短編
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「律、ちょっと背中揉んでくれ。」
「もう、仕方ないですね・・・。後で代わってくださいね。」
「任せろ〜。」
「待て!!!!」
畳にうつ伏せに寝転ぶ門倉にせがまれ、律がその上に乗ろうとすると、キラウㇱがストップをかける。
「何だよ邪魔するなよ〜んぐッ!?」
文句を言う門倉の背中に、キラウㇱは跨るようにして飛び乗った。
「ぐぇ、何しやがる!」
「この色ボケジジィ。」
「仲が良いですねー。」
力任せにぐりぐりと肘で背中を刺激するキラウㇱに、門倉は悲鳴をあげている。律はそんな二人を呑気に笑って見ている。
律は土方に恩がある。その土方の身の回りの世話をする為に、土方一派と行動を共にしている。
今は土方達は外出している。律は残された門倉とキラウㇱと共に、土方の隠れ家である、とある家屋で留守番をしていた。というより遊んでいる。最近はこれが日常となりつつある。
気が合うらしい門倉とキラウㇱの戯れ合いを眺めるのが、律の最近の楽しみだった。
「律も律だ。そう簡単に男に跨るな。」
「ちょ、キラウㇱさん言い方。」
「おいおい嫉妬か?男の嫉妬は見苦しいぞ〜。」
やめておけば良いものを。煽る門倉は案の定、キラウㇱに羽交締めにされている。
「まったく、お子ちゃまみたいな絡み方して。」
「「こいつが!」」
口を揃える二人に「はいはい」と答えると、律は洗濯物を取り込みに行った。
「手伝う。」
律が別室で洗濯物を畳んでいると、キラウㇱが声を掛ける。畳に座る律の隣に腰掛けると、キラウㇱは言葉通り洗濯物を畳み始めた。
「ありがとうございます。門倉さんは?」
「寝た。」
ふふっと笑う律を、キラウㇱはちらりと見る。「ジジィだからな。」と言えば、律はまた笑った。もっと笑った顔が見たいと、キラウㇱは思う。しかし同時に、自分を男として見ていないであろう律に、悶々とする。
夕暮れ時の、柔らな橙の光が差し込む部屋で、二人は洗濯物を畳む。そんな穏やかな時間が、キラウㇱにとっては愛おしく、そしてもどかしかった。
「そろそろ夕餉の支度をしないとですね。」
「あぁ。」
洗濯物を畳み終えると、律は立ち上がった。「門倉さんと遊んでてください。」と悪戯っぽく笑う律に、キラウㇱはむっとした顔をする。
「子供扱いするな。」
「してませんよ。はい、これお願いしますね。」
微笑む律は畳んだ洗濯物をキラウㇱに押し付けると、台所へ向かった。キラウㇱはその背中を見送ると、洗濯物を片付ける為部屋を後にした。
洗濯物を片付け終えたキラウㇱが台所を覗くと、まな板に向かう律の後ろ姿が見える。コトコトと鍋の煮える音といい匂いに、きっと既に下準備は済んでいたのだろうとキラウㇱは思った。
「・・・子供扱いしてるだろ。」
「わ、びっくりした。まだ言ってるんですか。」
驚き振り返った律は呆れて笑うと、またすぐに前を向いてしまった。たくあんを切っているようで、ざく、ざく、と音がする。
キラウㇱは吸い込まれるようにして律の傍へ行くと、彼女の腰に腕を回し、そっと後ろから抱き締めた。
「わっ。」
律は驚き振り返ろうとするが、キラウㇱは抱き締める腕に力を込め、それを阻止する。
「キラウㇱさん・・・?」
突然の事に心臓がばくばくと早打つ律は、ひとまず手に持っていた包丁をまな板へ置いた。
「俺も良い歳した男だぞ。」
戸惑う律の耳元でキラウㇱは囁く。キラウㇱの低く掠れた声に、律はぞくぞくとし、その耳は熱を持つ。
「わ、分かってます。」
「いや、分かってないな。」
そう言うとキラウㇱは、後ろから抱き締めたまま律の手を掴み、彼女の人差し指を咥えた。舌でちろりと舐めてみれば、たくあんの味がする。
「キラウㇱさんっ。」
顔の直ぐ横で自身の指をしゃぶるキラウㇱに、律は小さく肩を震わせた。その様子に、キラウㇱの劣情は昂ってゆく。キラウㇱは暫く#NAME2##の指を味わうと、唇を離した。口付けをした時のような音を立てる。
「律。」
キラウㇱは甘く切な気な声で律の名を呼ぶと、彼女を自分に向き直らせる。見上げてくる律の頬はやや上気し、その瞳は微かに潤んでいる。初めて向けられたその顔にキラウㇱはぞくりとした。キラウㇱはそっと律の腰を引き寄せる。
「俺を男として見てくれ。」
キラウㇱは律の腰を引き寄せているのとは反対の手で、彼女の頬を包み込んだ。親指で撫でるようにしてやれば、律は更に頬を染める。
「・・・言われなくても。」
「は?」
恥ずかしそうに目を逸らす律に呆然とするが、すぐに意味を理解したキラウㇱは目を細めた。
「そうか、じゃあ遠慮は要らないな。」
頬に添えていた手を下にずらすと、キラウㇱは律の顎を持ち上げる。
「あっ。」
「ん?」
小さく声を漏らした律に、キラウㇱは微笑み、わざとらしく首を傾げて見せる。そのまま彼女に顔を近づけると、唇を重ね合わせた。その柔らかい感触に、律の鼓動は速くなっていく。ゆっくりと、何度か食む様に彼女の唇を味わうと、キラウㇱは名残惜しそうに顔を離した。唇が離れる瞬間、ちゅ、と小さく音を立てる。
「真っ赤だな。」
にやりと笑うキラウㇱは顔を紅くする律を抱き締めると、「かわいい」と呟いた。
「キラウㇱさん、狡い・・・。」
「大人だからな。」
胸元に手を置き顔を押し付けてくる律に、キラウㇱはその後頭部を撫でてやる。
二人は人が来るまでと、もう一度唇を重ね合わせた。
「若いねぇ。」
たまたま現場に遭遇してしまい隠れていた門倉が、傍に立てかけてあった箒を倒してしまうまで、あと数秒。