微熱/菊田
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まただ。また同じ夢。もやのかかった先に居る彼は、此方に背を向けている。姿形も分からぬその人に、振り向いて欲しいと願っている。しかし遂に彼が振り返ることは無く、霞のように消えてゆく———。
律はゆっくりと瞼を持ち上げると、目の際から零れた涙を拭う。気怠い身体を無理矢理起こし、一つ、溜息を吐いた。
昔から繰り返し同じ夢を見る。子供の頃は数年に一度くらいなものだったが、その間隔は徐々に短くなり、今では年に数回程。正直不気味だと思う。しかしそれよりも、心の震える方が優っている。この焦がれるような感情は、一体何なのだろうか。たかが夢に馬鹿馬鹿しいとは思いつつも、こうも続いては気になってしまうのも仕方がない事だろう。
一つ伸びをして、律はベッドから抜け出した。ふらふらと洗面所へ向かうと、涙に濡れた顔を洗う。そもそも、もやに紛れたあの人が、何故男だと分かるのだろうか。殆ど影しか分からないと言うのに。夢というものはつくづく、都合がいいと言うか何と言うか。そんなことを思い、つい呆れた様に笑った。笑ったつもりだった。しかし鏡の中の自分と目が合えば、その表情はまだ彼を想っているようで。憂いた様な顔をパシリと両手で挟み込むと、ふぅと短く息を吐き、出勤の準備に取り掛かるべく洗面所を後にした。
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