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綾部さん


「ねえ聞いた?!綾部さん学校来たらしいよ!しかもあの滝と!」
朝のホームルーム前の教室でリーダー格の女子生徒が興奮気味に話しかけてくる。彼女の表情はとても嬉しげで、それはまるでオモチャを与えられた子供のようだと言っても過言では無かった。
「綾部さん来たんだ」
余り言葉に感情を入れずに返事をするとそれが気に入らなかったのかムッとした表情になり、
「よく来れるよね、男に体売ってるくせにさあ」
と捨て台詞の様に吐き捨て他の子に話しかけに行ってしまった。
正直言って、綾部さんが体を売ってようが無かろうが私にはどうだっていい。
ただ少しだけ、このクラスで生きていく為に周りに合わせて興味があるように装っただけなのに彼女は私が同じ部類の人間だと勘違いして話しかけてきたのだ。全く迷惑な話である。
それより今月号のサバゲー雑誌に載っている米国製最新モデルのエアガンの方が私には興味があるのだ。
こんな息がしづらい場所より、早く私の大好きな世界に入り浸りたい。
そうこう考えているうちに担任がやって来る。
「田村!号令!」
偉そうに私に指示を出す。
「起立!」
私の号令に従い一斉に2組の生徒が立つ。
「令!」
自分の声でこのクラスが始まることに嫌気がさす。
田村三木は未だこのクラスに馴染めていなかった。
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