そう言って、ロードはレロを連れて、扉の中へと消えていった。





ドドドドドッ





アレン「！！、何だ！？」



千代「！？、まさか………っ、崩壊が始まった！？」



アレン「………！！
リナリー、ミランダ！！」





彼女が消えたその数秒後に、ロードが造り出した空間が崩壊し始め、その中にいた私達は外へ放り出される。
目が覚めれば、ミランダのアパートへ戻ることが出来たものの、一抹の不安が頭をよぎる。





─────　また遊ぼぉ、ルヒナと瓜二つのエクソシスト　─────





千代(……………っ、まさか、感じ取られていたなんて)





しかも、彼らははっきりとルヒナの名前を出してきたし、能力のことも知っているなら、あの口ぶりは私の力すべて熟知していることになる。


……………それがもし本当なら、彼女が死んでからのことも……………？





千代(なんということだってばさ……………このままじゃあ……………ッ)





──────真っ先に奴らに狙われる確率が高くなる。





アレン「……………。千代、顔色が悪いですけど、大丈夫ですか？」



千代「！、ええ、大丈夫だってばさ。
……………あの空間は、恐らく………アレンの思っているとおりだと思うよ」



アレン「！！、それって─────」





私が言うその言葉に反応した彼は、さらに問いかけようとすると、リナリーが悲鳴じみた声で私達の名を叫ぶ。





リナリー「ミランダの様子がおかしい！」



アレン、千代「！！！」





その叫びに急いで駆け寄ると、体力はもう限界に達しているのに、青ざめながらイノセンスの力を酷使し続けているミランダの姿があった。





アレン「ミランダさん………！？
発動を停めて！これ以上は、あなたの体力が限界だ」





ヒー、ヒー、と荒い息を吐き続ける。
「だめよ………」やっと口から吐き出せれた言葉を紡ぐその姿に、私は胸が締め付けられる気がした。
すごく優しい人だから、やっと認めてもらえる人に出会えたから……彼女は発動をやめない。
これを止めてしまえば、もう二度と会えないかもしれないと、思ったから。





千代「ミランダ……………」



ミランダ「停めようとしたら………」



アレン(！、こっちに寄ってくる！？)



ミランダ「吸い出した時間も元に戻るみたいなの、また、あの傷を負ってしまうわ……………。
いやよぉ……………初めてありがとうって言ってもらえたのに………これじゃ、意味ないじゃない……………」





そう、私達のことを思って発動を停めずに泣きじゃくる。
“初めて”認めてもらえた、“初めて”必要としてもらえた。“初めて”ありがとうを言ってもらえた。
それは、誰かにしてみれば当たり前なことでも、彼女にとってはかけがえのない……それこそ、彼女自身の人生を大きく変えてくれるものだったに違いない。
嬉しかったのに。もっと笑っていたかったのに。楽しかったのに。
そんな彼女の心の声が痛いほど聴こえてきた。

どう声をかけようか考えていたら、アレンが彼女の方に優しく手を置いて発動を停めるように声をかける。





アレン「停めましょ、ミランダさん」



ミランダ「……………」



アレン「あなたがいたから、今、僕らはここにいられる。それだけで十分ですよ」





へっちゃら、へっちゃらと笑いながら、彼女に向かってそう言うアレンに苦笑しながら「……………人は何度だって、傷を負うもの」と優しく諭すように言う。





千代「それが、どんなに辛いことでも、これからの自分にとって糧となるんだから、ミランダが一人で背負わなくていいんだよ。

私達のことを心配してくれて、ありがとう………ミランダ」



ミランダ「………っ、千代ちゃん………っ」



アレン「それに、自分の傷は自分で負います、生きていれば、傷は癒えるんですし………ね？」



リナリー「そうよ、ミランダ」



千代「ありがとう。だからお願い、発動を停めて」





私達の言葉に、さらに泣き出す彼女は、イノセンスの力を停める。

そして、今まで受けた傷の時間が私達の元へ戻って、激痛の末……………彼女の部屋で意識を失った。

幾日経ったのだろう。優しく頭を撫でる手が心地よく感じ、フッと目を覚ます。
ずっと眠っていたからか、瞼が酷く重い。ゆっくり瞬きを繰り返しながら視界に映る影へ目を凝らすと、そこにはいないはずのコムイさんがいた。



コムイ「………良かった、目が覚めたかい？千代ちゃん」



千代「……………コムイ、さん…………？」





何で、と声をかけようとすると急激に身体中の痛みが今さら現れた。