帰らないで、が言えた夜
「送ってくれて、ありがとう」
マンションの前でそう告げると、雷蔵は「うん」と微笑んだ。
「じゃあ、またね」
手を上げた彼に、私も笑い返す。けれど、その手が下りるより先に、鍵を持っていないほうの手が動いていた。離れていこうとする指先へ、そっと触れる。
雷蔵の手が止まった。
「……どうしたの?」
驚いたように私を見る目は、どこまでも優しかった。何でもないと言って、手を離せばいい。それなのに、触れた指先の温度を知ってしまったら、もうできなかった。
「……帰らないで」
ようやく声にすると、雷蔵の目がわずかに見開かれた。触れているだけだった彼の手がゆっくりと返され、指と指が絡む。逃がさないように、それでいて痛くない強さで握られた。
「……よかった」
すぐそばでこぼれた声は、甘く掠れていた。
「今夜はまだ、君を離さなくていいんだね」
絡んだ指に、さっきより少しだけ強く力がこもった。
マンションの前でそう告げると、雷蔵は「うん」と微笑んだ。
「じゃあ、またね」
手を上げた彼に、私も笑い返す。けれど、その手が下りるより先に、鍵を持っていないほうの手が動いていた。離れていこうとする指先へ、そっと触れる。
雷蔵の手が止まった。
「……どうしたの?」
驚いたように私を見る目は、どこまでも優しかった。何でもないと言って、手を離せばいい。それなのに、触れた指先の温度を知ってしまったら、もうできなかった。
「……帰らないで」
ようやく声にすると、雷蔵の目がわずかに見開かれた。触れているだけだった彼の手がゆっくりと返され、指と指が絡む。逃がさないように、それでいて痛くない強さで握られた。
「……よかった」
すぐそばでこぼれた声は、甘く掠れていた。
「今夜はまだ、君を離さなくていいんだね」
絡んだ指に、さっきより少しだけ強く力がこもった。
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