序章〜子供時代編
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「あ!おはようオーバ!デンジ!」
「おう、おはよ…じゃなくて、え!?かくかく!?」
実に一週間ぶりの登校である。病院を退院してからも暫く自宅で安静にさせられていたためこんなに日にちがかかってしまった。
「やっぱり学校まで付き添いするわ!」「大丈夫だから!ルーちゃんもいるし!」「でも、やっぱり心配だもの」「大丈夫だってばー!」とお母さんには玄関を出るギリギリまで粘られたが、無茶をしないという約束の元無事一人で出発することができた。
ごめんお母さん。速攻約束やぶっちゃったわ。オーバとデンジに会えたら嬉しくて、つい瞬間的に駆け出してしまったよ。
嬉しくなると体が動いちゃうのはこればかりはどうしようもない。
これぐらいは許容範囲でしょう。うん。無茶じゃない、OK。
夏休み明けてすぐにこんなにお休みしてしまうとは。我ながら無謀だったな。
これでも反省はしている。
「もう体大丈夫なのか!?というかやめろバカ!走るな!」
「俺たちが行くから!そこでじっとしてろ!動くな!」
(動くなって…別に体のどこも痛くもかゆくもないんだけどなあ…)
そんな怒鳴らなくても…。
お医者さんにも、もう大丈夫ですってお墨付きももらってるんだぞ。
若干苦笑いしつつ血相変えて走ってくる二人の友達を大人しく待った。
うん、オーバとデンジだ。夏休みの名残をまだ肌色に携えた二人を見たら、何だか安心した。
3人で歩く道すがら、いろいろな話をした。
222番道路には必ず大人と一緒に行くと学校で決まった事や、釣りには行ったけど全然釣れなかった事、
オーバとデンジが水泳の授業で張り合った事、給食のデザートにプリンが出て美味しかった事。
大半はどうでもいい話だったが、寝込んでいた時に何があったのか一生懸命教えてくれようとしているオーバもデンジも、すごく優しい。
私は二人の話を聞きながら、ポツポツと自分の話をした。
ヘラクロスを初めて見た事、それが凄く強くて逃げたら森で迷った事。
湖に伝説のポケモンがいた事。溺れそうになって、旅のトレーナーに助けてもらった事。
もう体はすっかり大丈夫だと言う事。起きてから病院にいる間はとても暇で、本を何冊も持ち込んでもらった事。
そして今後は定期的に病院で検査を受けることになった事。
エスパータイプやゴーストタイプの技は、人間にこうげきが当たると後遺症が残る事があるらしい。
人によっては時間差で不眠症になったり、逆に眠りっぱなしになったり、時には精神を病んでしまう場合もあるとか。
なるべく難しい言葉は使わないようにオーバとデンジには本当の事を話した。
黙っているのも何だか悪い気がして、全部話した。
「だからね、またしばらく病院に通わないといけないからあんまり遊べないかも…」
「…ばかかくかく」
「…ごめん」
「そうじゃなくて」
オーバが立ち止まって腰に手を当てながら私の方を見る。
それに伴ってデンジも私の顔をじっと見る。
二人とも何とも言えない、あえて言えば不機嫌な顔をしている。
そういえば二人がお見舞いに来てくれたという事をお母さんが言っていた。
「でも病院に行くって行っても月に2回ぐらいだし、体は元気だよ?」
「そういうことじゃなくてさ」
ぎゅうっと眉毛を寄せたオーバの顔がそこにあった。
「本当に、本当にばかだよな!お前の事いじめてた奴らを助けにいって迷子になるとか意味わかんねえ!」
「…私はいじめられてない。それは違う…」
「いや、かくかくはいじめられてる」
「ちょ、そんなはっきり、いやいやいや…でもさ、ちょっと聞いて」
「でも、じゃない!大体そういう時は俺たち呼べって言っただろ!?」
「そうだぞ!かくかくが1人で行くなんて無理」
「一人は絶対禁止だ!」
「だって」
「「だってじゃない!」」
無理!ってそんなハッキリ言わなくても!そりゃあお世辞にもポケモン勝負が強いとは言えないけども…。
子供はそうだね、ハッキリ言うよね。でもちょっと傷つくぞ…。
私の方が本当はお姉さんなんだけどな…初心者なのは認めるけど一回り以上本当は年上なんだけどな…
なんてことは口が裂けても言えない。一理あるだけに。
はいそうですよね私が悪かったです。私が全部悪かったですよ本当に!
同級生に、しかも7歳児に本気でこんなに説教されるとは…。
へこむやら情けないやら有難いやら嬉しいやら…。
二人の話聞いてたら鼻の奥がツンとしてきた。
「ありがとうオーバ、デンジ。ごめんね、本当に心配かけて。あの、今度は絶対オーバとデンジに頼るし、無茶しないように気をつけるし、もっとポケモンバトルも頑張るし…約束するから、だからあのね…」
「……あああ、もうそんな顔すんなよお〜…!今度はおれがいじめてるみたいじゃん!分かれば、いいんだけど…なんて言うかさあ!!なあデンジ?」
「おう。……すっげえ心配したんだぞ。お前が病院にいるって聞いて、それで行ったら全然起きないし。俺、かくかくがもう目開けないんじゃないかって、怖くなった…」
私はなんて言っていいかわからなくて、デンジの手を思わず握った。
デンジの青い瞳が繋がった私の右手を見ている。
もしも二人が同じような事になったら、私もめちゃくちゃ心配するし、どうしたらいいかわからなくなってしまうと思う。
大切な友達二人にこんな顔をさせてしまった自分を殴りたい。あの時の軽率な自分を止めたい。
反面、自分がした行動は正しくなかったわけじゃないと、そう思う自分もいる。
私が行かなかったらあのガキ大将たちは酷い怪我をしていたかもしれない。
もっとも、それはたらればの話で、自分自身を正当化させたいだけかもしれないけど。
「あと、それからなあ…」
「ま、まだあるのオーバ…」
ずいっとオーバの灰色の瞳が私を覗き込む。
ぐっと口のへの字に曲げている。まだ私は叱られるんだろうか。
ええい、この際だから全部聞くぞ!何でも言ってくれこんちくしょー!
「一人で伝説のポケモンに会うの、ずるいぞ!!」
「は…?」
「わかる。俺も会いたい」
俺達も誘ってくれれば見れたかもしれないのにー!!!とオーバもデンジも心底悔しそうに言った。
これまでの会話は、何だったんだ。
それからは学校に着くまで、ずーっとそのポケモンの事について聞かれた。
その目は二人ともキラキラ輝いていて、それは興味深そうに話を聞いてくれた。
もっとも、私が聞いたあの声や言語とも言い難い流し込まれた記憶の断片などは伏せておいた。
いつか、話す事もあるかもしれない。
でも今はまだその時じゃない。
「なあ今度3人でリッシ湖行ってみようぜ」
「だ〜か〜ら〜!!危ないから行っちゃダメなんだってば!」
「わかってる。もっと俺たちが大人になってから」
「おう、おはよ…じゃなくて、え!?かくかく!?」
実に一週間ぶりの登校である。病院を退院してからも暫く自宅で安静にさせられていたためこんなに日にちがかかってしまった。
「やっぱり学校まで付き添いするわ!」「大丈夫だから!ルーちゃんもいるし!」「でも、やっぱり心配だもの」「大丈夫だってばー!」とお母さんには玄関を出るギリギリまで粘られたが、無茶をしないという約束の元無事一人で出発することができた。
ごめんお母さん。速攻約束やぶっちゃったわ。オーバとデンジに会えたら嬉しくて、つい瞬間的に駆け出してしまったよ。
嬉しくなると体が動いちゃうのはこればかりはどうしようもない。
これぐらいは許容範囲でしょう。うん。無茶じゃない、OK。
夏休み明けてすぐにこんなにお休みしてしまうとは。我ながら無謀だったな。
これでも反省はしている。
「もう体大丈夫なのか!?というかやめろバカ!走るな!」
「俺たちが行くから!そこでじっとしてろ!動くな!」
(動くなって…別に体のどこも痛くもかゆくもないんだけどなあ…)
そんな怒鳴らなくても…。
お医者さんにも、もう大丈夫ですってお墨付きももらってるんだぞ。
若干苦笑いしつつ血相変えて走ってくる二人の友達を大人しく待った。
うん、オーバとデンジだ。夏休みの名残をまだ肌色に携えた二人を見たら、何だか安心した。
3人で歩く道すがら、いろいろな話をした。
222番道路には必ず大人と一緒に行くと学校で決まった事や、釣りには行ったけど全然釣れなかった事、
オーバとデンジが水泳の授業で張り合った事、給食のデザートにプリンが出て美味しかった事。
大半はどうでもいい話だったが、寝込んでいた時に何があったのか一生懸命教えてくれようとしているオーバもデンジも、すごく優しい。
私は二人の話を聞きながら、ポツポツと自分の話をした。
ヘラクロスを初めて見た事、それが凄く強くて逃げたら森で迷った事。
湖に伝説のポケモンがいた事。溺れそうになって、旅のトレーナーに助けてもらった事。
もう体はすっかり大丈夫だと言う事。起きてから病院にいる間はとても暇で、本を何冊も持ち込んでもらった事。
そして今後は定期的に病院で検査を受けることになった事。
エスパータイプやゴーストタイプの技は、人間にこうげきが当たると後遺症が残る事があるらしい。
人によっては時間差で不眠症になったり、逆に眠りっぱなしになったり、時には精神を病んでしまう場合もあるとか。
なるべく難しい言葉は使わないようにオーバとデンジには本当の事を話した。
黙っているのも何だか悪い気がして、全部話した。
「だからね、またしばらく病院に通わないといけないからあんまり遊べないかも…」
「…ばかかくかく」
「…ごめん」
「そうじゃなくて」
オーバが立ち止まって腰に手を当てながら私の方を見る。
それに伴ってデンジも私の顔をじっと見る。
二人とも何とも言えない、あえて言えば不機嫌な顔をしている。
そういえば二人がお見舞いに来てくれたという事をお母さんが言っていた。
「でも病院に行くって行っても月に2回ぐらいだし、体は元気だよ?」
「そういうことじゃなくてさ」
ぎゅうっと眉毛を寄せたオーバの顔がそこにあった。
「本当に、本当にばかだよな!お前の事いじめてた奴らを助けにいって迷子になるとか意味わかんねえ!」
「…私はいじめられてない。それは違う…」
「いや、かくかくはいじめられてる」
「ちょ、そんなはっきり、いやいやいや…でもさ、ちょっと聞いて」
「でも、じゃない!大体そういう時は俺たち呼べって言っただろ!?」
「そうだぞ!かくかくが1人で行くなんて無理」
「一人は絶対禁止だ!」
「だって」
「「だってじゃない!」」
無理!ってそんなハッキリ言わなくても!そりゃあお世辞にもポケモン勝負が強いとは言えないけども…。
子供はそうだね、ハッキリ言うよね。でもちょっと傷つくぞ…。
私の方が本当はお姉さんなんだけどな…初心者なのは認めるけど一回り以上本当は年上なんだけどな…
なんてことは口が裂けても言えない。一理あるだけに。
はいそうですよね私が悪かったです。私が全部悪かったですよ本当に!
同級生に、しかも7歳児に本気でこんなに説教されるとは…。
へこむやら情けないやら有難いやら嬉しいやら…。
二人の話聞いてたら鼻の奥がツンとしてきた。
「ありがとうオーバ、デンジ。ごめんね、本当に心配かけて。あの、今度は絶対オーバとデンジに頼るし、無茶しないように気をつけるし、もっとポケモンバトルも頑張るし…約束するから、だからあのね…」
「……あああ、もうそんな顔すんなよお〜…!今度はおれがいじめてるみたいじゃん!分かれば、いいんだけど…なんて言うかさあ!!なあデンジ?」
「おう。……すっげえ心配したんだぞ。お前が病院にいるって聞いて、それで行ったら全然起きないし。俺、かくかくがもう目開けないんじゃないかって、怖くなった…」
私はなんて言っていいかわからなくて、デンジの手を思わず握った。
デンジの青い瞳が繋がった私の右手を見ている。
もしも二人が同じような事になったら、私もめちゃくちゃ心配するし、どうしたらいいかわからなくなってしまうと思う。
大切な友達二人にこんな顔をさせてしまった自分を殴りたい。あの時の軽率な自分を止めたい。
反面、自分がした行動は正しくなかったわけじゃないと、そう思う自分もいる。
私が行かなかったらあのガキ大将たちは酷い怪我をしていたかもしれない。
もっとも、それはたらればの話で、自分自身を正当化させたいだけかもしれないけど。
「あと、それからなあ…」
「ま、まだあるのオーバ…」
ずいっとオーバの灰色の瞳が私を覗き込む。
ぐっと口のへの字に曲げている。まだ私は叱られるんだろうか。
ええい、この際だから全部聞くぞ!何でも言ってくれこんちくしょー!
「一人で伝説のポケモンに会うの、ずるいぞ!!」
「は…?」
「わかる。俺も会いたい」
俺達も誘ってくれれば見れたかもしれないのにー!!!とオーバもデンジも心底悔しそうに言った。
これまでの会話は、何だったんだ。
それからは学校に着くまで、ずーっとそのポケモンの事について聞かれた。
その目は二人ともキラキラ輝いていて、それは興味深そうに話を聞いてくれた。
もっとも、私が聞いたあの声や言語とも言い難い流し込まれた記憶の断片などは伏せておいた。
いつか、話す事もあるかもしれない。
でも今はまだその時じゃない。
ただいま、日常
「なあ今度3人でリッシ湖行ってみようぜ」
「だ〜か〜ら〜!!危ないから行っちゃダメなんだってば!」
「わかってる。もっと俺たちが大人になってから」