2日目

「実、星成、おっはよ-」
こちらは自然の中での朝。
明里は朝日の差す中、いつも家にいる時と同じように早起きした。
う-ん。やっぱり朝早いのはすがすがしいな。
明里はご機嫌だ。
もう顔も洗ってきたし、制服に着替えている。
準備を整えた明里は、まだ眠っているテントの中の実と星成に声をかけたのだった。
今明里は、ちょうど3人のテントの真ん中に立っている。
明里のその元気な声を聞いて、実はすぐに目を覚ました。
そしてまだ眠い目をして、テントの入り口を開けた。
「あ、先輩。おはようございます」
明里は実に満足そうにうなずいて、今度は星成のテントを見た。
しかし、起きた気配はない。
「あれ?星成、起きない」
明里が不思議そうに言うのを聞いて、実はばっちり目が覚めた。
いけない!明里先輩に見つかる前に何とかしないと。
「先輩、ぼくが見てきますよ」
実はそう慌てて言うと、テントの中で急いで制服に着替えた。
それから星成のテントへと走った。
実がテントのふたを開けてみると、予想通り星成はぐっすり寝ている。
実は急いで起こしにかかった。
「星成、朝だぞ-」
星成はやっと目をぼんやり開けて聞いた。
「今、何時?」
そう尋ねられて、実は腕時計を見た。
中学生なので、毎日学校に腕時計をしてきている。
おじいさんに送られてきた時も付けていたので、今ここにあるのだった。
えっ!?6時15分!明里先輩、起きるの早い。
心の中でショックを受けながらも、明里に抗議するのではなく、星成の方に言う。
やはり明里には逆らってはいけないという気持ちが、どこかにあるのかもしれない。
「まだ6時15分だったけど、先輩もう起きてるし、頑張って起きようぜ」
でも星成はうとうとしながら言う。
「まだ眠い…」
「なっ!昼寝できる時間作ってやるから」
実のそんな思いやりのある説得に、星成はやっとうなずいた。
「わかった。起きる」
準備を始めた星成を見て、実はほっと一息をついた。
星成が着替えている間、実はテントのすぐ隣で待っていた。
ふ-。星成って睡眠時間が長いんだよな。
昨日は虫探しの後、昼寝できたから良かったけど(オレも寝た)、これからも寝る時間作ってやらないとな。
学校でも実がクラスメ―トと校庭で遊んでいる間、星成は自分の机で寝ている。
明里先輩には秘密にしておこう。星成の名誉に関わるからな。
それに眠い時の星成って、いつもの真面目な感じと違うから、何て思われるかわからないし。
クラスの女子は、そんな星成がかわいいとか言ってるけど、明里先輩もよく思うとは限らない。
実は待っている間に、そう決意していた。
「星成、起きた?」
「あ、明里先輩!はい、起きましたよ」
実は突然現れた明里にびっくりした。
そしてすぐに星成がテントから出てきた。
「明里先輩、おはようございます」
星成がすっかりいつも通りだったので、実はほっとした。
「うん、おはよう」
そうあいさつをしてから、明里は星成と実の顔を交互に見て言った。
「さあ、2人とも川で顔を洗ってくるといいよ」
「はい!」
2人ともいい返事をして、川に向かって走った。
川へと走りながら、星成が実に感謝した。
「実、起こしてくれてありがとうな」
すると実は明るく笑って言った。
「まかせろよ!毎日だって起こしてやるからな」
そう笑い合って走って行く2人は、やっぱり親友という感じだった。

朝食は、昨日の残りのカレ-を食べた。
「ぼくが調整しますんで、待っていて下さいね」
そう言って実が、一晩経って少しごてごてしたカレ-に水を足したりして、全く昨日の夜食べたような状態に戻した。
「本当に実は頼りになるなあ」
星成はさっきのことも含めて、しみじみと言った。
「すっかり元通り!実、ありがとう」
明里も明るく感謝する。
実はそんな2人ににこにこ笑ってこたえる。
3人は、おかげでカレ-をおいしくいただいた。
食べ終わると、カレ-の鍋など汚れた物は、川に洗いに行った。
昨日明里がおじいさんに電話した時に、川の水は汚れを浄化するように描いたので、洗っても大丈夫と許可をもらったからだった。
食器を洗って、コンロを吹いて、カレ-作りに使ったものを片付ける。
その後は3人で協力してテントをたたんで、後片付けが終わってきれいになった。
するとその用具がぱっと消えてしまった。
「わっ!」
「消えちゃった…」
実と明里が驚きの声をあげて、星成は少し考えてから言った。
「おじいさんは、いつも僕達を見てるんですね」
その片付け終わった直後に消えたタイミングの良さから、そう思ったのだった。
とにかく荷物にならなかったおかげで、3人が持ち運びするのは今日も昨日と同じ。
スケッチブックとリュックサックだけとなった。
時刻はもう9時。
起きた頃よりも強く太陽が輝いている。
「さあ、今日もがんばろ-!」
明里がそう掛け声をかけて、3人は張り切って出発した。
不思議なことに、昨日あれだけ動いたというのに、3人とも体はどこも痛くなっていなかった。
それは絵の中にいるということで現実とは違うということなのか、おじいさんの力によって疲れが出ないようになっているからなんだろうな、と星成は推理した。
2/5ページ
スキ