序章〜子供時代編
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第一印象は、『変わったやつがいるもんだ』だった。
俺の幼馴染を見かけた途端に一目散に走ってきて、よろしくおねがいします!だったっけ?
いや、バトルを教えてくださいだったか。
隣のクラスにいるということも知らなくて、本当に初めて見た顔だった。
正確に言えば、見たことはあったのかもしれないが記憶にない。という方が正しい。
俺はそんなに人に興味が持てない。人見知りという訳でもないのだが。
人と話すよりポケモンや機械をいじっている方が楽しい。それにポケモンバトルをすれば大体のトレーナーとは分かり合えるし、そこから友達も増えた。
だから進んで人と関わるということはなかったんだ。
それが、一緒にいるのが楽しいになって。
今じゃ、隣にいるのが当たり前。
ほんの数ヶ月前までは存在すら知らなかったのに。
不思議なもんだと思う。
--------
その日の朝は、何だか早く目が覚めた。
「おはよ」
「…おう」
夜更かしでもしたのか、オーバが眠たそうに目をこすりながらペタペタ歩いてきた。
無駄に元気なオーバらしくない。何となく心ここにあらずといった感じで気が抜けている。
いつものように並んで学校への道を歩くが、なんとなくお互い無言になってしまった。
「なあデンジ」
「ん…」
「かくかく、家帰ってきたかなあ」
ポツリとオーバがそう呟いた。そんなの俺だって知りたい。
夜に、かくかくの家のおばさんから電話がかかってきて。かくかくが家に帰ってきてないという事を知った。
電話で二言、三言会話をしていた父さんは、モンスターボールを持って急いで出かけていった。
「俺も行く!」って言ったけど「お前は家にいなさい」と一蹴されてしまった。
それから、次の日の朝だ。なんとなく、俺たちの気分は重たかった。
「かくかく、今日学校来るかな」
「…どうだろうな」
「あいつさあ」
「うん」
「たまにとんでもないことするよなあ」
「…そうだな」
聞いた話では222番道路の先にある森に一人で行ったという。俺達でさえも1人で行くなんて無茶したことがない。
オーバの言うとおり、かくかくはたまにとんでもない事をする。それを見るとオーバも俺もビックリして、どうしたらいいかわからなくなる。
わからなくなって、何だか無性にイライラしたり、泣きたくなってしまう。
近所のおじさんが世話してる生まれたてのピチューみたいだと思った。
そのピチューは目を離すとどこに行くか分からない。俺もたまに一緒に探すと木の上に登って降りられなくなったりして、泣いてたりするんだよな。
そういう、感じに似ている。
似ているけれど、そういう心配とは何だかちょっと違って、もっと胸がザワザワしてしまう。
ふいに、ポケットに入れっぱなしになっていたストラップの事を思い出した。
手を突っ込んでそれを触って確かめると、やわらかな存在が確かにそこにあった。
それをポケットの中で握ったり撫でたりしながら歩いているうちに、俺たちはあっという間に学校に着いてしまった。
朝のホームルームでは「この学校の生徒が森で大変な怪我をしました。パートナーポケモンと一緒でもとても危ないので、もし222番道路に行く事があれば必ず大人と一緒に行きましょう」という担任からの話があった。
そしてすぐにかくかくの話だと分かった。
はあ?怪我?
なんでそんな事になるんだ?
あいつすげえ頭いいのに何でそんなに無茶な事するんだ?
話を聞いて、率直にそう思った。
学校に来れないぐらいの怪我なのか?大丈夫なのか?なんで森なんか一人で行ったんだ?
ふと横を見ると空いた口が塞がらないような顔したオーバと目があった。
多分俺も似たような顔してたと思う。
-------
「別に俺達はかくかくのバカなんて呼んでねえよ!アイツが勝手にくっついて来たんだ!」
「そうだぞ!俺たちのせいじゃねえ!」
「デンジ落ち着けって!」
「次に同じ事もう一度言ってみろ。お前のこと絶対許さねえからな」
夕方。渡り廊下の先に見える中庭にある花壇。
その日は俺の水やり当番で、億劫だなと思いながらもホースで水播きをしていた。
係活動を決める際にボーッとしてたら水やり係になってしまったのは不覚だった。俺の担当は火曜と金曜だけなんだが、面倒くさい事この上ない。
こういう時、みずタイプのポケモンがいるとめちゃくちゃ楽なんだ。
『デンジくんも水やり係だったの?良かったら一緒にしようよ!二人でやると早いよ!』なんて、あの時のかくかくの嬉しそうな顔ときたら。
適当に手を抜こうと思ってたのに…。嬉しそうにしてるかくかくを放っておくわけにもいかず。同じクラスでもないのに一緒に世話をしていた。
夏休み中でさえも『学校の花壇が気になる』とか『デンジ、一緒に学校行かない?』なんて誘ってきて、どんだけ花が好きなんだコイツ。と呆れてしまった事もあった。
1度面倒で昼休みに一気に水やりしてたら、『暑い時はダメだよ!お花元気なくなっちゃう』なんて言うから面倒だけど下校時間にやっている。
正直花には全く興味がないが、一緒に花の世話をして「これはマリーゴールド」とか「この花インパチェンスって言うんだけどね」とかニコニコ話してるのを聞いてると、水やり係も別にいいか。なんて思ったりもする。
「お〜い帰ろうぜデンジまだかよお」
「もう少しで終わる。文句言うなら先に帰るか、お前も手伝えよ」
オーバが頭を斜めにしながら校舎にもたれ掛かっている。
俺はかくかくの分の花壇もやってんだよ。っていうか、なんで隣のクラスのやつはかくかくが休みなのに誰も水やりしないんだよ。
そんな中、「昨日、森で見つけたデカいヘラクロスだけどよ〜」という会話が聞こえた。
その声と内容に、そちらに顔を上げるとかくかくのクラスの男子生徒2人が渡り廊下を抜けてこちらに歩いてきている。
花壇を抜けると裏門にショートカットでいけるので利用する生徒の数はそれほど少なくない。
オーバも気づいた様子で2人をジッと見ていた。
それはアイツらも同じだったようで、俺とオーバだと分かるとこれ見よがしに声がデカくなった。
「あの弱虫かくかくには参ったよなあ。アイツが邪魔したせいでゲットできなかったし、親には森に行くなって怒られるしよお。せっかくあまいみつ塗ったのに全部パアじゃん」
「本当だよなあ。せっかく小遣いためて作ったのにな。あのままボール投げ続けてればゲットできたかもしれねえのにあのバカが邪魔するから」
「今日休みでよかったぜ。目障りなんだよアイツ。あれだな、ゴシューショーサマってやつだな、って冷てっ!!何すんだおまっ!ぶっ、止めろクソ!…やめ、止めろってんだよ!!」
気づいた時には、俺は手に持っていたホースを思いっきりあいつらに向けていた。
水量最大にして3回連続で放水してやった。相手はびしょ濡れだ。
「ああすまん。わざとだ」
「いきなり何すんだよ!ケンカ売ってんのか!?」
「先にケンカふっかけてきたのはお前らだろ」
それを皮切りにガキ大将の1人と取っ組み合いの喧嘩になってしまった。
アイツらの会話でかくかくがなんで森に一人で行ったのかなんて知れた事だ。
お人好しのあいつの事だ。危ないから助けに行ったんだろ。本当バカだよなこんな奴ら放っておけばいいんだ。
本当バカだよな。
察したオーバも相当頭にきてたみたいだが俺がホースで水をかけた事により面食らってしまったらしい。
俺が相手の胸ぐらに掴みかかって一発殴ったところで、オーバに羽交い締めにされ止められた。止めんなモジャモジャ。
「いってえな!別に俺達はかくかくのバカなんて呼んでねえんだよ!アイツが勝手にくっついて来たんだ!」
「そうだぞ!俺たちのせいじゃねえ!弱虫かくかくのジゴージトクだ!」
「デンジ落ち着けって!…お前らも、なんなんだよ!毎度毎度偉そうに…かくかくが何したってんだよ!」
「次にかくかくの事、弱虫とかもう一度言ってみろ。お前のこと絶対許さねえからな。確かにかくかくはバカでお人好しで泣き虫で変な奴だけどな、弱虫じゃ、ねえんだよ!」
「がっ」
「次会ったらかくかくに謝れよな!」
オーバに止められてるところを掴みかかろうとしてきた相手の頭に頭突きを食らわせてやった。
「デンジ!!お前もうその辺にしとけって!」
「かくかくの分までやっといた」
「俺もムカついてたからすっきりしたけど!したけど!今度は俺たちが怒られるだろー!!」
俺の幼馴染を見かけた途端に一目散に走ってきて、よろしくおねがいします!だったっけ?
いや、バトルを教えてくださいだったか。
隣のクラスにいるということも知らなくて、本当に初めて見た顔だった。
正確に言えば、見たことはあったのかもしれないが記憶にない。という方が正しい。
俺はそんなに人に興味が持てない。人見知りという訳でもないのだが。
人と話すよりポケモンや機械をいじっている方が楽しい。それにポケモンバトルをすれば大体のトレーナーとは分かり合えるし、そこから友達も増えた。
だから進んで人と関わるということはなかったんだ。
それが、一緒にいるのが楽しいになって。
今じゃ、隣にいるのが当たり前。
ほんの数ヶ月前までは存在すら知らなかったのに。
不思議なもんだと思う。
--------
その日の朝は、何だか早く目が覚めた。
「おはよ」
「…おう」
夜更かしでもしたのか、オーバが眠たそうに目をこすりながらペタペタ歩いてきた。
無駄に元気なオーバらしくない。何となく心ここにあらずといった感じで気が抜けている。
いつものように並んで学校への道を歩くが、なんとなくお互い無言になってしまった。
「なあデンジ」
「ん…」
「かくかく、家帰ってきたかなあ」
ポツリとオーバがそう呟いた。そんなの俺だって知りたい。
夜に、かくかくの家のおばさんから電話がかかってきて。かくかくが家に帰ってきてないという事を知った。
電話で二言、三言会話をしていた父さんは、モンスターボールを持って急いで出かけていった。
「俺も行く!」って言ったけど「お前は家にいなさい」と一蹴されてしまった。
それから、次の日の朝だ。なんとなく、俺たちの気分は重たかった。
「かくかく、今日学校来るかな」
「…どうだろうな」
「あいつさあ」
「うん」
「たまにとんでもないことするよなあ」
「…そうだな」
聞いた話では222番道路の先にある森に一人で行ったという。俺達でさえも1人で行くなんて無茶したことがない。
オーバの言うとおり、かくかくはたまにとんでもない事をする。それを見るとオーバも俺もビックリして、どうしたらいいかわからなくなる。
わからなくなって、何だか無性にイライラしたり、泣きたくなってしまう。
近所のおじさんが世話してる生まれたてのピチューみたいだと思った。
そのピチューは目を離すとどこに行くか分からない。俺もたまに一緒に探すと木の上に登って降りられなくなったりして、泣いてたりするんだよな。
そういう、感じに似ている。
似ているけれど、そういう心配とは何だかちょっと違って、もっと胸がザワザワしてしまう。
ふいに、ポケットに入れっぱなしになっていたストラップの事を思い出した。
手を突っ込んでそれを触って確かめると、やわらかな存在が確かにそこにあった。
それをポケットの中で握ったり撫でたりしながら歩いているうちに、俺たちはあっという間に学校に着いてしまった。
朝のホームルームでは「この学校の生徒が森で大変な怪我をしました。パートナーポケモンと一緒でもとても危ないので、もし222番道路に行く事があれば必ず大人と一緒に行きましょう」という担任からの話があった。
そしてすぐにかくかくの話だと分かった。
はあ?怪我?
なんでそんな事になるんだ?
あいつすげえ頭いいのに何でそんなに無茶な事するんだ?
話を聞いて、率直にそう思った。
学校に来れないぐらいの怪我なのか?大丈夫なのか?なんで森なんか一人で行ったんだ?
ふと横を見ると空いた口が塞がらないような顔したオーバと目があった。
多分俺も似たような顔してたと思う。
-------
「別に俺達はかくかくのバカなんて呼んでねえよ!アイツが勝手にくっついて来たんだ!」
「そうだぞ!俺たちのせいじゃねえ!」
「デンジ落ち着けって!」
「次に同じ事もう一度言ってみろ。お前のこと絶対許さねえからな」
夕方。渡り廊下の先に見える中庭にある花壇。
その日は俺の水やり当番で、億劫だなと思いながらもホースで水播きをしていた。
係活動を決める際にボーッとしてたら水やり係になってしまったのは不覚だった。俺の担当は火曜と金曜だけなんだが、面倒くさい事この上ない。
こういう時、みずタイプのポケモンがいるとめちゃくちゃ楽なんだ。
『デンジくんも水やり係だったの?良かったら一緒にしようよ!二人でやると早いよ!』なんて、あの時のかくかくの嬉しそうな顔ときたら。
適当に手を抜こうと思ってたのに…。嬉しそうにしてるかくかくを放っておくわけにもいかず。同じクラスでもないのに一緒に世話をしていた。
夏休み中でさえも『学校の花壇が気になる』とか『デンジ、一緒に学校行かない?』なんて誘ってきて、どんだけ花が好きなんだコイツ。と呆れてしまった事もあった。
1度面倒で昼休みに一気に水やりしてたら、『暑い時はダメだよ!お花元気なくなっちゃう』なんて言うから面倒だけど下校時間にやっている。
正直花には全く興味がないが、一緒に花の世話をして「これはマリーゴールド」とか「この花インパチェンスって言うんだけどね」とかニコニコ話してるのを聞いてると、水やり係も別にいいか。なんて思ったりもする。
「お〜い帰ろうぜデンジまだかよお」
「もう少しで終わる。文句言うなら先に帰るか、お前も手伝えよ」
オーバが頭を斜めにしながら校舎にもたれ掛かっている。
俺はかくかくの分の花壇もやってんだよ。っていうか、なんで隣のクラスのやつはかくかくが休みなのに誰も水やりしないんだよ。
そんな中、「昨日、森で見つけたデカいヘラクロスだけどよ〜」という会話が聞こえた。
その声と内容に、そちらに顔を上げるとかくかくのクラスの男子生徒2人が渡り廊下を抜けてこちらに歩いてきている。
花壇を抜けると裏門にショートカットでいけるので利用する生徒の数はそれほど少なくない。
オーバも気づいた様子で2人をジッと見ていた。
それはアイツらも同じだったようで、俺とオーバだと分かるとこれ見よがしに声がデカくなった。
「あの弱虫かくかくには参ったよなあ。アイツが邪魔したせいでゲットできなかったし、親には森に行くなって怒られるしよお。せっかくあまいみつ塗ったのに全部パアじゃん」
「本当だよなあ。せっかく小遣いためて作ったのにな。あのままボール投げ続けてればゲットできたかもしれねえのにあのバカが邪魔するから」
「今日休みでよかったぜ。目障りなんだよアイツ。あれだな、ゴシューショーサマってやつだな、って冷てっ!!何すんだおまっ!ぶっ、止めろクソ!…やめ、止めろってんだよ!!」
気づいた時には、俺は手に持っていたホースを思いっきりあいつらに向けていた。
水量最大にして3回連続で放水してやった。相手はびしょ濡れだ。
「ああすまん。わざとだ」
「いきなり何すんだよ!ケンカ売ってんのか!?」
「先にケンカふっかけてきたのはお前らだろ」
それを皮切りにガキ大将の1人と取っ組み合いの喧嘩になってしまった。
アイツらの会話でかくかくがなんで森に一人で行ったのかなんて知れた事だ。
お人好しのあいつの事だ。危ないから助けに行ったんだろ。本当バカだよなこんな奴ら放っておけばいいんだ。
本当バカだよな。
察したオーバも相当頭にきてたみたいだが俺がホースで水をかけた事により面食らってしまったらしい。
俺が相手の胸ぐらに掴みかかって一発殴ったところで、オーバに羽交い締めにされ止められた。止めんなモジャモジャ。
「いってえな!別に俺達はかくかくのバカなんて呼んでねえんだよ!アイツが勝手にくっついて来たんだ!」
「そうだぞ!俺たちのせいじゃねえ!弱虫かくかくのジゴージトクだ!」
「デンジ落ち着けって!…お前らも、なんなんだよ!毎度毎度偉そうに…かくかくが何したってんだよ!」
「次にかくかくの事、弱虫とかもう一度言ってみろ。お前のこと絶対許さねえからな。確かにかくかくはバカでお人好しで泣き虫で変な奴だけどな、弱虫じゃ、ねえんだよ!」
「がっ」
「次会ったらかくかくに謝れよな!」
オーバに止められてるところを掴みかかろうとしてきた相手の頭に頭突きを食らわせてやった。
「デンジ!!お前もうその辺にしとけって!」
「かくかくの分までやっといた」
「俺もムカついてたからすっきりしたけど!したけど!今度は俺たちが怒られるだろー!!」
中庭での一幕