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【Stage.1】

「う~ん、明日から春休みかぁ~。
 宿題もほとんどないし……といってもオレ、やんないケド。
 ま、とにかく。
 あの、お節介やきの委員長(ウイン)に会わなくてすむな~」

 嬉しそうに通学路を帰る1人の少年。
 ヒヤシンスブルーの長めの髪を一つにくくり、意志の強そうなラピスラズリの瞳。
 年齢は12歳で、見た目は実年齢よりも大人びていました。
 どうやら、彼の学校は明日から春休みに入るようです。

「な~にしようかなぁ……。やっぱ、ゲームかな~。
 まだクリアしてないのも、買ったばっかのもあるしなぁ」

 そう少年がつぶやき、笑った時、

 ぼすっ!

 背後から体操袋が飛んできて、少年の後ろ頭に大命中しました。

「レイズくん、今の笑顔はもしかして……。
 春休み中、ずっとゲームをしようなんて考えていたのではないでしょうね?」

「げげっ、委員長(汗) ふ、不意打ちは卑怯だぞ!
 しかも、オレの顔見ずになんでオレが笑ったなんて解るんだ、お前……?」

 慌てて振り向くと、そこには少年……レイズの苦手な
 委員長がニコニコ笑顔で立っていました。
 体操袋を拾いながら、

「あなたの行動、思考パターンくらい見なくても解ります。
 休みといえばゲームと結びつける。それがレイズくんです。
 しかし、それではいけません。
 ちゃんと次の学年に向けての予習と今までの復習をしなくては」

「……お節介やきめ……」

「レイズくん、今、なんていいましたか?
 ちゃんと、聞こえているんですよ?
 いいですね、ちゃんと予習復習するんですよ」

 再び、体操袋で攻撃されたレイズ。
 委員長はそういうと、次の角を右に行ってしまいました。
 その方向が彼の家なのでした。

   ◇◆◇

「うおっし。やっぱゲームはいいなぁ……」

 家に帰ると早速、レイズはゲームをはじめました。
 まだ攻略中のゲームです。
 しばらくそのゲームをして、キリがいい所でレイズはゲームを止めます。
 そして、新しく買ってまだパッケージを開けてないゲームをすることにしました。

「んッ?! これ、パッケージのと違うソフトだ。
 ま、いっか。やるだけやってみて、返品するのもいいかな」

 ソフトはパッケージと全く違うものでした。
 その名前からして違います。
 しかし、彼、レイズはあまりそういうことに関して怒らないタイプでした。
 むしろ、そのハプニングを楽しむ性格なのです。
 レイズはそのソフトを本体に入れ、電源をONにします。
 やがて、真っ黒な画面に文字が浮かび上がりました。


   ≪貴方は大切なものがありますか?
     ココロから大切だと思うものがありますか?
      守りたいものがありますか?
       夢はありますか……

    もし…それがないのなら……
     もしも、それをもっていないのならば――
      ぼくと一緒に探しに行きましょう…
       この世界で……

    旅立つ前に貴方の名前をぼくに教えてください――≫


 そして名前入力画面になります。

「オレの名前ねぇ……レイズっと」

 いつもなら、自分の名前をゲームで使わないレイズなのですが……。
 しかしなぜだか今回は、自分の名前を入れて決定してしまいました。
 しまったと思ったレイズでしたが、
 またやり直せばいいかなとそのまま続けました。


   ≪貴方は、レイズさん……
   ぼくの名前はカラ。
   これから旅する世界【夢幻】を案内するガイド役の妖精です≫


 画面に変化があり、背中に薄透明な羽根の生えた妖精が現れました。
 ペコリと画面の妖精は頭を下げます。そしてにっこり微笑みました。
 なんだか、天然(ボケ)っぽい雰囲気の妖精です。


   ≪ええっと、まずはともかく【夢幻】に入りましょう≫


 妖精はそう言うと、なにやら唱えはじめました。
 画面の文章ウインドウにはでたらめな記号や文字が並んでいます。

 そして――

 パアアッッと画面が明るくなり、妖精の姿が消えました。

   ≪それでは【夢幻】にはいります~!≫


 なんだか、近くでそんな声が聞こえた気がしました。
 その声はレイズの思ってた通りの、のんびりした天然風な声。
 このゲームはフルボイスとかそういったものではない……
 と、レイズは思いましたが……。

「んッ!!? な、なんだここ……」

 はっ、と見ると自分のいる景色が違いました。
 確かにたった今まで、自分の部屋にいたハズです。
 なのに、今は全く知らないところにいました。
 しかも、先程の天然風な妖精が目の前にふわふわ浮かんでいるのです。


「ええっとぉ……
 まずはここ、【夢幻】の入口でレイズさんのキャラクターカードを作らないと……」

 妖精はなにやら分厚いの本をぱらぱらとめくりながら、独りつぶやいています。
 その本には【ゲームの進め方&攻略法】などと書かれていました。

 ――どうやら、攻略本のようです(汗)

「ちょいちょい、なにやってんだお前?」

「え?! あ、す、すみません~~。
 まずはキャラカードを作るんだって。
 これ、カード。えええっとぉ……

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 ≪名 前≫ レイズ
 ≪性 別≫ ♂
 ≪職 業≫ 元魔法使いの盗賊
 ≪レベル≫ 7
 ≪H P≫ 67
 ≪M P≫ 30
 ≪特殊能力≫ 攻撃魔法、盗賊の能力
---------------------------------------------

 まあ、こんなところなのかな?」

 妖精はカードにこう書きこむとレイズに見せました。

「オレに訊くなよ(汗) お前、ガイドだろ?」

「あ、そうでした。なにか追加することがあったら書き加えるね~」

 妖精はそのカードをレイズに手渡しました。
 すると、妖精の手のひらサイズだったカードが
 レイズの手のひらサイズに変化します。
 妖精はカードを渡すと「なくさないでね」といいニッコリ微笑みました。

「あのさ、とりあえずオレ、ゲームの流れに流されようと思うけど……。
 なにか目的とかあるのか?
 確かにオープニングでそれっぽいことは見たけど……
 大切なもの、見つけるとか」

「はい。大切なものを探すのはレイズさん自身の目的。
 それから、もうひとつ。世界の危機を救うことも目的だよ」

「ふーん、なるほどね。ゲームらしくなってきた。
 やっぱり、ファンタジーゲームの王道は魔王退治か、
 世界の危機を救うことだよな~」

 レイズは妖精の話を聞き、1人納得しています。
 妖精はレイズの言っている意味が、
 なんだかよく解らないみたいなのですが、一緒に頷いています。

「で、お前、カラっていうんだっけな。
 ここがその【夢幻】ってトコなのか?
 ……って、そういえば入口ってさっき言っていたような?」

「あ、はい。ここは【夢幻】への入口。
 レイズさんはおぼえていないと思うけれど……
 夢を見る前に1度は必ずここに来るんだよ、みんな。
 そして、夢を見る。
 いわばここは、レイズさんの世界と【夢幻】をつなぐところなんだ」

「へぇ~……」

 レイズは辺りを見まわします。
 ふわふわ、なにかよくわからない綿毛のようなものが漂っていました。
 どこが空なのか地面なのかその境目はありません。

「それじゃあ、とりあえず準備は済んだし、【夢幻】に入りま~す!」
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