アレン「……………。………スゴイ」





ぼそりと呟くアレン。

実を言うと私達は、30何回目かの10月9日がきたこの日、何が原因で起こったことなのか、ミランダと共に考えている最中だった。





アレン「リナリー、千代。見てくださいよ、コレ！」





ミランダと私、リナリーで机を囲みながら考えていると声をかけられたので、振り向けば……………。











アレン「時計人間！」



3人「キャ─────！！！」





面白そうに笑いながら、こっちを見るアレンが、まるで手品のように柱時計と一体化していた。





リナリー「何やってんの、アレンくん！？
どうなってるのコレ！？」



ミランダ「ギャアアアアアッ、私の時計──────！！！」



千代「……………あ、アレン。いきなり何、手品してるの……………」





顔をひくつかせながら、私は彼を見やると、彼は笑いながらスルッと時計から抜け出してきた。





アレン「あはは、手品じゃないですよ、千代。

この時計、触れない（・・・・）んですよ。
今、ちょっと試しに触ろうとしたら、ホラ……………」



リナリー「わっ、すり抜けた……………！？」





アレンが時計に触れようとすると、ズブズブと音を立てながら、まるで水の中に手を入れているかのようにすり抜けていく。





千代「それを見るからに、どうもその時計に触れる事が出来るのは、持ち主であるミランダだけのようね………」





ふむ、と腕を組みながら、その光景を冷静に判断すると、アレンが頷く。





アレン「ですね。

さっきの『時間の巻き戻し』といい、これといい………、やっぱりイノセンスに間違いなさそうです」



ミランダ「ほ、本当なの？
この時計が街をおかしくしてるだなんて………



………ｯ……！ま、まさか壊すとか………？
私の友を……………」



全員「「「落ち着いて」」」





ギラリと一体どこから出してきたのか、包丁を持ち出して、刃先を向ける彼女に、私達は冷や汗を流しながら、彼女を宥める。





リナリー「でも、ミランダ。あなた、本当に心当たりないの？
時計がこうなったのは、何か原因があるハズだわ。
思い出してみて。本当の10月9日だったのこと」



ミランダ「……………。あの日は……………」





そうリナリーに言われ、頭に手を当てながら考えていたミランダが、ぽつりぽつりと話し始めた。





ミランダ「私、100回目の失業をした日で………」



アレン・千代「「ひゃ……ｯ！？」」



ミランダ「さすがに失業回数も３ケタになると感傷もひとしおで……………」






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ミランダ「ぷはっ、……………もういや。もういやぁぁぁ」





感傷が激しかったからか、何十本ともいく酒瓶を飲み明かし、泥酔状態となったミランダは、古時計に寄りかかっていた。





ミランダ「毎日毎日、イヤなことばかり。前向き？
ふふ……………何それ。

けっ、なんかもぉ、人生どうでもいいわ………」







コチッ




ミランダ「くずっ………明日なんか来なくていい」








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リナリー・千代「「………………。………それじゃないの………？」



ミランダ「え………？」



アレン「イノセンスがミランダさんの願望を叶えちゃったんですよ」



ミランダ「そ、そんな。私は、ただ愚痴ってただけで……………。
大体何で、時計がそんなことするの！？」





部屋中で大騒ぎになっている2人に、リナリーが何か核心めいた表情をする。





リナリー「ミランダ、貴女まさか……………。
この時計（イノセンス）の適合者………？」



アレン「エッ、ホントですか？」



千代「そうかもね。………確かにあり得ない話じゃないわ。
もし、ミランダの願いに反応して奇怪を起こしているのなら、シンクロしていてもおかしくないもの」



ミランダ「何？てきごうしゃって？」





ほぼ蚊帳の外で話が進む中、何のことなのかさっぱり分からないミランダは、頭の中でハテナを浮かべて聞いてきた。





リナリー「ミランダ、時計に奇怪を止めるよう言ってみて！」





何も分からないまま、そう言うリナリーの指示に従って、柱時計に手をつける。





ミランダ「時計よ、時計よ。
今すぐ時間を元に戻して～～」





とても恥ずかしそうにそう言うミランダをじっと見ていたら、リナリーとアレンが同じタイミングでダッと駆けだして即座に買った新聞を広げる。