第1部


時計の針が0時00分を指した。5月5日。こどもの日。お化け達はいち早く子どもの日を祝い始めた。


テケテケ「柏餅出来たよ~」

口裂け女「沢山作ったから沢山お食べなさい」

注射男「うぉおお!!口裂けさんの手作りィイ!間接的に口裂けさんの御手のお味を感じられるー!!」

怪人アンサー「では頂くぞ(テケテケの手作り⋯!!)」

ヒキ子さん「⋯⋯⋯♪」

さとるくん「美味しいねヒキ子ちゃん!(もぐもぐしてるの超絶かわいいよ萌え~)」


いい歳した大人達がテケテケと口裂け女の手作りの柏餅を頬張る。男子メンバーは想い人の手作りが何より嬉しいのだ。

そんな年長お化け達の後ろではしゃぐ子どもの日の主役である子供が一人────


太郎くん「われはしょーぐんなりぃ~!いくさじゃいくさじゃ~!」


彼、トイレの太郎くん。画用紙で作った兜を被り折り紙の武器と鯉のぼりを片手にグラウンドを走り回る。
そんな彼を横目に溜め息を吐く少女───



花子さん「ばっかじゃないの?あんな紙切れで作ったおもちゃで喜ぶなんて。本当ガキは嫌ね!」

口「あら、貴女も十分子供じゃない。子供だから子供として今日を楽しむんじゃなくて?」

花「だから花子は子供じゃないわ!」


トイレの花子さん。彼女は自分を子供扱いされる事が大嫌いで大人と同じレディーとして扱って欲しいと思っているのだ。


口「それにその“おもちゃ”を作ったのはテケテケよ?失礼ね~」

花「えっ⋯ むぅ~~!!」

テ「良いんだよ、そんな事は⋯。二人共喧嘩はだめっ!」

花「してないもんッ!」

テ「花子ちゃん!」



花子さんは皆が座っていたシートから離れて行ってしまった。


テ「どうしよう⋯」

口「放っておきなさい、そのうち機嫌も戻るわ。ほら貴女も飲みましょ」


口裂け女はそう笑い酒を飲み始める。


テ「うん⋯ありがと⋯」


テケテケも少し心配そうに渡された酒を受け取る。



太「いざせっぷくじゃ~あ!」


太郎くんの一人寸劇を見ながら出された柏餅を食べる。彼のその可愛らしい姿に皆声援を贈る。しかし花子さんは太郎くんが可愛がられているその光景にますます機嫌を悪くする。



花「ふんっ。ばっかじゃないの?」


ぷいっと彼らに背を向けその場から立ち去ろうとした時────


───ドサッ



太「うわぁああん!!痛いよぉ~!」


太郎くんが近くの段差に躓き転んでしまった。彼はまだ幼い子供。擦り傷を負っただけも痛みに耐えられず泣いてしまう。


さ「大変!大丈夫!?」

太「ふぇ⋯痛いけど⋯、テケテケお姉ちゃんがくれたかぶと、グシャグシャになっちゃったぁ⋯」

口「傷口に菌が入る前に早く手当てした方が良くてよ?」

怪「絆創膏なら私が持っているぞ。」

テ「アンサーさん、消毒液もある?」

怪「うむ」




花(どうしよ⋯何か騒ぎになってるんですけど⋯)


校舎の陰から皆が集まっている所を見る花子さん。どうやら先程の憎たらしい態度の所為で皆の場所に戻るのが気まずいようだ。


花(どうしよう⋯)


彼女はスカートのポケットに手を入れる。



花(⋯⋯⋯⋯もう!!)




テ「あ、花子ちゃん、」


花「ほら!!」

太「⋯え?」



花子さんは太郎くんに小さい何かをずいっと渡した。それは折り紙で出来た兜だった。



花「何オトコのくせに泣いてるわけ!?これやるから、早く⋯その、泣き止みなさいよね!!」

太「花子ちゃん、これ⋯」

花「まあ、テケテケより小さいし汚ないけど⋯、あ、かッ、勘違いしないでよ!別にアンタの為じゃないから!!た、たまたまあまってた紙で作ってみただけだからね!感謝しなさいよ!!」

太「ありがとう、花子ちゃん!」



太郎くんはふにゃりと笑みを浮かべた。その瞬間、花子さんはダッシュで校舎に戻って行った。

よく分からない太郎くんは呆然としていたが、大人達は顔を真っ赤に染めて走る花子さんをしっかり見ていたのであった。


それはお化け達の少し甘い、こどもの日の話。




END
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