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*よんまいめ【班長さんと剣探しinジパング】

「明日の生け贄の儀までここで過ごしてもらうことになる。
 何か必要なものがあったら言ってくれ。できる限り用意はする」

「ハイハイ、了解リョウカイ(^^♪」

 おれたちが案内されたのはヒミコさまのお屋敷の一角にある離れだった。
 普段は来客用の部屋なのかな?
 過ごしやすそうな明るい雰囲気の室内。広い窓があって、キレイな所だった。
 おれはてっきり、窓もなくて薄暗い牢屋みたいな所に閉じ込められると思ったんだけどね。

「閉じ込めるって感じじゃないんですね」

「……そうだ。生け贄となる者は我が国のためその身を捧げてもらうのだ。
 そのような者を罪人のように閉じ込めるのは申し訳ないこと。
 せめて最後の日までの間は心地良くすごしてもらえるようにとのヒミコ様のご配慮だ。
 望む者には家族も呼び、一緒に過ごすこともできる」

「ふ~ん、ナルホドねぇ。せめてもの罪滅ぼしってトコかな?
 でもサ、こんな風に自由にしてイケニエに選ばれた人は逃げたりしないの?」

「……今まで逃げ出そうとした者は居なかった。
 我が国でのヒミコ様のお言葉は絶対だ。では私は失礼する。
 何かあったら呼んでくれ」

 室屋さんはそう言うと行ってしまった。ホントに閉じ込めるとかないみたい。

「ヒミコサマのおコトバは絶対だってサ~。何かスゴイよネ♪」

「まるで生き神といったところだな。町の者がそれだけ女王と認めているのだろう」

「ふ~ん、俺だったらサそんなこと言われたら絶対、異を唱えるケド。声を大にしてネ(^^♪」

「それは班長さんだからですよ。普通の人は従ってしまうんじゃないかな……」

 班長さんは特別だから。
 もう、我が道を行く、自分の意見を押し通す、それは相手が誰であれ。
 ラジャさまくらいかなぁ班長さんを負かせられるのは。

「それはカナちゃんも? アサヒは俺と同じな気がするけど」

「そうだな、私は嫌なことは嫌と言うな。
 その時と場合、内容によるが基本的に嫌なことは異を唱えるぞ」

「おれもそうですけど……アサヒさんと一緒で内容によります」

「でしょ、でもココじゃ誰もイヤって言わない。
 俺たちのフツウはココではフツウじゃないってコトだよね~。
 だったらそれフツウじゃないよ~って教えてあげなきゃだよネ(^^♪
 女王サマのコトバが絶対じゃないよ~ってネ☆
 じゃないと女王サマも国民も分からないっしょ♪」

「……班長さんが何か良いこと言ってる……」

「んんんっ、カナちゃん今、何か言ったよネ。
 それって、俺がイイこと言ってスゴ~イ、ステキ(*^▽^*)って思ったの?
 それとも俺がイイこと言って珍し~何か悪い物でも食べたのかな~って思ったの~?」

 班長さんはおれがポロッと言った独り言を聞き逃さなかったみたい(-_-;)
 笑顔でおれに詰め寄ってくる。

「あ、え、えっと……良いこと言ってスゴイな~って思って。
 それより明日の夕暮れに生け贄の儀ってことは明日一日休まないといけないですよね。
 ううう、明日のメンバー誰だっけ……万が一全滅すること考えたら……」

 班長さんはいつもハチャメチャなことばかり言う人だからチョットビックリだったけど……。
 良いこと言ってスゴイって思ったのも事実だし、珍しいって思ったのもあるんだよね。
 とりあえず、なんとかこの話題を変えないと。

「ホントに~? ……まぁいっか。
 それにしてもカナちゃんは心配性だねぇ♪
 まぁ明日、無断欠勤はマズイか~。アサヒもいるし、いったん帰って言って来よっか」

「そうだな。室屋どのに話してみてはどうだ?」

 疑いの目を向けられたけど、何とかなったね( ̄▽ ̄;)
 それにしても班長さんの趣味に付き合って、こんなことになるとは思わなかったよ。
 二日がかりになって、アサヒさんにまで迷惑をかけることになっちゃって……。
 とりあえず、帰っていいか聞かなきゃね。

  ◆◇◆

「アリアハンに一旦帰りたい?」

「はい。明日城の仕事を休むことを伝えて来たいのですが……。
 伝えたらすぐ戻りますので」

 室屋さんにこちらの事情を伝えると、少し困惑した表情になる。

「ガイジンということしか分からなかったが……そもそもお主たちは何者なのだ?
 城の仕事ということは城の兵かなにかなのか?」

 そういえば、おれたちのこと何も言ってなかったね。
 休みの日に来たわけだから特に言うことはなかったけれど……今の状況だと言う必要はあるよね。
 なんで帰らないといけないかを納得してもらうためには。
 おれは室屋さんに、おれたちがアリアハンという国の城で騎士団や治療院で働いていて、
 無断欠勤は困るということを伝えた。

「そうだったのか……ヒミコ様にお主たちの事情を伝えて来よう。少し待たれよ」

「すみません」

 室屋さんはヒミコさまの所へ行き、しばらくして戻ってくる。

「ヒミコ様にお話ししたところ、必ず戻るのであれば許可するとのことだ。
 ただし、お主は残ってもらう。ヒミコ様によると、オロチは他の2人はどちらでも良いが、
 お主は必ずイケニエとして差し出すようにと言ってきているらしい。
 ゆえに戻るのはそちらの2人のどちらかか、もしくは2人共でもかまわない」

「フムフム、オロチもおいし~のが誰か分かってるんだネ♪
 カナちゃん絶対おいしそ~だもんねぇ、必ずゲットしたいよネ★ミ
 リョ~カイ、アリアハンには俺が戻って来るよん。
 アサヒはカナちゃんの護衛で残っててネ♪
 治療院にも事情を伝えとくから」

「了解した。カナリのことは私が守ろう」

「話は決まったようだな。
 ……私は実のところお主たちに期待している、オロチを退治してくれると。
 お主たちは我が国の者にはないチカラを持っているようだからな……よろしく頼む」

 室屋さんは深々と頭を下げる。おれは慌てて、

「あわわっ、頭を上げてください。困っている人を助けるのが騎士ですから。必ず助けますね」

「頼もしい言葉だ」

 室屋さんが出て行くと、班長さんはアリアハンに戻るためルーラを使う……
 って班長さんルーラ使えたんだ。
 今まで一度も使ったところ見たことがなかったけど( ̄▽ ̄;)

 ルーラを使った班長さんの姿は一瞬で消えてアリアハンに移動する。
 それにしてもホントに便利な魔法だよね。班長さんが戻って来るまではマッタリしとこっか。
 室屋さんにお願いして、お茶のセットを借り、少し休むことにした。

  ◆◇◆

「あ~、カナちゃんズルイ! 2人でお茶して~俺も俺も~~~!」

 ん~班長さんが帰って来た途端ににぎやかになるね(^-^;
 飲み終わったカップを見て班長さんは主張する。

「そんなに言わなくてもちゃんと淹れますよ、安心してください。
 それにしても班長さん、ルーラ使えたんですね」

「ウン? まぁ、ベンリな魔法は使える方がイイじゃろ~♪
 まぁ、いつ使うかは気分次第だけどの~。
 でも、絶対に使わないのは仕事のとき~! 面倒だからのぅ」

「……はぁ(-_-;) 言うと思いました。
 でも、いざという時はお願いしますね」

「ハイハイ、リョ~カイ(^^♪」

 この調子だと無理っぽいけどね(-_-;)
 他にもイロイロ使える魔法がありそうだよね、班長さん。
 もう少し、仕事の方にやる気スイッチを入れてくれるといいのになぁ。
 とりあえず、室屋さんにお願いしてもう一度お湯をもらって先程のティーセットでお茶を淹れる。

「ヘェ~なんか変わったカップだネェ♪」

「国が違えばそういう所も全く違うということだな。茶の味もしかり。
 貴重な体験だ。今回は一緒できて良かった、イケニエになる体験もできるしな」

「アサヒさん、イケニエ体験はあまり良いことじゃないですよ~( ̄▽ ̄;)」

 う~、アサヒさん落ち着いてるなぁ……班長さんは楽しそうだし。

「滅多にないよ~こんなことは。
 キチョウ、キチョウ、カナちゃん♪ 人助けにもなるんだよん(^^♪」

「ハァ……班長さん(-_-;) 下手すれば命をおとすかもなのに……」

「大丈夫、大~丈~夫~! 命はおとさないよん♪
 全パ登録してるでしょ、負けてもウチの誰かが助けに来てくれるんだからネ(^^♪
 まぁ、負ける気はしないけどネ~★ミ
 う~ん、カナちゃんってば心配性だねぇ、お兄サンがギュッてしてあげよ♪」

「へ……」

 班長さんがイキナリ抱きついてきた。突然のことでおれは固まる。
 けどそれも一瞬のこと。ゴツンという音がして、班長さんはおれを離した。
 そして、イテテと頭をさする。足元を見ると、鉄兜が転がっていた。
 もしかしてコレが頭にゴツンって当たったのかな??

「ハァ~イタタタ~急に来たから避けられんかったヨ。
 まぁ、カナちゃんに当たらなかったから良かったけど。
 んフフフ……アトルちゃんヤキモチかなぁ~?」

「コレ、アニキの仕業ですか? ヤキモチじゃないとおもいますけど( ̄▽ ̄;)」

「そっかなぁ~。
 俺がカナちゃんをギュッってしたから、アトルちゃん寂しいのかなぁって思ったんだけどネ♪」

 それ絶対に違うと思う( ̄▽ ̄;)

 首をかしげる班長さんにおれは苦笑い。
 それにしても、どうやって鉄兜を飛ばせたのかな、アニキは……謎だ(-_-;)
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