ミラクルな贈り物を、あなたに

そんなクリスマスの夜、ベッドにユエくん人形を寝かせる場所を作った。
熊のノワールのぬいぐるみは、その分少し移動させる。
そして置く前に、今日連れ回したユエくん人形を見つめる。
それから今日のユエの様子を思い出す。
「今日もかっこよかったなあ……」
そうつぶやいてから、本人にはできない分、人形をぎゅっと抱きしめる。……あったかい。
恋する相手の人形と一緒だと、これまでよりも幸せな毎日になりそうだな……。
満足すると、ユエくん人形を隣に置いて布団をかける。
そして私はそろそろ眠ることにした。


夢の中で何度か会っている、金色のフクロウがまた現れた。
そのフクロウが話してくれたこととは───。
私達の部屋に、守護聖くん人形を置いたのは自分だ──ということ。
夜に寂しがっている守護聖の心も、少しでも慰められれば……と思ったということ。
特にノアには早く力を授けてしまったことに対するお詫びも込めて、多くした──
ということ。
そしてこのことで不安になった守護聖もいるので、私に伝えておこうと考えた──ということが語られた。

そこで私は次の日に、何度か夢で会っている不思議なフクロウ──多分、宇宙意思──が
人形を置いておいたらしいことを話す。
するとみんな驚きはしたものの、疑いはしなかった。
「アンジュ様にはたまに、私とタイラーが話していることが伝わっていることがあります。
まだ候補とは言え、宇宙意思と共鳴しているのでは……と考えていました。
ですので、きっと本当のことなのでしょう」
そう度々夢の話をしていたサイラスとレイナは、すぐに納得してくれる。
宇宙意思と話せるなら、聞きたいことがある!という守護聖も多かった。
でも私もめったに会わないし、もし機会があったら……ということで、その質問内容は
聞いておいた。
──ともかくこれはそういうプレゼントだと、みんなが安心してくれたから良かった。

それから少し経って、カナタとゼノは、こんな話をしていたそうです。
「オレ、ゼノの人形をベッドに置くようになってから、寂しい夢を見る回数が
減ったんだよね。今のオレにも新しい友達がいる…って、思えるからかな…」
そんなカナタの言葉に、ゼノも嬉しそうに答える。
「カナタも!?俺もカナタとノア様の人形を置いてるんだけど…。
嫌な夢を見ることがあっても人形を見たら、すぐに落ち着けるようになったんだよね。
カナタと楽しく遊んだことを、思い出したりしてさ。
──それからノア様の安らぎの効果か、前よりも良く眠れるようになったんだ。
俺が作った物でもあるけど、プレゼントしてもらえて、本当に良かったな」


あれからノアの執務室に行くと、いつも3人の人形が仲良く並んでいる。
でも出退勤時に、ノアがその人形を持って歩いている姿が、時々目撃されているそうです。

【とある日の、執務室からの退勤時】
(うーん。今日もシュリと一緒に掃除したけど……、やっぱり結構いい人なのかも……。)
そう思ったノアは、シュリくん人形にこう話しかける。
「今日は君も一緒に帰る?」

【またとある日の退勤時】
「今日は『僕』も、カナタ(くん人形)やゼノ(くん人形)と一緒に過ごす?」
そうご機嫌な様子で自分の人形を手に取ったノアは、「あっ」と気付いた顔になる。
そしてシュリくんとの隙間を、ユエくん人形を動かすことで埋めた。
「うん。……これで今晩、君たちも寂しくないよね…」

【また、こんな日も──】
(──今日はいつもよりも寂しいな……。ユエ……)
【そんな次の日の出勤時】
ノアがユエくん人形を持って、聖殿に向かっていると──。
「よお、ノア。おはよう。ん?俺の人形か?」
そう不意に後ろから話しかけられたノアは慌てる。
「ユエ!?これは……、この子も時々はベッドで寝たいでしょ。
この子はユエと違って、うるさくないし……」
ユエはノアが持っている人形の顔を見て、こうこたえる。
「…ふーん、そうか。…その人形、ノアに可愛がってもらって、うれしそうにしてるな。
大事にしてくれて、ありがとうな」
そう人形のモデルから笑顔で返ってきて、ノアは頷いた。
「…うん」

そしてクリスマスから10日ほど経った頃、ゼノ達が追加で作ってくれた、
レイナちゃん人形を受け取った。
「お待たせ!レイナの人形が出来上がったよ。はい!」
そうゼノが私の部屋まで持ってきてくれた。
「わあ。ありがとう!レイナちゃんのも可愛いね」
そう人形を受け取ると、それを持って早速、レイナの部屋を訪ねた。
「今レイナちゃんの人形をもらったから、持ってきてみたよ」
「かわいいわね。私もさっき、あなたの人形を受け取ったわよ。見て」
そうレイナも、私の前に持ってきてくれる。
私の人形も可愛くできていて嬉しい。
「せっかくだから、一緒に写真を撮りたいね」
そこで2つの女王候補ちゃん人形を並べてみる。いい!
その後も本人が人形を抱いてみたり…。
レイナちゃんとミランくんの人形同士とか…。
ユエくん人形も持ってきて、私と一緒に撮ってもらったりとか…。
2人でいろんな写真を撮って盛り上がった。
写真で持ってるのもいい!よね。

そんな夜レイナちゃん人形の置き場所を考える。
人形とはいえ、ユエくんとレイナちゃんが隣だと妬けてしまうので、私の右側にレイナちゃん。
左側は今まで通り、ユエくん人形とノワールにした。
これでどちら向きで寝ても、大好きな人と一緒。
おかげでますますうれしい気持ちで、眠れるようになった。

その翌日にユエが遊びに来てくれた。
そのまま部屋で過ごすことにして、ユエくん人形も持ってくる。
近くに置くと、ユエは少し驚いた顔になる。
「…なんか前に見た時よりも、熱い眼差しで見られてる気がするな…。なんでだ?
俺の人形だからなのか、俺が凄い存在だってことが、わかってきたからなのか……」
そうユエくん人形を見つめながら、悩み始める。
そのユエの言葉に、私は思い当たることがある。
そういえば私は夜眠る前に、ユエくん人形を抱きながら、いろいろつぶやいてるな……。
ユエからのこういう言葉がうれしかった…とか、こういうところがステキだった…とか。それが原因?
恥ずかしくて、本人には言えないけど……。
私達にはわからないけれど、実はユエくん人形はこんなことを思っていた。
『おれのモデルの人だ!カッコイイらしいから、うれしいなー。よく見とこうー』
「…うーん。考えてもわからねえし、まあ、いっか。
喜ばれてるなら問題ねえし」
それからユエは私に向き直って、こう教えてくれた。
「──俺の方も、アンジュの人形を作ってもらった。
さすがに一緒に寝たりはしてねえけど、私室において可愛がってるぜ。
昨日は茶柱を見せてやったんだ」
そう聞いて、私はテンションが上がった。
「本当!?嬉しい!」
前に私を気に入ってるって、言ってもらったことはあったけど……。
お互いの人形を持ってるって、なんだか両想いみたいだし……。
それに私の人形に、茶柱の話をしてるユエを想像すると、いい!
その様子を私も見せてほしいくらい…。
「…お前、かわいいな。そんなに嬉しそうにするなんて、素直すぎるだろ」
そうユエに言われたけれど、私は嬉しくて仕方なかった。
ユエくん人形もそんな私達の様子を見て、喜んでいた──みたい。

そうサイラスが企画して、ゼノとフェリクス(そして宇宙意思)の想いが込もったミラクル人形は、飛空都市中の人を幸せな気持ちにしてくれた。
そしてこれから末永く、私達を支えてくれるんだろう──。

またそれから少し経って──。
神鳥のジュリアス様から、ユエ宛てのメールに、こんな事も書かれていたそうです。
『サイラスから、お前たちの人形を受け取ったぞ。
令梟には、このようなものがあるのだな。
同じ力を持つ守護聖に渡したら、皆喜んでいるぞ。
神鳥にも、このような守護聖の人形がある。
今度そちらに行く際に、持って行こう』



Fin


2024年1月制作


[おまけ]
【タイラーくん人形】
「ジャン!同じ王立研究院の主任のよしみで、タイラーの人形も作っていただきました。
なんと!一点物です」
そうサイラスがいうように、研究院のデスクに1つ、タイラーくん人形が置かれている。
「えっ!?何で俺のまで?」
「主任の人形可愛いですね!」
タイラー本人は戸惑うが、研究員仲間には好評だった。
こうして神鳥、令梟の王立研究院には、主任の人形が飾られている……。


【本編の守護聖くん人形 お渡し会 当番表】
9:00~45 ロレンツォ&カナタ
~10:30 ユエ&フェリクス(茶飲み友達)
~11:15 ヴァージル&ミラン(親密度が高い)
~12:00 ノア&シュリ(掃除仲間)
※ゼノは準備を1番頑張ったので、当日は当番なし

出来るだけ、仲の良い設定がある組み合わせにしました。


[あとがき]
ここまで、この「ミラクルな贈り物を、あなたに」を読んでいただいて、ありがとうございました。
ミラクル守護聖くん人形愛と、働く守護聖様が好きなので、こういう物語になりました。
二次創作の小説自体初めて書いたので、ちゃんと本物のキャラや設定に寄せられるのかが不安でした。

アンミナは大人組以外の恋愛EDは見ていて、(最良はユエさん、ノアくん、カナタくん、ミランさん)公式サイトとTwitterは読んでから挑みました。
仲を取り持ったり、見たかった場面をたくさん入れられて、書いていて、とても楽しかったです。レイナさんがモテている図は、イベントでも見られなかったし…。
神鳥と令梟の守護聖様がお互いの人形を受け取って、どんな反応をしたのかは、あなたの心の中で。
タイラーくん、ザックさん、ダイアナさんも推し守護聖様が公開されていたら、登場させたかったです。
出来るだけそれぞれの良いところをピックアップして、大勢がハッピーになる物語に出来たら…と考えました。

主人公以外の私室での様子はプライバシーに配慮して、あえて描写しませんでしたが…。
ノアくんはカナタくん人形、ゼノくん人形と一緒に映画を観たりとか、そばに置いている時間が長そう。
ユエさんは深夜などで他の人のところに行きにくいけど話したい時とかに、主人公の人形を相手にしてそう。3つ子の卵とか、珍しいのも見せてもらってるんだ。
部屋の窓から、星空を見せたりもしてくれる。いいな。
自分で書いたのに、絵的に見たい。

オールキャラの物語ですが、フェリクス様イベントの「二月、冬の惑星で」に参加させていただきました。どうもありがとうございました。

今後何の作品を元にするかは決めていませんが、また二次創作も挑戦してみたいですね。
基本的にはオリジナル小説を書いているので、そちらをメインで続けます。
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