刹那/菊田
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目が覚めると、窓から見える空は薄らと白んでいた。まだ薄く瞬く星達は、淡い光に溶けて消えようとしている。
律はまだぼんやりとした頭のまま、自身をすっぽりと抱き締めて眠る菊田を見上げた。布団の中、小さく寝息を立てている彼はどこかあどけない。胸の奥からじわりと温かくなるのを感じ、律は目を細める。
互いに一糸纏わぬ姿である事に羞恥を覚えるが、それよりも、肌と肌の触れ合う感覚とその温もりが、心地いい。しかしやはり寒さを感じた律が小さく身震いをすると、菊田は薄ら目を開けた。
律と目が合うと、菊田は微笑む。その表情はまだ
「寒いな。」
微睡の延長にあるような掠れた声で囁くと、菊田は律の身体を引き寄せた。触れ合う肌と肌を愉しむように、律の肩や背中をさすっている。
身体を撫でられる感覚に、律は昨晩の情事を思い出す。荒々しくも甘く優しかったそれは、一晩が経ったと言うのに、律の頬を染め上げた。律は堪らなくなって、菊田の胸元に顔を埋める。その胸に耳を当てれば、彼の温かな鼓動が聞こえてくる。
何やら可愛らしい律の様子に、菊田は目尻を下げ、口元を緩めた。
「腹減ったな。」
ぎゅっと抱き締めて頭に顎を乗せてくる菊田に、律はふふっと笑った。
「空腹ですか、菊田特務曹長殿。」
ふと有古に聞いた菊田の階級を思い出し、律は悪戯っぽく微笑みながら口にする。
「悪い気はしねぇな。」
可笑しそうに笑う菊田は、律の後頭部を撫でた。くつくつと笑う菊田に、律も釣られて笑う。
「ご飯作りましょうか。」
律は菊田の腕を抜け、なるべく見られないようにと、彼に背中を向けて起き上がる。菊田はその白い背中を、美しいと思った。自分も起き上がると、その背中を包み込むように抱き締める。
「菊田さん」
律の戸惑った声に口角を上げると、菊田は彼女を後ろから抱き締めたまま、彼女の顎を掴み、その唇に口付けを落とした。ちゅっと音を立ててやると、律は眉を下げ、頬を染める。
その様子に堪らなくなった菊田は、やはりもう一度と情事に雪崩れ込もうとした。しかし真っ赤な顔をした律に突っぱねられ、泣く泣く折れた。