ファミリー・コンプレックス
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「勇作兄さま!」
最近何かと絡んでくる異母弟 花沢勇作に連れ出された
昼間の通りを歩いていると正面から品の良さそうな若い女の声が届き、俺は視線を上げた
「ルナ!」
前を歩く異母弟の視線の先には、薄い若草色の洋装(ワンピース)の若い女
小走りにこちらへ向かってきているのが視界に入った
若い女、と言っても12.3ほどのまだまだ幼い少女だったが・・・
まぁ、そんな事はないどうでもいい
女は女だろうと、誰に言い訳するわけでもない思考を巡らせながらぼんやりと近づいてくる女を眺めていた
こちらの面倒くさいという空気は全く読めないのか、眼の前の義弟は後ろ姿でも嬉しそうな空気を纏っている
こちらに犇々と伝わるほどに歓迎ムードで両手を広げていた
ここは師団へ続くメインの通り
他の脇道よりも格段に整備させれいる
とはいえ、轍の乱立する土道だ
それを、まるでふかふかの絨毯の上でも駆けてくるようにふんわりと優雅な雰囲気を溢れ出しながらこちらへ近づいてくる少女
無意識に苦手意識が働き、キュッと目を細めた
「ルナ!畦道で走っては危ない!こんなところで転んだら玉の肌が傷だらけになってしまうぞ!」
異母弟はまるで過保護な親子にでもなったかのように駆け寄ってくる少女を心配して大声を上げた
そして、2、3歩前に出て走ってくる少女を両手で受け止める
心底心配しているといった口調で「歩け」だの「お転婆」「ケガ」と言った単語を使って少女を諭している
畦道・・・・ボンボンは東京の舗装された道しか歩いたことないってか
この界隈では1番整備された道を“畦道”と称した、憎き異母弟
俺はそれを後ろから冷めた目で見上げつつ、またどろりと湧き上がってきた黒い感情を人知れず飲み込んだ
本当は、勇作のやることなすこと全てが気に入らない
できれば関わりたくない
だが、如何せん、あちらが目ざとくこちらに接触してくるものだから無下にはできない
義弟とはいえ、階級が絶対の組織の中で、あちらは将校様だ
何度も何度も「規律が乱れる」という言葉を使って拒絶して来たが、全く聞く耳を持たない
それがこちらの神経を逆撫でしていることも気が付かないお気楽な思考も・・・全てが腹立たしい
この少女もきっと俺を苛つかせるお気楽な女なのだろうと思うと、鶴見中尉直々の任務ではあるが、既に嫌々な表情が出てしまいそうだった
「こちらの方が私達の兄様の尾形百之助兄様だ」
数歩先で話し込んでいた異母弟と少女が勇作の言葉の後2人してこっちに振り返った
自身の名を呼ばれるまで明後日の方向を眺めていた俺は、小さくため息を付きながら、異母弟の方へ視線を持っていった
ドロリと溢れてしまいそうな真っ黒の感情はきっちりと蓋をして
「はじめまして、花沢ルナと申します!百之助お兄さま!ようやっとお会いすることができました!」
若く明るい女の声が俺に向かってきた
勇作から一歩、横へズレて、尾形の真正面に立った少女
礼儀を知らない俺でも美しいと感じる所作で頭を下げる
よく手入れされ、丁寧に梳かして綺麗に結われた黒く艷やかな長い髪
野良仕事を知らない白く細い手
掴んだら折れてしまうのではないか
風で飛んでいってしまいそうな薄っぺらい身体
異母弟の勇作と系統は異なるものの、目鼻立ちのはっきりとした美しい顔立ち
垂れ目気味の大きな黒目がキラキラと眩しいくらいに俺を見ている
小ぶりで形の良い鼻は嫌味のない程度に凛と高いく、小鳥のような小さな唇は口角を上品にあげてこちらを向いて終始微笑んでいる女
身体つきはまだまだまな板だが、これから成長著しいのだろうと、少しいやらしい目で上から下までさっと眺めてみた
この辺りはまだほとんど着物の女ばかりだ
そんなここらの人間に、女の洋装は刺激が強過ぎるらしく、近くを通る野郎共は義妹をチラチラと下卑た視線を送る輩がおり、不愉快だった
新芽のような瑞々しい色で丁寧に染め上げられた上質な布で仕立てられた洋装
発展途上といえど、女の美味しそうな青い身体を隠すには少し頼りない気がする
胸ぐらを掴んで左右に引っ張ったら真っ裸になるんじゃないか?
豊かさをこれ見よがしにひけらかしている胸元の金細工も太陽の光を反射してキラキラと俺の目を刺激して苛つかせた
とりあえずは頭が祝福でいっぱいの異母弟と同じ、綺麗な物だけを与えられて育ったであろう良家の令嬢、というのが第一印象だった
「・・・・勇作殿に妹君がいらっしゃったとは存じ上げたせんでした・・・・余り似ていらっしゃらないですね」
嫌味のつもりだ
鶴見中尉に呼び出され、東京から勇作の妹・・・・と言っても母方の養女が、勇作を訪ねてくる旨を聞かされていた
お気楽な異母弟が義妹に引き合わせてくる可能性も視野に入れておけと鶴見中尉に言われて月島軍曹に渡された資料を眺めておいて正解だった
異母弟の勇作とは父で血が繋がっている尾形だが、目の前の少女は勇作の母の妹の忘れ形見
尾形とは血は繋がっていない
鶴見中尉がいつかこの女を利用するために何かしら指示をだす可能性も考慮しなければならない
好意的に接して置かなければと思っていた
しかし自分はどうにもひねくれた性格をしているようで、初対面で場の空気を派手にぶち壊すような物言いをしてしまった
舌打ちしそうになるのをなんとか堪え、相手の出方を確認して次こそは好意的に対応しなければと小さく拳を握る
『まぁ!勇作兄さま?百之助お兄さまは勇作兄さまの仰ってた通り、鋭いお方ですのね!』
「は?」
俺の言葉、嫌味に目を輝かせて羨望の眼差しを向ける義妹に思わずまた、低い声が出た
きっと声に準じて顔も歪めていることだろう
婦女子の怖がるであろう表情を浮かべてしまっていることは容易に想像がつく
己の犯した度重なる失態に、内心では舌打ちを連発するほど腹立たしい
それもこれもこの二人が俺の想像を超えるイカれた思考をしているせいだ
雰囲気だけでなく頭の中までお花畑な幸せ女は異母弟の腕に優雅に手を添わせて嬉しそうにしている
「そうだろう!兄様は私の至らぬところを的確に指摘してくださるし、ものを知らぬ私に色々教えてくださるのだ!射撃の腕は師団1!素敵な兄様だろう!」
そう言って、こちらも眩しくなるくらいキラキラとした羨望の眼差しを向けてくる異母弟
コイツも同類だった
異母弟と義妹を繋ぐ彼等の母方の血筋は警戒心や猜疑心というものを持ち合わせていない種族なのだろうか
師団内で、これまでに異母弟に行った様々な嫌がらせや嫌味は全く通じていなかったらしい
これまでの行為全てを遊びや悪戯適度に受け止め、飛躍した肯定的思考によって歪められた兄弟の戯れ話を異母弟は義妹に鼻息荒く話している
成績優秀な新米将校と言う己の事実には物凄く謙遜して、とにかく俺を立てて嬉しそうに語っていた
『勇作兄様も頑張っていらっしゃいます!だからこそこうして百之介お兄さまとお会いすることが出来たのです!あ、・・・百之介お兄さま、とお呼びさせていただいてよろしいですか?私、勇作兄様からお手紙でたくさん百之介お兄さまのお話をお伺いしておりましたの!お会いできてとても嬉しいです!!』
そう言いながらキラキラと眩しいくらいに輝かせた目を向けて義妹が近寄ってきた
勇作よりもこちらに2歩ほど前に進み出て来て、小柄な義妹の手も届きそうな近距離まで来た
「・・・・それはどーも」
後ろに下がりたくなる気持ちを抑えて、なんとか答えたが、無意識に手が義妹の前に出ていたところを見るに俺は義妹を拒絶している
仲良くは慣れそうにないのは自分のせいではなく適切な距離を保つことのできないコイツらのせいだと強く主張したい
きっと義妹も勇作と同様に祝福でいっぱいの真綿の中で育ったのだろう
そうでなければこんなに眩しいほど純真に育つはずがない
そうでなければならないのだ
歪んだところで真っ直ぐ育つわけがない
そうでなくてはならない
俺の中にまた、どろり、どろり、と黒く淀んだモノが溜まっていくのを感じた
異母弟と関わるようになって約半年・・・
もう、この感情が溢れてしまいそうだった
最近何かと絡んでくる異母弟 花沢勇作に連れ出された
昼間の通りを歩いていると正面から品の良さそうな若い女の声が届き、俺は視線を上げた
「ルナ!」
前を歩く異母弟の視線の先には、薄い若草色の洋装(ワンピース)の若い女
小走りにこちらへ向かってきているのが視界に入った
若い女、と言っても12.3ほどのまだまだ幼い少女だったが・・・
まぁ、そんな事はないどうでもいい
女は女だろうと、誰に言い訳するわけでもない思考を巡らせながらぼんやりと近づいてくる女を眺めていた
こちらの面倒くさいという空気は全く読めないのか、眼の前の義弟は後ろ姿でも嬉しそうな空気を纏っている
こちらに犇々と伝わるほどに歓迎ムードで両手を広げていた
ここは師団へ続くメインの通り
他の脇道よりも格段に整備させれいる
とはいえ、轍の乱立する土道だ
それを、まるでふかふかの絨毯の上でも駆けてくるようにふんわりと優雅な雰囲気を溢れ出しながらこちらへ近づいてくる少女
無意識に苦手意識が働き、キュッと目を細めた
「ルナ!畦道で走っては危ない!こんなところで転んだら玉の肌が傷だらけになってしまうぞ!」
異母弟はまるで過保護な親子にでもなったかのように駆け寄ってくる少女を心配して大声を上げた
そして、2、3歩前に出て走ってくる少女を両手で受け止める
心底心配しているといった口調で「歩け」だの「お転婆」「ケガ」と言った単語を使って少女を諭している
畦道・・・・ボンボンは東京の舗装された道しか歩いたことないってか
この界隈では1番整備された道を“畦道”と称した、憎き異母弟
俺はそれを後ろから冷めた目で見上げつつ、またどろりと湧き上がってきた黒い感情を人知れず飲み込んだ
本当は、勇作のやることなすこと全てが気に入らない
できれば関わりたくない
だが、如何せん、あちらが目ざとくこちらに接触してくるものだから無下にはできない
義弟とはいえ、階級が絶対の組織の中で、あちらは将校様だ
何度も何度も「規律が乱れる」という言葉を使って拒絶して来たが、全く聞く耳を持たない
それがこちらの神経を逆撫でしていることも気が付かないお気楽な思考も・・・全てが腹立たしい
この少女もきっと俺を苛つかせるお気楽な女なのだろうと思うと、鶴見中尉直々の任務ではあるが、既に嫌々な表情が出てしまいそうだった
「こちらの方が私達の兄様の尾形百之助兄様だ」
数歩先で話し込んでいた異母弟と少女が勇作の言葉の後2人してこっちに振り返った
自身の名を呼ばれるまで明後日の方向を眺めていた俺は、小さくため息を付きながら、異母弟の方へ視線を持っていった
ドロリと溢れてしまいそうな真っ黒の感情はきっちりと蓋をして
「はじめまして、花沢ルナと申します!百之助お兄さま!ようやっとお会いすることができました!」
若く明るい女の声が俺に向かってきた
勇作から一歩、横へズレて、尾形の真正面に立った少女
礼儀を知らない俺でも美しいと感じる所作で頭を下げる
よく手入れされ、丁寧に梳かして綺麗に結われた黒く艷やかな長い髪
野良仕事を知らない白く細い手
掴んだら折れてしまうのではないか
風で飛んでいってしまいそうな薄っぺらい身体
異母弟の勇作と系統は異なるものの、目鼻立ちのはっきりとした美しい顔立ち
垂れ目気味の大きな黒目がキラキラと眩しいくらいに俺を見ている
小ぶりで形の良い鼻は嫌味のない程度に凛と高いく、小鳥のような小さな唇は口角を上品にあげてこちらを向いて終始微笑んでいる女
身体つきはまだまだまな板だが、これから成長著しいのだろうと、少しいやらしい目で上から下までさっと眺めてみた
この辺りはまだほとんど着物の女ばかりだ
そんなここらの人間に、女の洋装は刺激が強過ぎるらしく、近くを通る野郎共は義妹をチラチラと下卑た視線を送る輩がおり、不愉快だった
新芽のような瑞々しい色で丁寧に染め上げられた上質な布で仕立てられた洋装
発展途上といえど、女の美味しそうな青い身体を隠すには少し頼りない気がする
胸ぐらを掴んで左右に引っ張ったら真っ裸になるんじゃないか?
豊かさをこれ見よがしにひけらかしている胸元の金細工も太陽の光を反射してキラキラと俺の目を刺激して苛つかせた
とりあえずは頭が祝福でいっぱいの異母弟と同じ、綺麗な物だけを与えられて育ったであろう良家の令嬢、というのが第一印象だった
「・・・・勇作殿に妹君がいらっしゃったとは存じ上げたせんでした・・・・余り似ていらっしゃらないですね」
嫌味のつもりだ
鶴見中尉に呼び出され、東京から勇作の妹・・・・と言っても母方の養女が、勇作を訪ねてくる旨を聞かされていた
お気楽な異母弟が義妹に引き合わせてくる可能性も視野に入れておけと鶴見中尉に言われて月島軍曹に渡された資料を眺めておいて正解だった
異母弟の勇作とは父で血が繋がっている尾形だが、目の前の少女は勇作の母の妹の忘れ形見
尾形とは血は繋がっていない
鶴見中尉がいつかこの女を利用するために何かしら指示をだす可能性も考慮しなければならない
好意的に接して置かなければと思っていた
しかし自分はどうにもひねくれた性格をしているようで、初対面で場の空気を派手にぶち壊すような物言いをしてしまった
舌打ちしそうになるのをなんとか堪え、相手の出方を確認して次こそは好意的に対応しなければと小さく拳を握る
『まぁ!勇作兄さま?百之助お兄さまは勇作兄さまの仰ってた通り、鋭いお方ですのね!』
「は?」
俺の言葉、嫌味に目を輝かせて羨望の眼差しを向ける義妹に思わずまた、低い声が出た
きっと声に準じて顔も歪めていることだろう
婦女子の怖がるであろう表情を浮かべてしまっていることは容易に想像がつく
己の犯した度重なる失態に、内心では舌打ちを連発するほど腹立たしい
それもこれもこの二人が俺の想像を超えるイカれた思考をしているせいだ
雰囲気だけでなく頭の中までお花畑な幸せ女は異母弟の腕に優雅に手を添わせて嬉しそうにしている
「そうだろう!兄様は私の至らぬところを的確に指摘してくださるし、ものを知らぬ私に色々教えてくださるのだ!射撃の腕は師団1!素敵な兄様だろう!」
そう言って、こちらも眩しくなるくらいキラキラとした羨望の眼差しを向けてくる異母弟
コイツも同類だった
異母弟と義妹を繋ぐ彼等の母方の血筋は警戒心や猜疑心というものを持ち合わせていない種族なのだろうか
師団内で、これまでに異母弟に行った様々な嫌がらせや嫌味は全く通じていなかったらしい
これまでの行為全てを遊びや悪戯適度に受け止め、飛躍した肯定的思考によって歪められた兄弟の戯れ話を異母弟は義妹に鼻息荒く話している
成績優秀な新米将校と言う己の事実には物凄く謙遜して、とにかく俺を立てて嬉しそうに語っていた
『勇作兄様も頑張っていらっしゃいます!だからこそこうして百之介お兄さまとお会いすることが出来たのです!あ、・・・百之介お兄さま、とお呼びさせていただいてよろしいですか?私、勇作兄様からお手紙でたくさん百之介お兄さまのお話をお伺いしておりましたの!お会いできてとても嬉しいです!!』
そう言いながらキラキラと眩しいくらいに輝かせた目を向けて義妹が近寄ってきた
勇作よりもこちらに2歩ほど前に進み出て来て、小柄な義妹の手も届きそうな近距離まで来た
「・・・・それはどーも」
後ろに下がりたくなる気持ちを抑えて、なんとか答えたが、無意識に手が義妹の前に出ていたところを見るに俺は義妹を拒絶している
仲良くは慣れそうにないのは自分のせいではなく適切な距離を保つことのできないコイツらのせいだと強く主張したい
きっと義妹も勇作と同様に祝福でいっぱいの真綿の中で育ったのだろう
そうでなければこんなに眩しいほど純真に育つはずがない
そうでなければならないのだ
歪んだところで真っ直ぐ育つわけがない
そうでなくてはならない
俺の中にまた、どろり、どろり、と黒く淀んだモノが溜まっていくのを感じた
異母弟と関わるようになって約半年・・・
もう、この感情が溢れてしまいそうだった