耳を塞ぎ視界も頑なに閉ざす。もうこれ以上は聞いていられないし見たくもない。
百以上………いや、数百万以上の声がごった返していて何を言っているのかすら聞き取れないし、誰の声なのかもわからない。
自分の声も、増えていく声にかき消されて、聞こえなくなっていく。
鼓膜がいつ破れてもおかしくはない状況の最中、ある声が一つだけハッキリと聞こえた。
──── ………ようやく、見つけた……。 ────
千代「………ッ、だ、れ……?」
騒音に堪えながら、その声の主に問いかける。
若い女の人のような、優しく柔らかい口調に少しばかり、気を落ち着かせる。
ただ、警戒だけは取り除けなかった。なんていったって、聞いたこともない知らない人の声だったから。
ノアであるロードみたいに、脳に干渉して精神を攻撃してくるのかと思ってしまうのは至極当然ではなかろうか。
だって実際に精神攻撃をじわじわと受け続けてきたのだから、警戒しない方がおかしい。
そう考えていると、彼女はクスクスと笑い出す。
──── ……そんなに警戒しないでちょうだい。私の名は……そうね。“ L ”とでも名乗りましょうか。
今の貴女にどうこうするつもりはないわ ─────
千代「ご託は、どう…でも、いい…ッ。さっさと用件、言いなさいよ」
そう、ご託はどうだっていい。この耳障りな音が聴こえなくなればそれでいいのだ。
ただでさえ、今聞こえているあの声も僅かにノイズがかっているのだから。
彼女はまるでその場にいたかのように寂しそうにくすりと笑った。
──── そうね。時間がないから単刀直入に言うわ。………このずんざくような耳障りを解きたくば、あのおまじないを唱えなさい。 ────
千代「おま、じない………」
──── そう、おまじない。親から子、子から孫へと口伝していくおまじない。
貴女は知っているはず……それを唱えれば、彼女は一時的だけれど離れていくわ。 ────
彼女?
小さくその言葉を繰り返す。確かに、おまじないを知っている。
死ぬ間際に祖母が教えてくれた、私にしか分からない遺言のようなものだから。
だとしても、彼女が離れていくというのはどういうことだろう。“ L ”は一体、何者なのだろう。
一体、このおまじないは、祖母の家系は………。
──── ………。混乱しているところ悪いけど、時間がないわ。早く唱えなさい。 ────
彼女の声にビクリと身体を震わす。そうだ、今はこの耳障りな音をなくさないといけなかった。
ゆっくりと目を閉じ、あの時のことを思い返す。
祖母から聞いたあの言葉を唱え方を───。
───── いいかい。よく聞いとくれ。助けを請うように、願うように唱えなさい。“マレウス……” ─────
千代「─────………
………お願い、私を助けて……ッ」
耳を塞ぎながら、悲鳴じみた声で泣き叫ぶ。
パリンッと何かが割れ、体の中から青白い光と赤い光が交差するように飛び出していく。
周りを囲うように点滅する結界を砕きながら、光は四方に飛散した。
視界が気持ち悪いほど歪み、持ち堪えていた意識も崩れそうになったとき誰かの呼ぶ声が聞こえ、振り向けば忘れもしない……あの人がいた。