微熱/菊田
名前変換
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明かりの無い、馴染みのないベッドルーム。その部屋は彼の香りで満たされている。暗闇に慣れてきた目は、ベッドで眠る彼の輪郭を薄ぼんやりと捉えている。苦しそうに呼吸を繰り返す彼は、体躯の良い身体をまるで仔猫のように縮こまらせて震えている。指先を絡め合うようにして繋がれた彼の手はじっとりと熱い。
どうしたものかと思いつつもその手を解けずにいる律は、床に座りベッドにもたれ、彼をただ眺めていた。オフィスカジュアルの服を纏ったまま。せめてジャケットを脱ぎたいとも思うが、縋るように手繰り寄せられた手に思い留まる。
「下の名前で呼んだことなんて、なかったじゃないですか。」
相手に届けるつもりの無いその呟きは、静かな部屋に溶けて消えた。
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