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*さんまいめ【日勤のオハナシ】

「いらっしゃい、副長さん。
 お仕事中にうちに寄ってもいいのかな?」

 おっとりした笑顔でムライさんは言う。

「午後からのおやつを買いに来たんです。おやつタイムの甘いものは必要ですよ~!
 休憩もナシにお仕事は、長い時間もちませんからね」

「ナルホド、そういうことでしたか。班のみなさんで食べるおやつなんですね」

「はい。何かオススメのお菓子はありますか?」

 キレイに並べられている焼き菓子をながめつつ聞いてみる。
 どのお菓子も美味しそうで迷っちゃうよね。こういう時はオススメを聞くのが一番!

「オススメですか?
 そうですねぇ、このチョコソースを中に閉じこめたカップケーキはいかがですか?
 食べるときにソースがトロ~リと出て美味しいですよ」

「へぇ~チョコソーストロ~リですか、美味しそうですね~。じゃあ、それ下さい。
 ん~今日の出勤人数は……ええと……」

 おれは人数分のチョコソーストロ~リカップケーキを買う。

「ありがとうございました。あ、そうだ……副長さんこれ。
 今度新しくお菓子を出そうと思うのですが、みなさんで食べて感想を聞かせてくれませんか?
 お代は結構ですので」

「え……いいんですか?」

「はい。実は……これにはヒミツがありまして……」

 お代がいらないなら喜んでいただきます♪
 ご好意に甘えて新作のお菓子とカップケーキの包みを受け取り、お店を出た。

「エゼルさんお待たせしました。巡回の続きに戻りましょう」

「美味しいお菓子を買えたみたいだね。おやつの時間が楽しみだよ」

「そうですね~」

 再び巡回の続きへ戻る。お日さまもだいぶ天頂に近い、もうすぐお昼だね。


「それじゃあ、後で感想を聞かせて下さいね。
 ムライさんの新作のお菓子、中にいくつかハズレがあるみたいですから」

「ハズレ~? 一体どんななの、カナちゃん」

「ええと……実はどんなハズレなのか教えてくれなかったんですよね。
 食べてからのお楽しみだよって。ハズレが何個かも教えてくれなくて、ホントにドキドキですよね」

「そうなんだ、オモシロイねぇ(^^♪ ムライさんは楽しいことかんがえるのぉ☆」

 ムライさんのお店に行った後は何事もなく、お昼になったのでお城に帰って昼食を済ませた。
 今日のお昼はお城の食堂で日替わりランチにしたんだ。日替わりランチはとってもお得だからね。
 何より、あったかくて美味しいごはんが食べられるのが嬉しいよね♪
 そんな美味しいランチを済ませて、午後からの巡回に出るまえ、
 ムライさんのお菓子のことを班長さんに伝えるとこんな反応だった。

「そういうことですので、おれは午後の巡回に行ってきます」

「ハイハイ、行ってらっしゃ~い♪
 あ、でもカナちゃんのお茶飲めないの残念じゃのぉ~。今、お茶淹れてかない?」

「班長さん、ワガママ言っちゃダメです」

「ちぇぇ~、まぁイイや」

 午後からのおやつタイムは班に残っている人たちで。
 巡回メンバーや、その時間に救護に行っている人はそれが終わってから、
 各自でおやつタイムってことになっているんだ。
 だから今日は遅めのおやつになるね。
 午後からは特に何事もなく、巡回は終了だよ。
 ジノヴィさんたちもちょうど時間どおりに帰って来たみたい。

「おつかれ、副長」

「おつかれさまです!
 今日の報告書を作る前にお茶の用意をしますね。先に書いていてください」

「分かった。よろしく頼む」

 日勤の最後の仕事は報告書を作ること。何事がなくてもあってもね。
 何もないのは町が平和ということでそれが一番だよね。
 書類を作るだけだから、おやつを食べながらでもオッケーだよ。
 湯沸かし室へ行ってお茶の準備。お菓子も用意して……と。

「あ、副長ちゃんこれからおやつタイム?」

「そうだけど、ヨナスは今日夜番なんだ」

「そ。副長ちゃんと一緒じゃないとつまんないな~」

「つまんないって(-_-;) 夜番のみんなのお茶も用意するからマジメにお仕事してね、ヨナスサン」

「は~い! 副長ちゃんオレ、ガンバルヨ(^^♪」

 ヨナスはニコニコ楽しそうに行ってしまった。
 ジノヴィさんたちと夜番メンバーのお茶を作って隊の食堂へ。
 隊の食堂は、お城の食堂とは別で隊舎の中にある。
 お弁当を持ってきた人が食事したり、みんなで報告書を書いたりと多目的に使っているんだ。
 行くと、ジノヴィさんたちは報告書を書きながら、ヨナスたちは話をしながら待っていた。

「副長、いつもすまんな」

「副長ちゃん、こっちも早くはやく(^^♪」

 テーブルの真ん中に今日買ったお菓子を置き、みんなにお茶を配って席に着く。

「俺たちの方は特に何事もなかったからな、報告書はもう書けたぞ」

「分かりました。ではジノヴィさんたちは時間になったらあがって下さい。
 おれたちの方は、迷子さんに会ったので少しそのことを書いて……と。
 あ、ムライさんからいただいた試作のお菓子、そういえば忘れてた。
 班長さんたちは食べたのかな……?」

「試作のお菓子? へぇ~そんなのあるんだ。副長ちゃん、どれどれ?」

「あ、待ってね。持って来るよ」

 おれは湯沸かし室へ試作のお菓子を取りに行った。

「あ、カナリ。おつかれさまですね。ハズレは班長さんでしたよ♪」

 袋を持って行こうとしたら、アニキが楽しそうに声をかけてきた。ハズレってことは……。

「ハズレってどんなだったの?」

「知りたいですか? 楽しかったですよ、ロシアンシュークリーム♪
 見た目は全くみんな同じ。で、3時のおやつにみんなで一緒にパクリです。
 そしたら班長さんがシブ~イお顔になったんです。
 どうやら相当苦い味のクリームだったみたいですね」

 アニキは満面の笑みでニコニコしながら教えてくれる。

「あわわ、そうなんだ……明日が怖いかも(-_-;)」

「大丈夫です。あなたが危険になったら、私がキッチリ助けてあげますよ。
 班長さんは私がトドメをさしてあげましょう」

「ア、アニキぶっそうなこと言わないでよ(-_-;)
 ううう、あと何個ハズレがあるんだろ……」

「ムライさんは教えてくれなかったのですか?」

「うん、教えてくれなかったんだ……食べてからのお楽しみだよって。
 むぅ、コレ出すのやめよっかな」

 おれは手にした袋を見る。
 ムライさんはこの中に何個かハズレがあって、
 食べてたらオモシロイ事になるよって言ってたんだけど……。
 オモシロイ事ってそういうことだったんだ(-_-;)
 パーティーとかでは盛り上がって良さそうだけど……
 う~、よりにもよって班長さんがハズレを引いちゃうなんて。
 どんなグチグチを言われるかコワイ(-_-;)

「せっかくいただいたのですから、出さないとダメですよ。
 みなさんでって言われたのでしょう?」

「ううう、そうだけど……」

「ホラ、ハズレ以外は美味しいのですから大丈夫ですよ」

「そうだね、おれがハズレを引くしかないよね。
 他の美味しいのがみんなに行くように祈って」

「ふふふふ、カナリは良い子ですからハズレは引きませんよ。私が保証します!
 そうですねぇ、ヨナスさんあたりがハズレを引いたらオモシロイでしょうね♪」

 アニキは胸を張って断言する。

「アニキ、不吉なコト言わないでよ(-_-;)
 それにそんな保証はいらないよ~」

 でも一応、みんなには事情を説明して出そう。
 自分がハズレを引くことを祈って……。
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