第1部



7月7日。言わなくても分かるだろう。今日は七夕だ。夜な夜な某小学校に集まるお化け達も、これから七夕を楽しもうとしていた─────



花子さん「あはは、ヒーローの変身ベルト欲しいって!うけるー」

テケテケ「願い事は人それぞれだから、そんな笑っちゃ駄目だよ?
こっちは…あ、『今年こそハワイ旅行』だって、先生が書いたっぽいけどこれ⋯」

ヒキ子さん(ハワイよりグアムの方が旅費安い⋯)



彼女達はそれぞれの願い事を書く前に、既に笹に付けられた某小学校の生徒が書いた短冊を見て楽しんでいた。
様々な色の短冊は用意されているが、重要な竹は⋯



怪人アンサー「持って来たぞ~」

太郎くん「おっきいのあったのー!」

テ「わぁ、すご~い!ありがとう!」

花「あいつらにしては良いの持って来たのね」



そう、重要な竹は勿論男子メンバーが準備に取り掛かっていた。竹や短冊の準備も出来た所で、お化け達は七夕を開始した。



花「ふんふんふ~ん♪」

テ「楽しそうだね花子ちゃん、何書いたの?」

花「ふっふっふ~♪内緒~♪♪」

テ「ふふ、残念。ヒキ子ちゃんは?」

ヒ「⋯⋯⋯これ⋯」

テ「え~と…、『笑えるようになりたい』?大丈夫だよ、ちゃんと笑えてるよっ!」

ヒ「⋯⋯⋯!(ドキッ)」

太「ぼくは~、『花子ちゃんをおよめさんにする』って書いたのー!」

花「なッ、ばか!!勝手に人の見ないでよ!」

太「だって『かわいいおよめさんになりたい』って書いてたんだもーん!」

怪「テケテケは何を願うのだ?」

テ「あ、うんっ、『皆が笑顔で幸せになりますように』って!」

怪「そうか、お前らしいな。⋯なら私も書くか。」

テ「へー、何て書くの?」

怪「『願わくはテケテケに幸ある事を』。」

テ「あっ、アンサーさん!!」


⋯と、皆それぞれの願いを短冊に書き、笹に吊るしていくお化け達。

そしてお忘れかも知れないあの人物は────


皆が居るグラウンドとは別に、中庭にて七夕を楽しむ⋯



口裂け女「天の川が綺麗ねぇ。」

注射男「全くです!しかし口裂けさんの方が断然お美しいです!!星の塊なんて口裂けさんの足元にも及びません!!」

口「ほほほ、貴方が居なければもっと良い七夕だったものを⋯早くあの星にお帰りなさい。」

注「そんなご無体な事を口裂けさん~⋯」



口裂け女と、彼女に恋心を抱く注射男だけだった。



注「口裂けさんは何か願い事を書いたんですか?」

口「この完璧で見目麗しい都市伝説の女王であるこの私が天の者に何か願うと思っていて?」

注「いっ、いえ!!(大人の魅惑オーラキター!!)」


「大人の魅惑オーラ」とは一体何なのか、というツッコミは置いといて。珍しく会話をする口裂け女と注射男。会話は続く。



口「貴方は何か願っていて?」

注「はいっ!(口裂けさんから話題振ってくれた~!!)

俺は『惚れ薬を開発して愛しの口裂けさんに注射してそして俺に惚れた口裂けさんにあんな事やこんな事をして頂き更に⋯』」

口「もう良くてよ、これ以上聞いていたら耳が腐るわ。」

注「しゅん⋯」


口「⋯ふぅ。」


注(溜め息⋯!!なんて色っぽいんだ!!ハァハァ⋯!!)


少しは話を聞いてみようかと話題を振ったものの、結局語るはいつもの不純な欲望。呆れて溜め息を吐き、くるりと方向転換しグラウンドへ戻ろうと歩き始める。



口(全く、私の美しさを理解してくれるのは良しとして、何であんなに変態なのかしら。そりゃあ普段から巻いてるうざったい包帯とれは悪くはない顔だとは思うけれど⋯)

注「ハスハス!!」

口(ああやっぱり駄目だわ、やっぱり無理!あんなに鼻息ふんふんさせて馬鹿みたいに尻尾振って躾のなってない犬みたいな奴、私には相応しくなくてよ!いっその事鞭打って黙らせてやろうかしら⋯いや寧ろ悦びそうだわ⋯!あいつはきっとド級のドMのド変態ね!)




でも、何故か嫌いになれない。

本当に、私の事が好きならば。



口「⋯⋯⋯」



口裂け女は普段付けているマスクを外し、すっと注射男を見据えた。



注「⋯⋯ッ!!」


口「私⋯⋯⋯⋯綺麗?」




注「はいッ⋯!!」




口「⋯ふふっ、当たり前でしょう?早く戻りましょう。後でテケテケが何かお菓子を用意しているみたいよ。」

注「は、はい!」





────顔を真っ赤にさせて肯定した貴方。でもいつもみたいに「これでも?」と鎌を携えて追いかけはしない。

もしも、本当に天の者が願いを叶えてくれるならば。



一瞬でもそう思ってしまった私は あの男に相当毒されているわね。




END
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