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*よんまいめ【班長さんと剣探しinジパング】

「うわ~何だかスゴイですね~ココ」

 宮殿に入る前の所。
 階段になっているんだけど、階段に沿って
 赤い太い丸太を組み合わせてできた門のようなものが、
 ズラ~ッとトンネルのように連なって続いていた。

「これは鳥居って言います。
 ヒミコ様の住まう宮殿やその奥の神殿は神聖な所です。
 その神域に入るためには穢れを祓わなければなりません。
 鳥居は俗世と神域を分けるもの。
 鳥居をくぐると穢れを祓うといわれています」

「そうなんですね~。
 確かにここを歩くと不思議な感覚ですね~」

 赤いトンネルは今まで見たことのない風景。

「カナちゃん、キョロキョロして歩くと転ぶよん♪」

「へ……」

「ハイ、キャッチ~(^^♪」

 無意識にそうしていたみたい。
 足元の段差に気付かずに転びそうになる(-_-;)
 そこをすかさず、班長さんが支えて助けてくれた。

「ありがとうございます、班長さん。
 もう大丈夫ですから離してください」

 横から支えてくれていて、転ばずにすんでありがたかったけど、
 なかなか離してくれない。

「ちぇ~もっとこうしていたいのにぃ、残~念。
 カナちゃんまだ先あるし、手ぇつないで行こっか?
 そうしたらすぐ助けられるし、
 お兄さんカナちゃんと手つなぎたいなぁ(^^♪」

「もう転びませんから大丈夫です。行きましょう」

 まだ諦めきれない班長さんをスルーして、
 足元に気をつけながら階段を上る。
 本当にこの道を歩いていると不思議な気持ちになるね。
 そんな鳥居のトンネルを抜けた先にヒミコさまの宮殿はあった。

 ズラーッと木の塀がその敷地を囲い、中の様子はよく見えない。
 塀の上から建物の屋根がいくつか見えることから、
 中には複数の建物があるみたいだね。
 塀の間には立派な屋根のある門があって、
 門を守る兵士さんが2人立っている。
 彼らは町の人が着ていたような服の上に、木と革でできた鎧を身に着け、
 鎧と同じ素材でできた兜をかぶっていた。
 おれたちの使う鎧や兜とはちょっと違う感じのものだね。
 おれたちの姿を目にとめると、彼らは持っていた槍で通せんぼする。

「町長のクラジです。
 ヒミコ様にお話があってまいりました。お取次ぎ願います」

 クラジさんが進み出て、ここに来た理由を言う。

「……ヒミコ様に話? うしろのガイジンたちも一緒になのか?」

 右側の歳が上らしい兵士さんは
 一度じぃ~っとおれたちを注意深く見て、怪訝そうに言う。

「はい。ヒミコ様がガイジンがお嫌いなことは知っています。
 ですが、この方たちが我々を苦しめるヤマタノオロチを
 退治して下さるとおっしゃっているのです。
 ですから、ヒミコ様にそのことをお伝えしたく思います」

「何っ?! ヤマタノオロチを倒す、だと?
 その3人で倒すというのか?
 我々の精鋭が数十人がかりでも倒せなかったというのに……世迷言を」

「ヨマイゴト、言いマセン! そんなオロチくらい倒せますよん♪
 なんせ、負ける気がしまセンから~♪
 ズバッド~ンッと倒しちゃいますよ~(^^♪」

 ピリッとする兵士さんとは反対に班長さんはとにかく軽い調子。
 そんな風だから兵士さんたちはさらに疑いの目を向けてくる。

「負ける気がしないだと?
 ガイジンというだけで怪しいと思ったが、何が目的だ?
 我が国を侵略しようとする先遣隊ではあるまいな?」

 あわわ、何だか話が変な方向にいってるよ( ̄▽ ̄;)汗

「この方たちはそのような人ではありません。
 どうか話を聞いて下さい」

「ヒミコ様はガイジンを嫌っておられる。
 会うことはできぬだろう、帰れ!」

 クラジさんも一生懸命、説得に加わってくれるんだけど
 兵士さんは頑なに通してくれない。
 宮殿の主を守ろうとするのは立派だけど、どうしよう……。
 兵士さんたちと班長さんとクラジさんの攻防は
 決着がつかないと思ったけれど……。
 その攻防を終わらせてくれる人が現れる。

「どうしたのだ、カタリ」

「あ、室屋様。
 このガイジンがヒミコ様に会わせろと言ってきかないのです。
 しかもヤマタノオロチを退治するなどと世迷言まで言って……」

「なんと! ……このガイジンたちが……。
 カタリ、ヒミコ様がガイジンたちに話があるとおっしゃられておる。
 その者たちがそうなのであろう、通して良い」

「ヒミコ様がそうおっしゃられているのなら、通します」

 さっきまであれほど頑なになっていた兵士さんは
 その一言ですんなりと態度を変える。
 主の言いつけが絶対ってことだよね。
 どこも一緒だね~兵士さんは。

「へぇ~ヒミコさま、会ってもないのに
 俺たちがこの国に居ること分かるんだ~スゴ~~!」

「あたりまえだ。ヒミコ様は強い神通力を持っておられる。
 そのチカラでこの国を治めておるのだ。
 異変があればすぐにお分かりになる。
 最もお前たちのような者がこの国に入って来れば
 嫌でも話は伝わってくる」

「ふ~ん……
 けどオロチを退治するチカラは持ってないんだね、ヒミコさま。
 町の人が生け贄で困ってるのにね~」

 班長さんのコトバに兵士さんは押し黙ってしまう。
 代わりに室屋さんが、

「……仕方ないのだ我々のチカラでは。
 ヤマタノオロチを退治しようと火の海の洞窟へ、
 兵や町で腕に自信のある者たち一行を向かわせた。
 しかし誰一人帰って来なかったのだ。
 そのようなことをしたため、オロチはこの国を滅ぼすと襲って来たが、
 ヒミコ様が何とか話をつけてくれてな……今のようになった。
 そうしなければこの国は…………」

 班長さんの馬鹿にしたような物言いに、ハラを立て怒り出すと思いきや、
 室屋さんは怒りをにじませながらも静かに言う。

「ふむふむ。
 国が滅びるのとヒト一人の犠牲を天秤にかけたらそりゃそうなるか~。
 国が滅ぶよりもカワイソウな娘さん一人を差し出して勘弁してもらおうってね。
 女王さまなら国のコトを一番に考えちゃうよね~ナットクナットク♪」

「班長さん、言いすぎです!」

「……我々とてそれが良いとは思ってない。こっちだ」

 自分たちではどうしようもできない悔しさに言葉を詰まらせる室屋さん。
 もう話は終わりだと言うように歩き出した。
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